※ 視点が予約を入れた側に変わっています
意気込んでダブルの部屋を申込んだことを後悔したのは、チェックインのときだった。フロントで名前を告げて鍵を受け取らなければならないのに、この二人がダブルの部屋にと思われることを、思いっきり躊躇してしまった。男二人でダブルの部屋を予約したことを、咎められたりしないかって、不安になってしまった。
そんなこちらの躊躇いに気づいたのか、お前はロビーの椅子で待ってなよと言い残して、恋人が一人でフロントへ向かっていく。酷く安堵しながらも、言われるまま彼任せにしてただただ待っている自分が、かなり情けなくて泣きそうだった。
せっかく誘ってもらったのだから、この旅行ではもう少し、自分からもちゃんと動こうって、そう決めてきたはずなのに。彼の方が自分に比べたら少しだけ積極的というだけで、彼だって相手をグイグイ引っ張っていくのが得意なタイプじゃないと知っているのだから、その彼におんぶにだっこでアレコレして貰っていたら、早々に相手が疲れて愛想を尽かされるのなんて目に見えている。
あっさりと鍵を受け取って戻ってきた彼は、どうやらすぐさまこちらの沈んでしまった気持ちに気づいたようだけれど、どうしたのと聞いてきたのは部屋に入ってある程度落ち着いてからだった。
「さっきはゴメン。この部屋予約入れたの俺なのに、チェックインしてくれて、ありがとう。あの、何も、言われなかった?」
「何も、ってどんな事を? 食事についてとか簡単な案内はされたけど、そんなの定形の説明だろ?」
どうやら相手は、こちらが何を不安に思ってあの時足を止めてしまったのかまでは、気づいていないらしい。
「えっ……と、その、男二人でダブルの部屋取ってて、変に思われてなさそうだった?」
「あー……いや別に。変な目で見られた感じはなかったけど、俺、そういうとこは鈍いから。気にしてたのそれなら、俺がチェックインで正解だろ」
大丈夫だよと言ってくれるけれど、そう言ってくれるからこそ、申し訳ない気持ちが膨らんでしまう。
「ほんと、ゴメン。なんでダブルの部屋なんて予約入れちゃったんだろ。男二人でダブルなんて、普通に考えたら、絶対おかしいってわかるのに。浮かれてダブルの部屋なんて取ったの、ちょっと、後悔してる」
「ちょっと待て。サイト経由で予約してんだから、男二人で利用するってのは事前にここだって知ってたはずだろ? 男二人でダブル利用がダメだってなら、事前になんだかんだ理由つけて断ってくるか、ツインの部屋を使ってくれって提案があってもいいはずだ。何も言われてないし、俺が鈍いだけとしたって変な目で見られてる感じもなかったから、意外と男二人でダブルの部屋使う客も居るのかもしれないだろ。だからおかしいって決めつけるのはやめないか?」
一生懸命こちらの沈んだ気持ちを晴らそうと言い募ってくれるのが嬉しい。そう言われれば、確かにそうだなって思えるし、あまり気にすることではないのかもしれない。
自分たちは好みや興味の対象が割と近くて、互いに相手の懐にガンガン入り込むような図々しさがない安心感があって、似た者同士だから惹かれ合った部分は確かに多い。それは彼自身も認めている。
でも自分が彼に惹かれるのは、似た者同士という安心感などではなかった。惹かれているのは、同じように消極的でありながら、自分とは違って物事を前向きに捕らえる、彼の明るく朗らかな性格だ。つまり、似た者同士でありながらも間逆な部分にこそ、惹かれている。
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可愛い!内気なカップルの、あれやこれやが、楽しみ♪
十余年前にビジネスホテルのフロントで週末のチェックイン専門で、働いてたけど、
男性2人のダブル利用って良くあった。毎週ご利用のお客様も。
ツインより、安いからだとばかり思ってた。
あれ?鈍かっただけかしら…。(笑)
るるさんこんにちは〜
内気な二人を可愛いって言ってくれてありがとうございます。
既に書き上がってる次回分も、夜のあれやこれやまでは書いてないので、その辺はぜひ、るるさんの妄想力で補ってやって下さい。笑。
そして、リアルな経験談もありがとうございます!
やっぱ本人たちが気にするほど、ホテルスタッフさんは気にしてませんよね。というか、他にもそういう利用者は居るはずだし、きっと慣れてるでしょと思ってました。だってツインより安い場合が多いですもんね。