驚きながらも咄嗟に、奥では気持ちよくなれないだろと返してしまえば、これ以上気持ちよくなりたくないという身も蓋もない言葉を、やはり苦しげな泣き声に乗せて吐き出してくる。更には、もう何も考えたくないのだとも。
レイプでいい。苦しくていい。酷くしていい。だから奥を使ってください。と続いた言い分に、何も考えられなくなるくらい、先程のように追い詰めて欲しいという話なのだと理解する。
なんとも寂しい話だ。
「俺に感じさせられるの、そんなに嫌?」
驚きついでに腰の動きは止めていたし、先程も会話が成立していたのだから、こちらの言葉は理解できているはずだ。なのにしばらく待っても、嫌かどうかの返事はなかった。
「正直に嫌だって言っていいのに。お前さ、ちょっと変な方向に意地張りすぎてない?」
否定も肯定もない。口を閉ざしてしまった相手が、何を考えているかなんてわからない。
大きく息を吐いて、それからゆっくりと、埋めていたものをズルリと全て引き抜いた。
「え……っ?」
小さく声を上げてから、途中ですっかり崩れるように伏せてしまっていた上体をゆっくりと起こす。相手の困惑と戸惑いははっきりと伝わっていた。
四つ這いの状態に戻ってからも暫く迷う様子を見せて、それから腰を落としてその場に座り込むと、ようやくこわごわとこちらを振り返る。しかし当然その目はアイマスクで隠されていて、互いの顔を確認することは出来なかった。
どうするのかと見守る中、相手の手がアイマスクへ伸びていく。迷い続ける相手の動きは鈍く、その手を掴むのは簡単だった。
「まだダメだよ。もう少し待って」
「な、……んで……」
阻止されるとは思わなかったのか、声が不安げに揺れている。
「お前の泣き顔直視したら、これ以上酷いことは出来なくなるから」
「ぁ……おわり、じゃ……ない?」
ホッとしたように息を吐くから、やっぱりまだ続けて欲しいのかと思って、また一つため息がこぼれ落ちた。
「終わりだよ」
告げれば驚いた様子で息を呑んで、それから震える声が嫌だと吐き出してくる。
「どうして? とにかく抱いて欲しいってお前の希望は叶えてやった。間違いなく俺はお前の中に入ったし、お前はもう未経験とはいえない状態にある。なのにこのまま終わったらダメなの?」
「だ、って……まだ……だってそんな、」
ひぅっと喉が鳴って、また泣かせたようだった。アイマスクを掛けたままにしておいて良かった。泣いている目元が見えなくてさえ、抱きしめてキスをして泣かなくていいとあやしたい衝動がこんなにも押し寄せている。
そんな衝動をグッと飲み込んで、そっと深呼吸を繰り返した。
「俺が側にいたらずっと辛いままかな。少し一人にしようか」
「ぃヤダっっ」
反応が返るとは思っていなかったし、返事がなければ部屋を出ていくつもりでいたのに、思いの外強い声が拒否を示す。
「まさかと思うけど、お前、俺の言葉は取り敢えず否定したい、とかでイヤって言ってんじゃないだろうな?」
ありえそうだと自嘲していたら、もう一度嫌だと零した相手が、その後置いて行かないでと言ったようだった。
「なんだって?」
何かの聞き間違いかと、思わず聞き返す。
「おね、がい。一人に、しないで。ごめんなさい。おねがい、おいてか、ないで。ごめん、なさい」
聞き間違いではなかったらしい。あまりに驚いて、呆気にとられたまま相手を見つめてしまえば、視界を塞がれこちらの驚きには気付いていない相手が「ごめんなさい」と「おねがい」を何度も繰り返した。
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