なぜそんなにオナニーを見たがるんだろう。聞いてみたら、逆になぜ見せないのか理解しがたいとまで言われてしまった。
今までの性愛対象は女だけだったと言うなら、彼には一切触らせず、見せるだけで済むことから選べば良かったのにと言うことらしい。
「オナニー見せるだけで一万も払ってやるの、お試しの時か初回くらいだったのに、お前、それ逃したんだぞ?」
「そんなこと言われても、だってそんなの、知りませんもん。だいたい、俺が初回にオッケーしたの、キスだけですよ。オナニー見せろのがどう考えてもハードル高いのに、そんなの選べるわけない」
「キスのがオナニー見せろよりハードル低いと思うところが、お前は本当に迂闊で可愛いよな」
「ソーデスネ」
ムッとしつつ棒読みで言い放てば、おかしそうに笑われてしまった。
「というか、慣れたら金額下げていくみたいなことは言われましたけど、したことないことでも、初回でやらなかったり出来なかったら下がってくって事なんですか?」
「それは場合によるな。お前はもう俺に気持ち良くイク顔見られてるし、自分から積極的に腰振る真似もしたから、お前が今からオナニーしてみせるって言ってもその分はマイナスする。今後も、お前のペニスを直接見たり、射精する所を見たあとなら、お前のオナニー披露に対する値段はもっと下がってくよ。ちなみにこれ、最初の一回が、なにより抵抗感が強いという前提での話な」
なるほど、価格設定は適当と言いつつも、一応そういう基準的なものはやはりあるのか。などと考えていたら、うまく俺を騙せって言ったの覚えてるかと問われた。
「あ、はい」
「中には、経験したからこそもう二度と嫌だって思うこともあるよな。そういうのは逆に値段上がってくから、俺に本気で嫌がってるって思わせたらいい。まぁ、俺だってお前が本気かどうかは見抜くつもりだけど」
「それ、絶対だませないやつ」
無理じゃんと思いながらぼそりと声に出してしまえば、多分お前にゃ無理だなと笑われながら肯定されてしまった。ですよね。
「オナニーに話を戻すけど、もし今後もお前がずっと抵抗し続けて、一人で処理するところを俺に見せないってなら、後は根比べだな。俺はあの手この手でお前がオナニー見せるように仕向けるけど、それをお前が拒否し続けたら、いつか、むりやりお前にやらせるかも知れない。お前が俺に脅されて震えて泣きながら、仕方なく自分で自分を慰める所を俺に見せるってなら、その時は一万どころじゃなく支払うだろうよ」
見つめられて、少しだけゾクリとした。オナニーに話を戻すと言われたけれど、オナニーに限った話じゃないことは明白で、これは、どんなに拒否してもさせるときはさせると言われているに等しい。
「俺が本心から本気で嫌がってても、させるの?」
「どうだろうな? なんて言って余計な不安を煽っとくのも楽しそうだけど、お前けっこう涙腺ゆるゆるだから、そこはあんま心配しなくていいよ。ただし、本心から本気で、嫌がった場合な」
本心から本気でを思いっきり強調された。
「まぁ基本的には、出来ると思ったらやらせるよ。てわけで、少しでも高値払ってもらいたいなら、さっさとオナニーするとこ見せな。それとも、頑張って拒否し続けてみるか? と言っても、お前がさっきやろうとしたのなんてほぼほぼオナニー披露だから、このままなら近いうちに、気付いたら自分で自分の勃起ペニス握って扱いてましたって事になりそうだけど」
それはものすごくありえそうな展開だ。オナニー見せる気なんかなくっても、気付いたらいつの間にかさせられているんだろう。
「それならそれで、いいです。だって頑張って高値で売りつけなくても、思った以上に高値で買ってもらってる」
「なら、わざわざ練習してきたのはなんで?」
「なんで、って、なんですか?」
「俺の腿に勃起ペニス擦り付けてイク、ってのが一つの課題みたいになってるのはわかってるんだよな? だから、さっさと自分から出来るようになったら、短時間でそこそこの報酬が見込めるって思って練習してきたんじゃないのか?」
「は?」
まったく考えてもいなかったことを言われて呆気にとられてしまえば、相手も釣られたように呆然とした顔になる。
「違うの?」
「いやだから、さっきも言ったじゃないですか」
「さっき? どれだ?」
「俺が頑張ったら、きっと褒めてもらえるんだろうなって、思ったんですよ。まさか、おしおきされる羽目になるなんて、思わないじゃないですか」
「おしおきしたのは手順の問題。じゃなくって、お前……」
言葉をつまらせた相手が、じわじわとにやけていく。やがて、フハッと息を漏らすように笑いながら、抱きしめられた。
「あー、えらいえらい。一人で練習してきてホントいい子だな。お前、やること可愛すぎっつーか、面白すぎんだけど。あーお前このバイト受けてくれて、ホント、良かったわ」
結構盛大に笑われながら、グシャグシャと頭を撫で回される。もしかして褒めてくれているのかもしれないが、コレジャナイ感はんぱなかった。
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