焦ってたようには全く見えなかったと言えば、笑って、絶対知られたくなかったからと返ってくる。
「つまり、今ならもう、知られても良くなった?」
「そうだね。そろそろ知ってて貰ってもいいかなって」
「大学卒業するから? それとも、俺が親に縁切り宣言されたから?」
「どっちも。あと、お前が卒業したら同棲しようって言ったから」
お前からそう言ってくれたの本当に嬉しいんだと笑ってみせる顔は、確かに嬉しそうだった。
「でもお前、それずっと狙ってたわけだろ。手に入って当然の結果じゃないんだ?」
「そりゃ努力が実った、とは思ってるけど。でもずっと狙ってたはちょっと違う。狙い始めたのなんて、お前とセックスするような仲になって随分経ってからだよ」
お前が俺をどんどん受け入れてくから、だんだん卒業後もこのままでいられないかなって欲が出たんだと続けた彼は、大学の4年間はなるべく互いの親抜きで、お前との関係を見つめ直すための時間だと思っていたと言う。
「俺はお前を、恋愛的な意味も含んで気になっているんだろうって、高校時代には自覚してたけど、でもお前と恋人になりたいとまでは思ってなかったし、なれるとも思ってなかったんだ。仲の良い友人、もうちょっと言うなら親友と呼べそうなくらい、お前に近づきたかっただけでさ」
お前が謝ってきた時点で執着は完全に逆転してんだよねと、なんだか申し訳なさそうに苦笑されて、そういえば執着されていたかったって話だったと思い出す。
「俺が親の言いなりにお前と張り合うの諦めたから、俺からの執着を取り戻そうとして友達になろうとした、って感じではないよな?」
だって友達って、執着し合うような関係では無い気がする。少なくとも、彼に向けていたライバル心と、その他の友人たちに向かう友情は全くの別物だった。
執着を取り戻そうとしたのなら、最初から恋人狙いだった方がまだわからなくない。恋人という特別な相手への関心の方がまだ、彼へと向かっていたライバル視に近い気がする。
「執着を取り戻そうとはしてないね。お前が俺への執着を捨てるのは、お前にとっていいことだって判断は出来てたし。ただ、ずっと意識されてたのに、それがパチンと一瞬で切れてなくなるのが、怖かったんだよ。だからお前が謝ってきた後、俺の方から話しかけたり、謝られたんだからもう気にしてないって素振りで、かなり友好的に振る舞ったろ」
「ああ、まぁ、確かにそうだった。お前いいやつなのに、親の刷り込みで嫌な奴って思ってただけなんだなぁって、思った記憶あるわ」
「お前のそういうとこ、ホント、好き。てか、お前がそう思ってくれてるっぽいのわかってたし、ホッとしたし、それで好きになったとこある。同じ大学行って、ちゃんと関係作り直したら、一生モノの友人ってやつが俺にも出来るかも、とか思ったよね」
結果は恋人だけどこれも一生モノになるといいよね、とこちらの反応を窺うように言うので、そうだなと同意を返してやる。そこまで先を含めて、卒業後に同棲という話を持ちかけたわけではないけれど、別に一生彼との恋人関係が続いたって構わない。
あからさまな安堵と共に嬉しそうに笑った相手に、ねぇもうベッド行こうよと誘われれば、もちろん嫌だなんて言うはずがなかった。
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