罰ゲーム後・先輩受17

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 ちゅっちゅと宥めるみたいなキスを繰り返されて、やっぱりなんだか誤魔化されてるみたいな気持ちになる。小さな不安の種らしきものが、胸の中にプツプツと湧き出るみたいな感じがする。
 縋るみたいにまたぎゅっと抱きつけば、さっきみたいに相手の体温に安堵するのだろうか。ぎゅってして、好きって言って、好きって言われて、不安の種から目を逸らして。そうやって誤魔化されてしまってもいいのかもしれない。
 本当に気持ちいいの言葉も、多分きっと嘘じゃなくて、ただ、自分の体の方が貪欲で、ついでに言うなら他者と繋がる行為で快楽を拾うことに慣れているだけだ。痛いとか苦しいとかが思っていた程酷くないからか、抱かれる側でも、深く繋がる心地良さや粘膜が擦れ合う興奮はそこまで変わらないと思う。
 だからって、相手に自分と同じだけの興奮が見えないのが不満だなんて、ホント、我侭で強欲にも程がある。トラウマ持ちの彼が慎重になるのは仕方がないし、理性を保ってこちらの体を気遣う余裕を見せるのは、間違いなく彼からの深い愛情なのに。わかっているのに。
「ごめんなさい」
 ふいにそんな言葉が聞こえて、ちゅっちゅと降り注いでいたキスがやむ。
「キスなんかで誤魔化そうとして、余計不安にさせただけっすよね。すみません」
 謝られながら、みたいではなく相手にも誤魔化そうとする意志があったのだとぼんやり思った。本当に誤魔化したいと思ってたなら、さっさと誤魔化されてやれば良かったとも。
「もともと、先輩にはもしかしたらバレるかなと思ってたんすけど、ホント、俺のことよく見てますよね」
 申し訳ない、みたいな口調なのに、なぜか相手はどこか嬉しそうでもあった。
「え? バレる? って何が?」
「勢いで突っ込みそうだった俺が、いくら頭冷やしたからって、あんまがっつかずにいるの、どっか変だって感じたんじゃないすか?」
「あっ!」
 聞いた瞬間、そうか、それだ、と思ってしまった。どこからともなく漂い纏わりつくみたいな不安と苛立ちの正体と言うか出処は、多分きっとそれだった。
 一緒にシャワーを浴びたらその場で突っ込みそうだったという言葉もするりと信じられるくらい、帰宅後玄関先で交わした、貪られるみたいに性急に性感を煽ってくるキスの興奮を覚えている。あの熱と興奮のまま求められる喜びを、一度は想像してしまった。期待してしまった。
 きもちぃと耳元に吹き込まれた甘ったるい声は本物だと思ったから、それを信じたい気持ちと、余裕のありすぎる素振りに、もしかして本当は思ったより気持ち良く感じられていないのではと疑う気持ちとが、無意識下でせめぎ合っていたようだ。
 過去に失敗しているから、むりやり揺すって強引に快楽を貪るような真似をしないだけで、きっと基本的には、抱いた相手の体でイカないのは失礼だって、そういう考えを今も持っているだろう。挿れてみたらそこまででもないなと思っても、絶対に、それを口に出したりわかりやすく態度にだって出さないだろう。
 それがわかっているから、そんなはずはないと思うのに、気持ちが揺れてしまうのだ。
「もちろん、先輩との繋がるセックスが思ったより気持ち良くなかった、ってわけじゃないすよ? 本当に、今だってずっと、先輩んナカめちゃくちゃ気持ちぃって、思ってます」
 随分と真剣な顔をして、まるで念を押すように告げる言葉を、今更疑う気持ちはないのだけれど。
「じゃあ、なんで……」
「これ言ったら絶対怒るか拗ねるかされそうなんすけど」
 そう言われて、怒ったり拗ねたりしないから言って、なんて言ってやれるほどの気持ちの余裕はなかった。
「じゃあ多分、怒るし拗ねるけど、言って」
 既に拗ねたみたいな口調だなと思っていたら、やはり相手も同じように思ったのか、空気がほわっと緩む気配がした。そんなこちらの子供っぽい態度を、可愛いとか愛しいとか思われたんだろう。声に出されなくたって、こうまであからさまだと、わかってしまうし恥ずかしい。
「ほら、早く言って」
「先輩って……」
「可愛いっすね、じゃ誤魔化されないからなっ」
 また色々含ませた可愛いですねで逃してたまるかと先手を打ったのに、相手はまんまとその言葉を吐き出し笑ってみせる。なんともわざとらしい。
「お前っ!」
「誤魔化そうってつもりじゃなくて、本心っすもん。ねぇ先輩。俺、本当に先輩のこと、すげー好きっすよ。先輩が欲しいだけ全部、持ってっていいって思うくらい」
 繋がるここから俺を丸呑みする気なんでしょう? と言いながら、ゆるく腰を揺すられた。
「がっついて腰振ったりしなくても、先輩が気持ちよくなって、ココ、きゅうきゅう締め付けて俺をうんと欲しがってくれたら、俺多分、そんな持たずにイッちゃいますよ? 先輩と違って二発目なのに」
「二発目? って、ど、ゆー、こと?」
「俺ね、先輩絶対傷つけたくなくて、頭冷やしついでに一発抜いたんス。風呂場で」
「おまっ、それ、ズルいっ」
 これは確かに、怒って拗ねていい案件じゃないだろうか。そんな理由があるなら、余計な不安を持たずに、相手の気遣いを喜んで受け入れていたかもしれないのに。
「言わなかったことは謝ります。でも、抜いといて良かったって、本気で思ってるんで。抜いてなかったらかなりヤバかったっす」
 それくらい先輩のナカ気持ちぃんすよと吐き出す声は、甘えを含んでトロリとしている。心ごとゾワゾワして、動きを止められ体の奥に燻っていた熱が煽られていく。
「んぁっ、」
「きもちぃ、す。ね、もっと、俺を、欲しがって」
 気持ちいいと繰り返してくれる声に興奮が加速する。もともとない余裕が更に奪われていく。
「ぁ、んぁ、俺も、キモチィ、きもちぃ、からぁ、……もっと、お前もっ」
 ゆるゆると揺すられるのがもどかしくて、もっともっとと相手をねだる。
「ん、うぅっ、欲しい。お前が、ほし、よ」
「あげます、全部」
「でもぉ、ああっ、俺も、あぁんっっ」
「貰いますよ、俺だって、全部」
 お前に同じだけ欲しがられたいという気持ちを取りこぼすことなく、拾い上げて笑ってくれるこの男を、このままずっと手放したくないと思った。

続きました→

 
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