俺が眠らせてあげるから・その後の二人の初エッチ1

本編から半年後の初挿入で修司×ケイ。本編主人公はケイですが、こちらは修司視点。

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 人間不信と深刻な不眠を抱えてどん底だった生活からすくい上げてくれた男を恋人にして半年、あっという間に半同棲じみた状態となった後は相手の手厚いサポートを受け、仕事にはなんとか復帰している。
 夜間、暗くした寝室で同じベッドに入ればやはり簡単に寝落ちてしまうけれど、日中や明かりをつけた部屋でなら、隣り合って横になっても条件反射で眠くなるような事もなくなった。
 そんなわけで、恋人として触れ合うときにベッドへ連れ込まれることも増えている。
 横向きに向かい合って寝転がる二人の距離は近く、修司の腕に緩く背を抱かれながら、ケイの手はゆるゆると修司の股間へ刺激を与えていた。その顔はひどく楽しげで、簡単に反応を示すようになった修司に、安堵と満足とを覚えているのが見て取れる。
 人間不信と不眠とを抱えるようになった原因が、恋人だった女性の裏切りだったこともあり、ケイと恋人になって共に過ごす時間が大幅に増えたあとも、二人がキス以上の行為へ進むまでにはかなりの時間を要した。その間もケイはずっと辛抱強く修司に寄り添ってくれたし、いつだって修司の抱えるトラウマを気遣ってくれたし、諦めることもしなかった。
 なぜこんなにも想って貰えるのか今ひとつ理解が出来ないものの、その想いは疑いようもなく修司へと向かっていたし、なんともありがたいことだと思う。だからこうして腕の中、興奮やら期待やらで薄っすらと頬を染めながら楽しげに股間を弄ばれていたって、胸の内は安堵と愛しさで満ちている。
「ね、修司さん、お願いがあるんだけど」
 こういう場面でケイが口にする「お願い」は、新しい何かを試したい場合が多い。既に経験済みの行為をねだるなら、お願いなどとは言わずに、はっきりして欲しい行為を口に出すからだ。
「いいよ、言ってみて?」
 彼がしたいと望むことを、出来る限り叶えてやりたい気持ちは大きい。とはいえ、トラウマのせいで思うようには行かないことも多いのだけれど。なんせ、触れたいという望みはすぐに叶えられても、彼の手に反応するようになるまでには結構な時間を要した。
 反応しない体を申し訳なく思う修司を気遣ってか、不快なわけじゃないならそれだけで嬉しいのだと笑うケイの強さに、どれほど救われたかわからない。
「その、……っ」
 緊張の滲んだ声を喉につまらせる様子を見て、どうやらケイ自身が難しいと思っている「お願い」らしいと思う。その予想はきっと外れないだろうけれど、最初から上手く行かなくてもいいのだということも、既に共通の認識になっているはずだ。
「すぐには叶えてあげられないかもしれないけど、ケイくんの望みは知っておきたいし、叶えてあげたい気持ちはちゃんとあるよ?」
「それがわかってるから、ちょっと言いにくいのもあるというか」
「ん? どういうこと?」
「俺のためにって無理して欲しいわけじゃないってのだけ、先に言っときますね。生理的に無理って思うなら、そう言って下さい」
「ああ、なるほど」
 生理的に無理ならという言葉で、だいたいの想像がついてしまった。ついにそれを言われる日が来たと言うべきかもしれない。
「体を繋げるセックスがしたくなった?」
「う、あ、はい。てか、修司さんも、俺といつかはそうなるつもり、ありました?」
「ケイくんがしたいって言い出したら、応じるつもりは最初からあったよ。だからこの先、ケイくんがどこまで俺としたいって思うかはわからなくても、やり方を調べるくらいのことはしてる」
「それ、調べた上で応じられそうと思ったって、思っていいの?」
 お尻の穴を使う事に生理的な嫌悪感は本当にないですかと再度確認されてしまったが、随分と真剣な顔をしていたから、彼にとっての最重要項目はそこなのだなと思う。まぁそれも当然かも知れないけれど、出来ればどこを使うかではなく、自分よりも断然可愛らしい容姿の年下男性に押し倒される葛藤の方を考慮して欲しかった。
「嫌悪感はないし、覚悟もまぁ、出来てるよ」
「え、覚悟?」
 不安そうに曇った顔に、余計なことを言ったかも知れないとは思ったが、でも全くの覚悟なしに応じられるようなものではないこともわかって欲しい。
「そりゃ、いくらケイくんが相手でも、覚悟もなしに抱かれるのは無理だよ」
「えっ?」
「えっ?」
 随分と驚かれてしまったことにこちらも驚いて、しばし二人見つめ合った。どうやら盛大な勘違いをしていたことにはすぐに気づいて、なんとも気恥ずかしい。
「あー……その、抱いてっていうお願いとは思わなくて……」
「いや俺も、抱いてってお願いする気はなかったから、間違いではない、です」
「あれ、やっぱり俺が抱かれる側?」
「じゃなくて。その、俺が、自分で、抱かれようと思ってたと言うか」
「え?」
「修司さんが汚いから嫌だって言わなかったら、これ、俺の中に入れてみてもいいですかって、聞こうとしてたんですよね」
 ここまでのやりとりでだいぶ萎えてしまった股間をゆるりと撫でられて、なるほどと思う。なるほどとは思ったが、それを当てるのはきっとどう頑張っても無理だった。そんな事を提案されるなど、欠片も考えたことがなかった。
「その発想はなかったな。普段の言動からして、てっきり、俺が抱かれる側になるんだと思い込んでた」
 元々ケイがキャストとして働いていた添い寝屋は女性専用の店だし、男の修司が客として対応してもらえたのは、その店のオーナーが学生時代から何かと構ってくれていた先輩だったからという、少々特殊な事情がある。
 そこで培った経験は修司との付き合いの中でも大いに発揮されているようだったし、修司のほうが4つも年上だというのに、あらゆる場面でスマートにリードされてしまって、どれだけ可愛い顔をしていたってそこにいるのは自分と同じ男で、しかも自分よりもずっと恋人を甘やかすことに手慣れているのだと感じることは多かった。相手の理不尽な我儘さえも受け入れ従うことは、恋人を甘やかすのとは全く違うのだと、思い知らされても居る。
 年齢的には修司のほうが上だけれど、男としては相手の方が完全に上な気がしていたし、女のように扱われこそしていなくても、躊躇いもなく可愛いと告げられることもあったから、いずれ体を繋ぐような行為をすることがあったら、間違いなく自分が受け入れる側を求められるのだと疑いもしなかった。
「うっ、それは、すみません。でも、修司さんの安心しきった寝顔とかホント可愛いし、それに俺も男の人と付き合うのは初めてで、甘え方がわからないというか、どうやったら手ぇ出して貰えるのかわからなくて、結局、自分から手ぇ出しちゃうっていうか」
 羞恥からか顔を赤くして、しどろもどろに言い募る様が可愛くて、同時に申し訳なくも思う。
「受け身すぎてゴメンね。俺がケイくん任せにしすぎるせいで、抱いて欲しいなんて、言えなかったよね」
「それはいいんです。修司さんのそういうとこに付け込んでる自覚はあるし、修司さんが俺がしたいって言うこと受け止めてくれようとするの、俺のこと好きって思ってくれてるからだってわかってるし、負担にならないように気をつけなきゃとは思うけど、もっと俺に積極的になって欲しいとは思ってないです。大丈夫。そういうとこも、俺にとっては修司さんの魅力の一つです」
 一転して熱心に語ってくれるそれは、紛れもなく彼の本心なんだろう。本当に、ありがたいことだと思う。彼と出会わせてくれた先輩には、感謝してもしきれない。
「それでその、どうですか? 試してみても、いい?」
 また少し口ごもりながらも期待を込めた目で見つめられ、ダメだなんて言うはずがない。
「それはもちろん構わないんだけど」
「だけど?」
「その、抱いてっていうお願いでも、俺は嬉しいよ?」
「う、あ、その申し出はありがたいんですけど、それは俺の方の覚悟がまだ出来てないと言うか、その、上手く出来なかったときのダメージがかなりデカイんで」
「ああうん、そうだ。確かに」
 最初から上手く繋がれる保証はどこにもないどころか、失敗する可能性のほうが高いんだった。
「気持ちだけじゃどうにもならないことが多くてままならないなぁ」
「抱いてあげたいって思ってくれただけで、めちゃくちゃ嬉しかったんで、今はそれで充分です。でもいつか、抱いて下さい」
「それは、もちろん」
 じゃあもう1回大きくするところから始めますと笑いながら、股間に当てられた手が動き出す。目の前にあるオレンジがかった柔らかな前髪を後ろへ向かって梳くように撫でて、現れた額にそっと口づければ、んふふっと小さな笑いだか吐息だかが漏れ聞こえてきた。

続きました→

 
 
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