部屋に一つしかない椅子に腰掛け、項垂れたままの相手を見つめて待つこと数分。恐る恐るといった様子で頭を上げた相手の顔は随分と不安げだ。
「さっきのだけど、あれは抱かれろって、意味?」
「は?」
「俺のせいで彼女と別れたなら、俺にその彼女の代わりをやれって話かな、と」
不安そうにしているのは、お前のせいで別れたなんて言ったせいで、何かしらの責任を感じてでもいるのかと思っていたのに。どうやら全然違ったらしい。
「あー……」
正直、その発想は全く無かった。
彼女相手に勃たなかった、というのを3回も繰り返してしまった結果、見事にフラレてしまったが、でも完全に勃たなくなったわけじゃない。一人では出来ると言うか、オナニーは普通に女性を対象にしたオカズで抜いていたから、まさか生身の女性の体を前にして萎えるなんて思ってなかった。今日、こんなバカみたいなお願いをしに来たのだって、こいつが相手なら今も勃つのか試したいのが一番の目的で、そもそも勃たない可能性だってある。
「もしかして、まだ童貞だったりする?」
「わりぃかよ」
「てことは、彼女とうまくできなかった?」
ぐぅ、と唸ってしまえば、それはもう肯定も同然だ。
「俺のせいで?」
「……そ、だよ。多分、だけど」
彼女相手に勃たなかったのはこいつが原因とは言い切れないけれど、でもこいつのせいなんだろうとは思っている。
「つまり、俺のせいで童貞捨てれなかったから、俺で童貞捨てさせろよ、みたいな?」
「そんなこと言ってないだろ。つかお前抱きたいとか思ったことねぇよ」
そうだ。そんなことをチラッとでも考えたことがあったなら、大学時代に口に出していたに決まってる。自分が突っ込まれるのは嫌だけど、お前が突っ込まれる側なら試してもいい、という提案をする機会なんていくらでもあったのだから。
「じゃあセックスって俺が抱く側やっていいわけ?」
「最悪、それもありかもしんねぇ、とは思ってる」
「え、嘘。マジで? いいの?」
あんなに嫌がっていたくせにと言いたいのはわかるが、一転して嬉しそうにされるのもなんだか腹が立つ。抱いてくれという意味でセックスしてと言ったわけではないし、積極的に抱かれたい気持ちがあるわけでもないので尚更だ。
「最悪の場合、な」
「最悪の場合、って?」
「お前相手でも勃たなかったら、尻弄られるのも試してもいい」
もしこいつに触られても勃たないなら、尻で気持ちよくなるのを試すのもありかと、チラッとだが考えたのは事実だ。なんせ尻を弄られて気持ちよくなってしまった過去があるのも事実なので。
まぁでも、こいつ相手でも勃たない可能性はあるとは思いつつも、こいつに触られたら勃つんだろうなと思ってもいるので、尻の出番はない予定ではあるのだけれど。
「は? 勃たない?」
「オナニーは出来るからインポってわけじゃないと思うんだけど、彼女相手には反応しなかった」
「え、まさか俺にしか反応しなくなったとか、そういう話!? オカズは? それも俺?」
食い気味に腰を浮かせて来るから、思わず椅子の上で背を反らせてしまった。
「ばか、落ち着けよ。オカズは普通に女だっつーの」
「なんで? 俺との思い出使ったりしないの?」
「しない」
お前はするのかよ、と聞き返すのはやぶ蛇になりそうで止めておく。不満げな顔も無視決定だ。
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