二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった10

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 なんせ、悪くなかったと思って貰えたら、やりたくなった時に呼んで貰えるようになるかも。なんて事を口にしていたくらいだ。多分、こちらが好き勝手やって満足するだけで、相手からすれば目的達成なんだろう。
 やりたい盛りの若い頃なら、セフレとして重宝した可能性はあると思う。相手の愛想が尽きるまでと割り切って、相手の体を利用することを躊躇わなかったかもしれない。
 とはいえ、セックスは体を使ったコミュニケーションという認識だし、やれないならデートに時間や金を使いたくないという気持ちはあっても、恋人を穴扱いした記憶はないし、明確にセフレと呼ぶような相手が居たこともないので、本当に割り切ったお付き合いが出来たかはわからないけれど。
 そもそも、こんな一方的な献身を受けるのが初めてだし、恋人になりたいわけじゃない、なんて相手を抱いた経験もない。恋人ではない相手としたこともなくはないが、一応、やったあとに恋人になれる前提で抱いていた。
 かといって、恋人になりたいと思っているわけじゃないのがはっきりわかっている、一回り以上年下の、しかも男の子相手に、恋人になる前提で触れられるほどの図太さも無神経さも持ち合わせていない。
 こんなに抱かれたがっているのだから、抱いてやりたいと思うし、無理だとも思わないけれど、一方的な献身を放漫に受け取り、便利な穴として利用するのはどうしたって躊躇ってしまう。たとえ相手がそれを望んでいるのだとしてもだ。
 やりたいだけで突っ走れる若さはもうないし、一緒に酒が飲める年齢になったとはいえ、これだけ年齢差があったら、どんな結果になろうとお互い様だとは言い難い。もし相手を傷つけるようなことになったら、責任を感じずにいられるとは思えない。
「……ぁっ、ふ……」
 耳のすぐ近くで吐かれた甘やかな吐息を拾って、思わず体に緊張が走った。じっと抱きしめる相手の体は随分と熱を持ち始めていて、かすかに震えてもいるようだ。
 一瞬何が起きているのかわからず混乱しかけたけれど、すぐに、どうしようかと考えながら相手の背を無意識に撫で回していた事に気づいた。冷えた体を少しでも温めてやりたかっただけで、下心を持って愛撫していたわけではないのだけれど、相手からすればこちらの意図など関係がないのはわかっている。
 随分と感じやすいんだなと思ってから、耐性がないのかと思い直す。抱かれた経験がないことは聞いているが、さきほどの話からすれば、誰かを抱いた経験だってないだろう。誰かを好きだと思う前に、想像で作り上げたはずの理想の男と再会してしまったせいで、自分がゲイなのかすらわからないと言っていたくらいなのだから。
 動きを止めていた手を、今度はしっかりと意図を持って動かした。何をしたかというと、今までは背中しか撫でていなかった手を相手の尻へ持っていって、撫でるだけでなく柔く揉んでやった。
「ふぁっ」
 ビクリと小さく体を跳ねたけれど、逃げる様子はない。しかし、考え事をしているうちに少しばかり緩んでいた抱きつく腕の力が、また先程と同じくらいには強くなってしまったし、相変わらず体を震わせてもいるから、嫌がっていないという確信は持てなかった。
 顔を見たいなと思う。顔を見て確かめたい。
「なぁ、顔上げて」
 好き勝手抱いていいと思っているのは事実だろうから、好き勝手にさせて貰う覚悟を決めて声をかける。ただし、相手が考える好き勝手とはかなり違うだろうけれど。

続きました→

 
 
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