罰ゲームを開始して一ヶ月経過した日の一限終了後、最初のあの日を真似たのか、わざわざこちらの教室まで尋ねてきた相手は、これで罰ゲームは終了でいいですよねと聞いてきた。
こちらがいいよと返す前に、罰ゲーム期間は最低一ヶ月であって、上手く行ってるなら別に続けてたって良いんだぞと横槍を入れてきたのは、同じクラスのバスケ部員でこの罰ゲームを仕組んだうちの一人でもある。
「はい。だから、終わるのは罰ゲームだけっす」
「ん? どういうこと?」
不思議そうな顔をするバスケ部員からこちらに向き直り、真っ直ぐに見据えてくる真剣な顔から、彼の思惑ははっきりと伝わっていた。罰ゲームを終えたら本気の告白をしに行く、とは言われていたのだから当然だ。ただ、教室でどうどうと、あえて周囲に聞かせるような告白をする、などとはもちろん聞いていない。
「一応聞くけど、時と場所とを選んで、この状況?」
「そぉっす」
考えなしに突っ走るようなタイプではないのは、一ヶ月の恋人ごっこ期間で重々承知していたけれど、はっきりきっぱり肯定されて苦笑した。
きちんと考えた結果ならいい。彼とごっこの付かない恋人となる覚悟はとうに出来ている。
今更どんな噂がたとうと気にはしないし、周りにはっきりと知らせてしまったほうが減る面倒事もあるだろう。逆に増える面倒事もありそうだけれど。
「じゃあどうぞ」
「好きです。今度は罰ゲームとしてじゃなく、俺と、付き合って下さい」
促せば、あの日と同じようによく通る大きな声が教室内に響いた。ざわつきがピタリとおさまり、シンと静まり返ってしまった教室内では、多分ほとんどの生徒が自分の返答を待っている。
「いいよ。じゃあ今度はちゃんと恋人として、宜しく」
瞬間、教室内に喧騒が戻った。ぎゃーとかマジかとかの声は、明らかにこちらの返答に対する反応だろう。
「おいおいおい。マジかよ。罰ゲームで本気になったとかあんの? え、男同士で?」
はっきりと声を掛けてきたのは、もちろんすぐ傍らでこの告白劇を見ていたバスケ部員の友人だ。
「まぁ実際、罰ゲームうまく行ってたからね。なんとなくダラダラ罰ゲーム続けるより、恋人になるならなっちゃってもいいかなって」
「いやいやだってお前、罰ゲームの恋人と本気の恋人って違っ……わない、のか?」
「そりゃ違うでしょ。恋人は恋人だからね。罰ゲームで仕方なく一緒にいるわけじゃないからね。こいつと破局するまでは他の告白は受けないよって、周りに知っててもらうのは悪くないかなって思って」
「いやそーゆーの聞いてるわけじゃなくて。あ、でも、これがお前らのパフォーマンスなのはわかった」
「じゃ、そゆわけなんで、今後も宜しくお願いしまっす」
その宜しくはどちらかというと自分よりもバスケ部の先輩宛という気がしたが、晴れて恋人となった相手を放置で話す自分たちへ一度深々と頭を下げてから、彼は次の授業があるのでと言って教室を出ていった。
「あっけねー。つかあれ、本気の告白して、本気で好きな人と恋人になりました、って態度じゃなくね?」
「そうかな?」
教室での告白を許可して、皆の前で恋人宣言したことを、結構嬉しそうにしていたと思うんだけれど。いやでも平然を装っている感じはあったかもしれない。
結果的に、このバスケ部友人は完全に暫く女の恋人は要らないというパフォーマンスと受け取ったようだし、それが彼の狙いだったなら大成功じゃないか。でもそう思うと、ちょっとだけ何かが悔しい。
だってお互いちゃんと、恋愛をするつもりで恋人になったのだから。決して、男同士つるむのが気楽でいい、なんて気持ちで恋人になったわけじゃない。
「まぁでも罰ゲームは確かに終了で、恋人は恋人だから」
少しばかりムキになって告げれば、それはわかったからと軽くいなされますます冷静さが失われていく気がする。キスもするし抜き合うし、それ以上のことだってちょっと狙ってるくらい、本気で恋人なんだけど。と口に出しかけた所で、さすがにマズイとどうにか言葉を飲み込んだ。
本気で男同士で恋人になりました、というよりは、気が合う後輩と親しくしてるのが楽だから暫く女の子とお付き合いする気はないです、って思われていたほうが絶対いいに決まってる。
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