そういえば、突っ込むセックスをしない理由は告げたけれど、過去に彼女の生理が遅れて血の気が引いた経験があるなんてことまでは話してない。もちろん彼相手に限らず、こんな事を自分から進んで話したことなんてないけれど、なぜ自分は抱いて貰えないのだと責めてくるタイプの彼女には話すこともあった。確信を持って、前の彼女のことは抱いていただろうと言われたりもしたから、当然こちらの噂をアレコレ聞かされただろう彼も知っていると思いこんでいた。
いやでも、こんな噂があるけれど本当ですかなんて聞かれたことはないし、噂を闇雲に信じるタイプではないから、突っ込むセックスはしないというこちらの言葉を信じただけに過ぎないのかもしれない。
「あー……俺だって最初っから今みたいな、一緒に飯食ってついでにイチャイチャさせてくれるなら誰でもいい、って交際はしてなかったんだよ。繋がるセックスもしたし、お前ほど頻繁じゃないけど、泊まってもらったこともある」
「それは相手のことが好きだったから、すか?」
「胸を張ってそうだって言いたいとこだけど、何ていうか、万が一避妊失敗したらどうなるのかって事を理解する前は、当たり前に抱いてたってのが正しい気もする。自分の置かれた状況や立場を認めて、納得して、諦めるのに結構時間掛かったんだけど、その間に付き合ってた子とはそこまで割り切った感じじゃなく恋愛を楽しもうとしてた。そういう意味でなら、相手のことを好きだと思ってたから、抱いてたよ」
恋愛に逃避して、女の子との甘い時間に逃げて、夢中になって、でも現実が変わらないこともわかっていた。そんな中、生理が遅れている報告やら親からの忠告やらで完全に覚めてしまったけれど、でも一人の寂しさに耐えられなくて、結果、都合よくイチャイチャさせてくれる恋人を求めるようになってしまった。
「もしかしてお前が突っ込まれるの絶対ナシって言ったのって、俺が童貞だと思ってたから、自分の初めての時と重ねて怖くなってたのもある?」
「それは、まぁ、はい」
「じゃあ、絶対優しくするを信じて、突っ込む経験もそこそこ積んでる俺に任せてみたりは?」
即答はできないようで、けれど迷う様子は見せている。押し切ったら頷きそうな気もするけれど、でもただでさえ罰ゲーム中にたぶらかして惚れさせた負い目のようなものもあるし、男に突っ込まれるなんて経験は彼に必要が無いだろう。
彼と繋がってみたいのはこちらの欲求で、男なのに男に抱かれるという抵抗感も彼が相手ならほとんどないし、もし自分相手に気持ちのよいセックスが出来れば、抱くのでさえ怖いという相手のトラウマ克服になるかもしれない。
「ゴメン。悩まなくていいよ。繋がるセックスする時は、俺が抱かれるから」
「自分で慣らして拡げるから、ユルユルになったらチャレンジしてくれって、本気で言うんすか?」
「ダメ?」
暫く逡巡した後、結局、考えさせてくださいと返された。したいって言い出したら別れると即答されてた事を思えば大きく前進したような気もするけれど、先走って勝手に慣らしたりしないで下さいとも言われたから、やっぱりあまり期待はできそうにない。
それどころか、はっきりしたい意思を見せてしまったことで、今後彼がどう感じるかが不安になる。繋がるセックスが出来なくたって、物足りなくて不満だなんて思うつもりはないけれど、でも一度完全に認めてしまった気持ちを、上手に隠すことが出来るかわからない。
椅子から立ち上がって、彼の側へ回り込む。辿り着く前に同じように立ち上がっていた相手が、何も言う前に腕を広げてくれたから、そのまま黙ってその腕の中に収まった。それだけでこんなにもホッとする。
「無理して俺を抱く必要なんてないからな。そういうの無しでって始めた恋人だってのもわかってるし、何度も言うけど突っ込まないセックス慣れてるし。今でも十分気持ちいいし、楽しいし、なによりお前と、まだ恋人でいたい」
甘えるみたいに背に腕を回して抱きつけばキュッと抱き返された。
「わかってます。俺もっす。まだ、先輩と、恋人でいたい」
「うん。してみたい気持ちと、お前じゃ物足りないはイコールじゃないから、そこ、間違えないで?」
「はい」
短い肯定の後、ゆるりと抱きしめる腕を解かれながらベッドへ誘われる。こちらから誘いをかけることが圧倒的に多いので、そんな小さなことでも結構嬉しかった。
「ん、じゃ、行こ」
多分、嬉しい気持ちはわかりやすく溢れただろう。
「落ち込ませてすみません。その分いっぱい、気持ちよくするんで」
トラウマになる程の過去の性行為の失敗を語らせたのはこちらなのに、ホッとした様子でそんな事を言うから、相変わらず随分と甘やかされているらしいと思った。
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