罰ゲーム後・先輩受3

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「あー、くそ。甘やかされてんなぁ」
 にやけかける口元を隠すように覆いながら、思わずこぼした言葉を拾ったのは、隣りに座る友人だった。
「思い出し笑い? やっらしー」
「うるせっ」
「まぁなんつーかさ、あいつお前に思った以上に本気らしいんだよね。つかマジに惚れてるっぽいんだよね」
「知ってる」
「お前に本気で惚れちゃう当たり、ちょっと何かズレてるとこもあるけど、根が真面目なすっげー良い子なの」
「知ってる」
「だよな。ならいいわ」
 友人はそれで済ませてくれる気になったらしいが、さすがに他のメンバーにとってはそれで済む問題じゃないようだ。
「良くねーよ!」
「けしかけた俺らの責任って話、したろ」
「キスしてるのマジとか、それ以上も時間の問題じゃねぇの」
 とっくにキス以上に進んじゃってるけどと、聞こえてくる言葉に苦笑していたら、やっぱり隣の友人が、こいつも思ったよりはあいつに誑かされてるっぽいから大丈夫などと言い出してギョッとする。
「え、どういう意味だ、それ」
「だってお前、あいつに甘やかして貰ってんの、嬉しいみたいだったから。あっさり振られたくなくて慎重になってるってのも、事実っぽいし」
 さらりと告げられる言葉に、顔が熱くなる気がする。しかも他のメンバーが揃って、マジで!? みたいな顔で見つめてくるから尚更だ。
「真面目従順系のいい子だけど、バスケはすごい勢いでガンガン上達してるような奴だもんな。あいつがお前に本気だってなら、落とされたのはお前の方じゃん? お前があいつを都合よく利用するために、誑かして惚れさせて恋人にしたってわけじゃないんだろ?」
「俺と恋人になるデメリットは教えまくったし、止めとけって話ならしたけど、それでも俺を選んだあいつを利用してるのも、事実っちゃー事実だよ」
 きっぱり拒絶出来ただろうところをそうせずに、寂しさを彼の想いで埋めている。
 はっきり自覚があってやったことではないけれど、誑かされて好きになったとは言われた気がするし、罰ゲームが終わることが寂しくてたまらなかったのも事実だし、無意識に彼が自分と恋人となることを選ぶように誘導してなかったとは言い切れない気もしていた。
「いやそれ、どう聞いても、お前が折れて受け入れたって話だし」
「まぁ、それはそう、なんだけど……」
 言われれば、そういう見方も出来ないことはない、気もする。でもやっぱり、自分が誑かされているというよりは、自分が相手を誑かした結果が今なんだろうという負い目のようなものは強い。
 けれど曖昧に同意してしまえば、友人はにっこり笑ってパンと一つ手を打った。
「はい、じゃあ、俺らが思ってた以上にあいつは雄で、こいつに好き勝手されて泣くような玉じゃないのは再確認できたから、キスもそれ以上も本気の恋人だってなら本人たちの責任ってことで」
 友人の鳴らした音が合図だったかのように、みんな揃って昼飯終了とばかりにガタガタと椅子を揺らして立ち上がる。
「ちょ、おい、待て」
「悪い悪い。だろうなってのはわかってたんだけど、せっかく一緒に昼飯食ってんだから、一応確認しておくかって思ってさ」
「だってお前の噂聞く限りじゃ、あんまあいつに不利って感じでもないしなぁ」
「でも一応、いたいけな一年生ではあるわけだから」
「万が一、百戦錬磨のお前の手に掛かって泣かされたら可愛そうだなぁという、先輩心もないわけじゃないっつーだけでな」
 慌てて声を掛けたが、銘々随分と好き勝手に言葉を吐くと、満足した様子で部活があるからと学食を出ていってしまった。残っているのは自分と、隣の席の友人だけだ。
「お前は、部活は?」
「行くよー」
「じゃなんで残ってんの」
「お前が不満そうだから?」
「いやだって何が何だかわかんねーっつーか、お前ら、俺に釘刺したかったんじゃないわけ?」
 校内でキスしてるって噂を認めたから、もっと何やら色々言われるんだろうと思ってたのに。
「したいって言われて断らなかったんだろ。クギ刺すとしたらお前じゃなくて後輩の方。性的に緩い相手選んじゃったんだからお前がしっかりしなさいねーくらいは言うかもだけど、言ってもどうせ止めないだろ」
「俺に、止めさせろとは言わないの?」
「平日も家連れ込んで夕飯食えば? とは思うけど、それが無理なら外でチュッチュするより学校内でチュッチュしてから帰るほうがマシな気はする」
「だよねー」
 平日の夕飯をファミレスやらファーストフードではなく自宅でと言うのも有りな気はしていた。ただコンビニ弁当買って帰って一緒に食おうという提案を相手が飲むかは問題だ。相手が作るとか言い出しそうで、部活上がりにそこまで面倒かけるのが嫌だなとは思うし、その確率が高そうで家で食べないかとはなかなか言い出せずにいる。
「噂もさ、今更お前が校内で男とキスしてたって聞いたって、ああやっぱ本当にあの一年男子が恋人になったんだ、って思われるだけだと思うんだよな」
「いや別に、噂はどうでもいいけど」
 言えば知ってると苦笑された。
「むしろ、お前があっさり俺らに噂認めたのがビックリだったわ」
「俺が誤魔化したって、あいつにその噂持ってったら、あいつが認めるに決まってる」
「ですねー。じゃあ何で俺らは、あいつじゃなくてお前に確認したんでしょう?」
「え、なんでだろ?」
 唐突の質問に、素でさっぱりわからず首を傾げる。
「お前の反応を見ただけに決まってんじゃん。お前もそれなりに本気であいつのこと考えてくれてるっぽいのがわかったから、俺らは安心してお前にあいつを預ける気になったわけですよ。いや安心しては言いすぎだけど」
 そこでニヤリと人の悪い笑みを浮かべてから、友人は更に続ける。
「あと、俺からすると、お前が思ったより後輩にメロメロっぽいのわかって楽しかったわ」
「ちょ、メロメロって」
 こちらがあわあわするのを更に面白げに見つめたあと、友人はカラの皿が乗った目の前のトレーに手をかけながら席を立つ。
「さて、俺もそろそろ部活行くけど、なんか言っておきたいこととかある?」
 別にないよと出来る限り素っ気なく返しながら、自分も学食のトレーを手に立ち上がった。

続きました→

 
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