取り敢えずゆっくり話せる場所に移動しようということで、近くのカラオケボックスに入った。どう考えたって会話の内容が男同士で好きだの付き合うだのになるのはわかっていたから、会話が他の客に聞かれない場所をとなると、それくらいしか思いつかなかったせいだ。
「それで、お前の話って、何?」
小さな部屋の中、横長ソファーの端と端に座って、警戒心いっぱいに問いかける。
なんで謝られるのかさっぱりわからないし、また余計な話を聞いて無駄に傷つくのだって怖い。こいつが誰を好きになろうと仕方がないとは思えるけれど、それをわざわざ聞かされたくはないのだ。でもその話を蒸し返される予感がする。
だって、あの日こいつが男を好きになったかもと言い出さなければ、きっと吐いたりしなかったし、吐きに行かなければ友人と取り敢えずで恋人なんて関係にはならなかった。
「あのさ、この前話した後輩の事なんだけど」
ほらやっぱり。
「待って。やっぱ聞きたくない」
「ゴメン、でも聞いて」
「やだって。俺はお前が好きなんだぞ。お前が誰好きになったっていいけど、でもそれを俺に聞かせるな」
「まだ、俺を好きだって、言ってくれるんだ?」
相手は驚いた様子で開いた目を瞬かせている。
「そりゃだって、今更止められるような好きじゃねーもん」
「あー……うん。そっか。そうだよな」
深い溜息が吐き出されて、なんだか責められているみたいで居心地が悪い。
「なぁ、お前の好きってさ、やっぱ今も一方的に俺がスルーしてなきゃダメなやつなわけ?」
「は? どういう意味だよ」
「言葉通りの意味だよ。お前が言ったんだろ。俺を好きになったから好きって言いたいけど、俺と親友のままでいたいから、お前が好きって言ってもスルーしてくれって」
忘れたのかと言われたので、慌てて首を横に振った。それは中学を卒業した春休みに彼へと告げた言葉だ。
「覚えてる。お前には、感謝してるよ」
「感謝ね……」
相手はまた自嘲気味に笑っている。
「俺は結構後悔してるよ。お前の好きを聞き流すのが当たり前の関係になったこと」
後悔してるなどという言葉を辛そうに吐き出されて、胸の奥が痛くなる。どう答えて良いのかわからなくて言葉を探すうちに、待ちきれなかったらしい相手が更に言葉を重ねていく。
「俺に彼女が出来てもお前は平気そうな顔をしてたし、お前に彼女がいた事だってあったよな。でも、お前は顔を合わせると、やっぱり俺に好きって言うんだ。だからもう、学生時代の鉄板ネタ挨拶みたいなものかなって思ってた」
「そう思われてるのは、知ってた。でも別に、それで良かったんだよ」
「全然良くないだろ。俺が男好きになったかもって言っただけで、あっさり別の男と恋人になったくせに」
「いやまぁ、あれは成り行きで……」
「あーいや、ゴメン。お前を責めてるわけじゃない。というか、悪いのは俺の方」
「お前の何が悪いの? 後輩の男ってのを好きになったって、それはお前と後輩の問題で、俺が勝手に傷ついただけでお前は悪くないよ」
「いや、俺が悪いよ。お前が気づいてないだけで、俺はお前を試してた。あいつはそれに気づいたから、俺に怒って、お前を恋人って形で俺から掻っさらって見せたんだ」
「は? 試す? 何を?」
まったく意味がわからなくて、悔しそうに唇を噛み締めている相手を呆然と見つめていた。
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あ~、すごいすごい焦れ焦れモダモダします~。
親友君にも頑張って欲しいけど、やっぱり本命君にも頑張って欲しい……。
あ~~すごいすごい胸がきゅ~きゅ~って鳴っております!!!
ぽこさん、コメント有難うございます~
私自身、まだどっちにするか決めかねているというか、書きながら決まるかな~でももういっそもう途中分岐して2エンド作れば良くない? みたいな気持ちもあったりで迷いまくってるので、その迷いが焦れったいモダモダ展開になっちゃってるみたいです。
今後の展開がどうなるか私自身まだわかってませんが、最後までお付き合いいただければ幸いです(*^_^*)