本館の大浴場をたっぷりと堪能してから戻れば、寝室的な感じで区切られた場所に最初っから敷かれていた寝具の片方で、相手が寝息を立ていた。
客室に併設されている専用露天風呂だけで十分だと言って、本館までの移動を面倒がって一緒に大浴場へ行くことをしなかったのは、もしかして疲れていたからだろうか。もしくは、かなり長湯してしまったから、単に暇を持て余して寝てしまっただけかもしれない。
夕食まではまだそれなりに時間があるから、戻ったら抱かれるのだと思っていたのに。と言ってもそれは、食事前に一回、少し時間を開けて寝る前に一回、くらいで満足してくれたら良いのにという、こちらの願望でしかないのかも知れないけれど。
隣の寝具に腰を下ろして、ぼんやりと相手の寝顔を見つめる。寝顔なんて初めてみた。
可能性の一つとして、抱き潰されて寝顔を晒すことはあったとしても、逆はないと思っていた。そうか。宿泊先で長時間一緒に過ごすということは、相手が寝ている間に自分が起きているという、こんな時間帯も存在するのか。
寝ているならいいだろうと、しげしげとその顔を眺め見ながら、この人は何で自分を抱くんだろうと不思議に思う。
間違っても不細工と判断されるような容姿じゃないし、部署が違うので仕事っぷりはあまり知らないけれど、それでも職場での評価がそこそこ以上に高いらしい事は知っている。男でも女でも、それなりに好意を寄せてくれる相手はいそうだと思う。
あの親睦会以降、セックスとセットみたいな感じでしょっちゅう奢られているけれど、値段は気にせず好きに食べていいって方針で、わざと高いものを選んで頼んでも何も言わないし、逆に値段の安いものばかり選んで頼んだら気を遣うなと怒られる。今回の旅行だって、想像していた温泉旅館とはまったく違ってなんだか随分と豪華で、自分は部屋に案内された最初はビックリし過ぎて呆けてしまったのに、相手は慣れた様子で仲居さんから宿の説明を受けつつ和やかに会話していた。
だから、自分みたいに金銭的に厳しくて、デートするような余剰金がないから恋人なんて作れない、ってこともなさそうだ。
というかなんでこの人、あの寮にいるんだろう?
社宅で自炊が嫌なのだとしても、寮で出されるほんのり微妙な食事よりは、好きに買ってくるなり食べに行くなりした方が良さそうなのに。だって食事に連れて行かれる店からして、この人多分、かなり舌が肥えている。
ただただ気楽に性欲を処理したいだけだとしても、自分はそこまで相手に都合よく便利な穴ではないはずだ。黙って足を開きはするし、キモチイイと喘いで反応は返すけれど、して貰うばかりでこちらから何かしらの奉仕をしてやることはない。まぁ求められたこともないけれど。
そこまで考えたら、ふと、もしこちらから相手に触れたら、相手はいったいどんな反応をするのだろうかと思ってしまった。
たまには奉仕っぽいことをしてやるのもいいかもしれない。風呂上がりなはずだし、ちょっと口に咥えて舐めてやるくらいはチャレンジしてみようか。
酔わせて潰した相手に突っ込むまでした相手なんだから、寝ている体に少しばかり悪戯したって文句を言える立場にないだろう。ヤるために来たはずの場所で、何もせずに無防備に寝姿を晒した向こうが悪い。
せっかく気持ちよく寝ている所を起こしてしまうかもしれないけれど、どうせなら起きてそのまま一発抜いてしまえばいいとも思う。元々、食事前に一回して置くつもりだったのだから、そのまま抱かれてもいいし、口の中に出されるのは嫌だけれど、初めてのフェラに興奮するってならまぁ我慢してやってもいい。
そんなことを思いながら、相手の体に手を伸ばす。慣れないことをしようとしているので、おっかなびっくりなのは仕方がない。ただ、あまりにもたついたせいか、相手の股間を剥き出すより先に、相手の目が開いてしまった。
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