小さく息を吐きだして思考を中断する。今は親のことをあれこれ考える時間じゃない。
「じゃあさ、お前がまだ信じてない俺の噂で、確認したいこととかはある? というかお前、俺の恋人として、どこまでしてくれる気でいるの? 逆に、恋人としての俺に、どこまでさせる予定?」
「ああ、それは俺も聞きたかったす。この罰ゲーム、恋人としてどこまでしなきゃならないんすか?」
なんだ。ちゃんと疑問には思っていたのか。
内心ではそう思っているくせに、毎日部活後に真っ直ぐ帰りたいだろう所をこちらの夕飯に付き合って、更にはこうして料理までしに家まで来てくれているのかと思うと、なんとも律儀というか真面目というか、正直ちょっと変なやつだとすら思ってしまう。
「俺の希望としては、なるべく一緒にご飯食べて欲しいくらいしかないよ」
「なら、寂しいから泊まってって、てのはやっぱだたの噂すか?」
「そうでもないかな。寂しいから泊まってってとは確かによく言う。でもそれ、サービストーク的なやつだよ?」
「なんすかそれ」
わけがわからないという顔をするから軽く笑ってやって、だって皆知ってるんだもんと返した。
「皆、というか、俺に告白してくるような女の子たちは、俺のカワイソウな状況知ってて近づいてくるわけ。だから俺も孤独で寂しがりな男になって甘えるの。彼女らはそれが嬉しいの。ついでに言っておくと、実際に泊まってく女の子ってほぼ居ないからね?」
実際に泊まってもらっていた事もないわけじゃないのだけれど、最近はそういった言葉遊びを楽しむくらいで、本当には泊めなくなってしまった。中には本気で泊まりたがる子も居るけれど、相手が本気であればあるほど逆に距離を置く。要注意人物として警戒してしまう。
付き合って下さいには簡単に頷けても、恋をして下さい、愛して下さい、という要望には応えられない自覚が今はもうある。どんなにいい子でも、本気になられる前に手を放すのが得策だ。だってこちらは、寂しい時間を優しく埋めてくれれば誰でも良いのだから。
「え、そうなんすか?」
「そりゃそうでしょ。過去の相手、ほぼ同じ学校の女の子だよ? 女子高生だよ? 俺の環境がちょっと特殊なことはわかってるし、皆家で親が待ってるんだよ? そんな遅くなる前にちゃんと帰してるって」
「ということは、実際はそこまで寂しくも、ない……とか?」
「ううん。寂しい」
すぐさま否定してやれば、ますます意味がわからないといった様子で、相手の混乱がうかがえる。
「だって寂しくなかったら、告白されても断ってるよね。食事だけなら友達誘って一緒に食って貰うんでもいいんだけどさ、友人と恋人って、親密度がやっぱ違うなと思うんだよ」
「親密度、っすか」
「うんそう。自分で言うのも何だけど、スキンシップ飢えてんだよね。イチャイチャするの大好き。でも男友達にベタベタしたら普通にキモいでしょ」
「キモくなければするんすか?」
「え、どうだろ。そもそも友達にしようと思ったことがないかな。というか友達じゃ居られなくなりそうで、いくら飢えてても友達相手にイチャイチャやるのは嫌だよ」
性的なものを除いたって、友人としての触れ合いと、恋人としての触れ合いは明らかに違うと思う。友人相手に恋人にするような触れ合い方をしてしまったら、それを相手が受け入れたとしたら、自分はその相手を友人とは呼べなくなってしまいそうだ。
もしいつか、自分の悪評が広がって誰も告白してくれなくなっても、さすがに友人と思っている男友達相手に、一緒に食事をしてもらう以上の何かを求めようとは思えない。
「男だからキモい、ってわけじゃないんすね」
「あー……うん、言われればそうね。というか相手が男なら男で、意外と嬉しかったりするのかも」
「えっ?」
「あ、いや、そのさ、俺、父親に肩車とかおんぶとか抱っことか、そういうのと無縁の子供時代送ってるから、逞しい腕に抱きかかえられたらそれはそれで嬉しかったりするのかなーとも思っただけで」
「じゃあ、女の子たちはお母さんなんすね」
「あ、ごめん。今の無しで」
話の流れでうっかり変なことを口走ってしまった。
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