二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった9

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 ラブホではないという点を一応は考慮して、ベッドの上にゴムやローションを転がしたついでに、部屋着を広げて敷いておく。シーツやらを汚すよりはいくらかマシかも知れない。
 やるためのスペースを作り終えたあとはベッドの端に腰を下ろす。後は相手が出てくるのを待つだけだった。
 しかし、思った以上に時間が掛かっているようで、なかなかバスルームのドアが開かない。いい加減様子を見に行ったほうがいいかと腰を浮かせたそのタイミングで、ようやくカチャリと音がした。
「大丈夫か?」
 思わずそう声をかけたのは、出てきた相手の動きがやけに緩慢だったからだ。こちらが裸で出てきてしまったのもあってか、やはり相手も裸だったから、本当は、使ったバスタオルを持ってきてくれと言うつもりだったのに。
 それよりも、相手の様子が気になってしまった。慣れないことをして疲れてしまった、という程度ならいいのだけど。
「あ、はい……」
「お腹、痛くなってない?」
「だいじょぶ、です」
「なら、いいけど。てか続きする気は残ってる?」
 一人になってあれこれ考えたら抱かれるのが嫌になった、という可能性も捨てきれない。抱かれたいという気持ちがやたら強いのは感じていても、その理由がイマイチ不明なままだし、ちょっとしたキッカケで思い込みが反転するなんてのもありがちだ。人の手で洗腸される、なんて経験は、きっと充分なキッカケになるだろう。
「抱かれたいとは、思ってます、けど……」
「何か気がかりが出来たってなら、言っていいよ。即解消できるかはわかんないけど」
「いえ、いいです。このまま、抱いて、ください」
 そう言われても気にはなる。とは思いながらも、口では、じゃあおいでと相手のことを呼んでいた。
「とりあえず、ちょっとここ座って」
「ここ?」
「そう、ここ。向い合せな」
 近づいてきた相手に向かって、自身の腿をポンポンと叩いて見せれば、相手はあからさまに戸惑っている。まぁベッドの上に転がされるつもりでいたのだろうし、当然な反応なのはわかる。
「抱かれたいんだろ?」
 そう言ってやれば、疑問やら戸惑いやらは、やはりあっさりと飲み込んだらしい。抱かれたいなら、という言葉でどこまで言うことを聞くつもりなのか、試してやろうなんてことは思っていないけれど、どうにも不安を掻き立てられる。
「わかり、ました。けど、その、向かい合わせに座ったら、」
「ああ、うん、俺に抱きつく感じで」
 大丈夫だからおいでと示すように両腕を広げて見せれば、また少し戸惑いと逡巡をみせたけれど、今度は何も言わずに待っていれば、すぐに覚悟を決めた様子で乗り上げてくる。赤くなった顔を見られたくないのか、ぎゅっと抱きついてくる腕は結構強い。
 広げていた腕を回して抱きとめた背中は、風呂上がりにしては冷えていた。冷えているのは合わさる胸もだ。
「体冷えてんなぁ。まさか水浴びてきたってことないよな?」
「いえ、さすがに。というか、あの、これ、本当に何の意味が……」
「んー……特に意味があるわけじゃないけど」
「は?」
「セックスすんなら、もうちょっと楽しい感じでやりたいなと思って。というか、今のお前をこのまま抱くのは、ちょっとこっちの罪悪感? 背徳感? が強すぎて」
「なんですか、それ」
「本気で抱かれたいらしいのはわかったし、突っ込む気も満々だけど。ちょっと気負い過ぎと言うか、抱かれるためならなんでもする、みたいになってんの、自覚ある?」
「自覚というか、抱いて貰えるなら、なんでもするつもり、ですけど」
 ああやっぱり、と思う反面、どうしたもんかと溢れそうになる溜め息を飲み込んだ。

続きました→

 
 
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