親父のものだと思ってた31

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「わかった。抱く」
 観念してそう宣言し、相手の体から一度離れた。
 ローションと先走りとでドロドロになった手を拭いて、相手が用意していたゴムを装着している間に、相手も起き上がってじっとその様子を見守っている。というよりは、多分、こちらの準備を待っている。
「そう見られてると、なんか気まずいんだけど」
「それはごめん。でも俺もさすがに緊張してて」
「ところで、なんで起き上がってるか聞いても、いい?」
「察してそうな顔してるけど、言わないとダメ?」
「そりゃダメでしょ。てか俺が抱いていいんじゃないの?」
「そうだけど、でもやっぱ自分で挿れたいから寝転がって」
 察してると言われた通り、その言葉を聞いても、そうだと思った、としか思わなかった。思わなかったけれど、それを受け入れるかは別問題だ。
「だよねぇ。で、俺がそれを受け入れて寝転がるって思ってんの?」
「だめ?」
「俺だって主導権欲しいんだけど?」
「そこはほら、最初は自分のペースで受け入れたい、とか、アンアン言わされっぱなしの年上の矜持を考えて欲しい、とか、まぁ、色々あるだろ?」
「あるだろ、とか言われたってさぁ」
「お前がお尻弄ってアンアン出来るまで挿れないって言うから、そこは譲ったよね? だから、今度は俺の番」
 そもそもそこを譲ってくれたと言うか、観念して弄らせてくれたのは、相談もなく勝手に自己開発を進めた後ろめたさとか言ってなかっただろうか。
「覚悟って、お尻弄られる部分だけで、そのまま俺に抱かれる覚悟は出来てなかった?」
「その覚悟もあったつもりなんだけど、てか多分、俺が感じる前にお前が我慢できなくなって突っ込む、って流れだったら受け入れてたかなって思うんだけど、その、あー……本当にアンアンしたら、なんかやっぱ、ちょっと、怖くなって……」
 尻すぼみに細くなった声と、どうしても嫌かと窺うような視線に負けて、大きくため息を吐いたあとで体を倒した。
「もー! ほんと、ズルいな」
「お前のそういうとこ、ほんと、好き」
 そういうとこって、つまりは押しが弱いとこ、ってことだろうか。
 いやでもだって、怖いとか言われたら引くしか無いだろう。少しでも不安を排除して、もうこれ以上は無理だと中断するリスクを避けたいのだから。
 逆に相手の強気は、本気で嫌がったらセックス真っ最中だろうとちゃんと中止してくれる、を本気で信じているからだ。相手のこの強気を最大限好意的に考えれば、途中でもう無理止めてを言わずに済むように、怖い気持ちを晒して回避しようとしてくれているのかも知れないし。
 そんな思考で自分を慰めて、今は相手からの信頼に満足しておくしかない。
「褒めてないよね。で、どうすればいい? こんな感じでいい?」
 こんな会話の間にも萎えることなくしっかり屹立を維持しつづけているペニスは、支えてやらなければ寝転がった状態で天を向くことはないので、なるべく真っ直ぐ上を向くように自らの手で調節した。
「ん。それでいい。じゃ、乗るね」
 言いながら、相手が腰をまたいで乗ってくる。
 前屈みになった体を支えるためにか、両手が腹の上に置かれてしまったので、入っていく所が見える的な興奮はどうやらお預けだ。というか多分、意図的に股間部分を隠しているんだろう。
 けれど、浮かせた腰がもぞりと動いて位置を調整している様子や、何より、緊張を孕んだずいぶんと真剣な顔が見えている。ついでに、自身のペニスで感じ取れる状況もある。
 主導権は渡してしまったが、顔が見れるのは嬉しかった。なんせお尻を弄っている間、ずっと背中を向けられていて、全然顔が見れていなかったので。
「んっ……」
 とうとう先端が窄まりに触れて、相手が小さく息を呑んだ。

続きました→

 
 
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