罰ゲーム後・先輩受12

1話戻る→   目次へ→

 お盆前後は塾も入れないし、週三来てくれている家政婦さんも来ない。相手だってその時期は部活なんてないし、塾の休館日は知らせてあったからバイトだって入れてない。だからその期間は冷房効かせた部屋にこもって、ひたすらダラダラいちゃいちゃ過ごそうかと思っていた。
 けれどそんなこちらの希望を、取り敢えず相手に送って伺いを立ててみるかと文面を打ち始めた直後。相手とは近所のスーパーやらスポーツ広場以外に出かけたことがない事に気付いて慌てて、急遽、たまにはデートしようかと誘う文面に変える。
 罰ゲーム期間中も含めて、まともにデートをしたことがなかったけれど、相手はそれを不満に思うことはなかったんだろうか。罰ゲーム中はともかく、ごっこじゃなくなった今は、どこかに行きたいとか言ってくれても全然いいんだけど。とはいっても、デートしてない事実にも気づかず、罰ゲーム中と変わらぬどころか夏期講習で疎遠にするような真似までしていたこちらの非が大きいのはわかっている。
 そう言えば、こんな自分に進んで告白してくれるような女の子たちは、あれしたいこれしたいと主張のはっきりした子が多かったから、自分からデートに誘うなんてかなり久々の感覚だ。夏なんだから海やプールに行くのもいいし、暑いから映画館やプラネタリウムもいい。水族館とか動物園とか遊園地でも、時期的に夏祭りとか花火とかでも良いかもしれない。なんてことをあれこれ考えるのは楽しかった。
 けれどそんなこちらの思惑は、デートしようかだけではまったく通じなかったようだ。
 そういえば最近は外でご飯食べてないですもんねと返ってきて、どういう事だと突き詰めていった結果、彼の中でデート=学校帰りにファミレスやファーストフード店で夕飯を食べる事と刷り込まれているのを知って驚いた。いや確かにそれを肯定するような事を言った気はするけど。
 しかも、そうじゃなくてと海でもプールでもというのを並べ立てれば、そういうのならプロバスケの試合を一緒に見に行きたいですと返ってきた。だからそうじゃない。いや別にそれも悪くないけど、でも今はお盆期間の話をしてるのであって、プロバスケのシーズンが始まるのは九月からだ。
 ただバスケ観戦デートは確かに楽しめそうだから、それはシーズン始まったら行くことにしようと脳内にメモしつつ、再度、お盆期間中どっか一緒に出かけたりしなくていいのと聞いてみた。そしたら今度は、日中遊びに行くなら早めに帰ってこれる場所、花火や夏祭りに行くならその日は泊まらせて下さいと返ってきて、今ひとつ話が噛み合わない。
 こっちは相手が行きたい場所の希望を聞いているのに。
 それでもなんとか互いの希望をすり合わせ、手始めに映画へ行って、次に海へと行ってみたところで、なんで相手が早め帰宅に拘ったり夜遊ぶなら泊まりでなんて言ったのか、あっさりわかってしまった。
 なるほど。男二人で出かけて遊ぶ系のデートをするのは、それなりにストレスと欲求不満が溜まる。特に海で男二人なんて、完全に女の子狙いみたいだったし、実際に声を掛けられもした。もちろんあまり派手にイチャイチャくっついても居られない。
 こうなるだろうってわかってたなら、デートに誘った時に言っておいて欲しかった。というか無駄に精神面まで疲れた気がする。
 久々に泳いだりして肉体的にもそこそこ疲れていたから、帰宅後はエロい気分でというよりは本当にただただ相手にイチャイチャひっついてスキンシップを補給させて貰う目的で、ベッドの上でダラダラうとうと微睡んでしまった。ストレスと欲求不満が溜まると言いつつ海もそれなりに楽しんだけど、でもやっぱりこの時間のが圧倒的に楽しくて幸せだと思う。
 もし相手も同じように思っているなら、当初の希望通り、部屋に引きこもった夏休みでもいいかもしれない。お家デート最高ってことで。
 なのに、遊ぶならここしかないとでも言う感じに詰め込んだ、水族館と遊園地と花火大会の予定を止めにしようかと提案してみたら、わかりましたと言いつつも残念そうな顔をする。
「待って。本当は行きたいってならちゃんと言って?」
「正直今日みたいなこと絶対起こると思ってたんで、デートらしいデートがしたい気持ちはあんまなかったんすけど、でも思ったより楽しめたというか、悪くなかったというか、色々気付かされることもあったので」
「気づくってどんな?」
 思わず聞き返せば、何故かいたずらっぽく笑んでみせるから珍しい。
「気づくというか、今、先輩の恋人なのは俺なんだって、実感する感じっす」
 しかもそんな事を言われても、ますます意味がわからなかった。
「でもデートなのに、そんなイチャイチャできてなかったろ?」
「でもその分こうして今、めちゃくちゃ甘えてきてるじゃないっすか。バランス取れてるんで俺的には全然オッケーっす。ただまぁ俺に気を遣って疲れたのも大きいみたいなんで、無理して出掛けなくてもいいかなとも思ってますよ」
「お前に気を遣うっつーか、だってお前こそ、嫌な思いしたろ?」
 デート中に恋人が他の異性に声を掛けられる姿なんて見たいはずがない。しかも相手の方が隙がないというか、一見無愛想なせいで、多分相手狙いっぽい子でさえこちらに声を掛けてくるものだからたまったもんじゃなかった。
「学校以外でもモテるんすね、というのはまぁ、わかりました」
 笑みを引っ込めマジなトーンで告げられて焦る。
「いやいやいや。俺のほうがチャラそうに見えて声かけやすいだけで、お前狙いも絶対居たからね? てか愛想よく見えたかもだけど、あれ全然喜んでなんかなかったからね?」
 なのに、それを聞いた相手は、またどこかおかしそうに笑っている。
「さすが女の子のあしらい上手いなーとは思いましたけど、あれを喜んでるなんて事は思いませんでしたよ。それより、まさか可愛い女の子に声掛けられてもまったく靡かないとか思ってなくて、だから、そんな姿見れたのは結構嬉しかったっす」
 先輩がナンパされてる時、隣で俺が優越感感じてるなんて思っても見なかったでしょう、なんて続けながら、笑顔がそっと寄せられる。柔らかに触れる唇を、驚きとともに受け止めた。けれど驚きはそこで終わらない。
「驚かせついでにもう一ついいっすか。俺、先輩のこと、抱いてみたいかもって思いました。今日」
「は? えっ? なんで? 今日?」
 あまりに驚いて、疑問符を飛ばしまくってしまった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です