二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった21

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「それはごめん。でも今もまだ俺と飲みに行きたい気持ちがあるって聞いてから、確かめたくて」
「何をですか?」
「片恋のまま俺のそばうろつきたい理由って何? 俺を落とす気でそばに居たいわけじゃないんだろ?」
 積極的にセフレになろうとしてる辺り、落とす気がない、のかどうかもいささか怪しいとは思うが、恋愛したいわけじゃないと言い切っていながら、共に過ごす時間をやたら求められている理由は気になる。
「え?」
「お前の気持ちを気にしないのは無理だけど、例えば俺と今後も飲みに行きたい理由が、現実の俺を知ることで他の誰かを好きになれたらいいな。みたいな気持ちだってなら、多少は協力してやってもいいかなと」
「他の誰か?」
 なんだそれと言いたげな顔と声に、どうやらその線もないらしいと思う。しかし他に思い浮かぶ理由がない。
 いやまぁ、なんの狙いもなく好きな相手とただただ共に過ごしたいだけ、という可能性もあるんだけれど。どう考えても恋愛初心者なので、その可能性が高いのかと思ったりもするのだけれど。
 さすがにそれを受け入れてやるのはどうなんだ。というか、無理だと思う。めちゃくちゃ好きだけど好きになって欲しくはないんです。なんて態度の相手にそばをうろつかれて平静が保てるわけがない。
 自分を好きだとわかっている相手と、恋愛しない関係の構築など試みたことがなかった。相手の好意に応える気がない時はさっくり距離をおいたし、応えてはいけないという状況でも多分同じだ。すぐに面倒くさいとか鬱陶しいとか思って、相手を避けるようになる気がする。
 それは多分、相手からすれば回避したい展開だろう。
 いっそ、こちらから落としに行ってしまおうか。相手に恋愛する気がなくたって、勝手に始めてしまえばいい。
 相手はかなり年下の男で、従兄弟でもあるけれど、一応は二十歳を超えた大人なのだし、抱けると思ったのだから、年の差や男であることはとりあえず問題なしといえる。従兄弟だってことも親バレしなきゃいいだろう。
 今日のように確実に親が仕事の平日昼間から会えるなら、場所代ケチって家に連れ込むなんてこともするかもしれないが、万が一親と鉢合わせた時の態度にさえ気をつけておけば大丈夫じゃないのか。まさか馬鹿正直に、恋人として紹介するはずもないのだから。
「なぁ」
「じゃあ」
 こちらが口を開くと同時に相手も口を開いたので、双方そこで言葉を区切った。
「じゃあ、何?」
 先にどうぞと促してやれば、こちらの続きを気にする様子を見せながらも口を開く。
「えと、現実のあなたを知れば他の誰かを好きになれるかもなので」
 こちらがあれこれ考えている間に、相手も先程告げた言葉について考えていたのかも知れない。ただ、すぐにそうだと肯定が返らなかった時点で、あの話は終わりになっている。なんせ既にこちらは相手を落とす事を考え始めているのだから、今更、幻滅するのに協力してくださいなんて言われて、わかったと返すわけがない。
「それ本気で言ってる? てか理想イメージ育てた自覚があるから現実のオレに幻滅したくてそばにいたい、ってわけじゃないのはわかったから、片恋のまま俺のそばうろつきたい理由が話せないなら、俺と恋愛出来ない理由教えて」
「ええっ!?」
 その驚きようからすると、そこを突っ込まれる想定はなかったらしい。
「年の差ありすぎて恋愛対象にならない、ってことかと思ってたけど、一緒に飲みいくの楽しめるならデートできるし、俺相手にキスも出来るし、まだ突っ込んでないけどセックスだって出来る予定だろ。しかも一度だけ抱かれたいってわけじゃなく、都合よく呼び出されたいってのは継続希望なわけじゃん。じゃあお前が言う、恋愛したいわけじゃない理由って何よ。俺がお前にほだされてお前好きになったとして、嬉しいより困るってのはなんで?」
「それはあなたの年齢が、」
「いやだから、今言ったろ。年齢差あるのはわかってるけど、別に恋人やれなくないだろ」
「じゃなくて。自分の年齢考えろ、って話、です」
「自分の年齢くらいわかってるけど」
「じゃあなんで恋人居ないなんて言うんですか」
「実際に居ないんだから、そりゃ居ないって言うだろ」
 またわけがわからないことを言い始めたなとは思ったが、事実を淡々と告げれる程度には、いい加減慣れ始めているのかも知れない。

続きました→

 
 
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