抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ15

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 一応の安堵と共に相手の顔へと視線を戻せば、さすがに全部解決とまでは思ってないけどと、気まずそうに告げた後で、諦めに似たため息を一つ。
「あのさ、これだけは確認させて欲しいんだけど」
「何だよ」
「トラウマ級の酷い抱かれ方とか、してないよね?」
「は?」
「良かった。それはない、と」
 突然何を言い出しているんだと呆気にとられてしまえば、そんなこちらの態度に、相手は随分とホッとした様子を見せている。どうやら本気で、その可能性を心配していたらしい。
「え、お前、なんで、そんな」
 焦って動揺するのは、相手がそう心配したくなるような何かを自分が見せたのだと、そう考えるのが自然だからだ。そんな誤解を招く、何を見せてしまったんだろう。
「だって俺に言えない何か、ずっと隠してるよね?」
「そ、れは……」
 いきなりの核心をついた指摘に動揺が加速する。
「それに、本当は怖いって、思ってるでしょ?」
「や、別に、怖がってなんか」
「自覚がないならそれでもいいけど、さっき言ったこと、思い出してよ」
 必死の否定を更に否定される事はなかったけれど、自覚がないならという言葉を出されるってことは、相手がその否定を全く信じていないのと同じだ。
「さっきって、どれだよ」
「悲しい誤解がこれ以上発生しないように、俺はあんたが理解してないと思ったら言い回しを変えて、噛み砕いて、あんたがわかるように気持ちを伝えるから、あんたも、俺の前でもうちょっと素直に振る舞えるようになってくれ、ってやつ」
 思い出したかと言われて頷きはしたけれど、それを言われてしまうと、抱かれた経験がないことをあれこれ理由をつけて伝えず隠している事実が、なんとも後ろめたい。
「俺の前では気を許せるって言ったって、あんたが無駄にカッコつけなのも事実だから、まぁ、隠しておきたいような何かがあったって仕方ないかなって思う部分はあるんだけど、こっちがあれこれ譲って、促して、それでも頑なに隠すような何かで、あんたが抱かれるって行為そのものを恐れるような原因になりそうな事、とか考えていくと、意に沿わない乱暴をされたとか、相手が悪くてめちゃくちゃ下手なセックスされたとか、そういうの、疑いたくもなるよね。しかも、優しくしてって散々言われもしたわけだし」
 まぁ違うならいいんだけどと続けながらも、相手はまた一つ、諦めたようなため息を吐いた。
「待って。あの、待って。ゴメン」
 さすがにこれ以上は隠し続けられない。無駄にカッコつけのせいで、と言われてしまえば否定もしづらかったし、隠して置きたいなら仕方がないとまで思っているせいでの、諦めのため息なんだと察してしまったら、申し訳なさといたたまれなさで黙っていられなかった。
 抱かれるのが怖いと強く意識したことはなくても、経験の無さで不安になったり躊躇ったり、抱かれる苦痛や痛みを考えなかったわけではないのも確かだ。だからそれらを相手が見抜いていて、乱暴されたとか、下手な相手に抱かれてトラウマになってないかを、本気で心配したらしいことも、そうでないことを安堵されたことも、多分きっと喜んでいい。見抜かれて恥ずかしいとかではなくて、こちらを気遣う相手の想いを信じようと思った。
「教えてくれる気に、なった?」
 黙って頷けば、相手が今度はあからさまな安堵の息を吐くから、どうやら、こちらがずっと言えずにいる何かに気付いてから先、随分と気を揉ませていたらしい。
「あのさ、」
「うん」
 大丈夫だから続けてと促すような、やさしい相づちに背中を押される。
「俺、誰にも抱かれたこと、ない」
「そ、えっ、ぅ」
 多分、嘘でしょと続けるはずだったのだろう言葉は、相手自身の手で遮られた。口を手の平で覆った相手の顔は悩ましげで、眉を寄せて何かを考えている。
「その、お前が誤解してるの知ってて、でもずっと、言えなくて」
 ゴメンと言えば、眉間のシワが少し緩んで眉尻が下がった。

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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ14

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「というか、好きだって言ったのに、両想いだねって喜んだのに、次があることに喜ばれて泣かれるこっちの落胆とかさぁ、バカって言いたくも……って、やっぱ納得できてない?」
 ぶつぶつと不平を漏らしていた相手も、こちらの浮かない顔に気付いたらしい。
「いや、納得は、してる」
「それ絶対ウソでしょ。で、何が気になってるの」
 正直に言ってよと請われたが、どう説明すればいいのかわからなかった。いや、本当はちゃんとわかってて、ただ一言、抱かれた経験がないと、そう言えばいいだけなんだろう。敏い相手のことだから、その一言でも、きっと色々察してくれる。それに、言えば喜んでくれそうだって気持ちも、さっきよりもずっと強くなっている。
 なのにそれでも、その一言が言えそうにない。
「覚悟して、なんて言ったから、俺に何されるのか警戒してる?」
 こちらが口を開かないので、焦れた相手が先に口を開く。可能性の高い順に、思いつくものを上げていけば、いつかは正解にたどり着くだろうとでも思っているんだろう。無理だけど。
「で、何する気だよ?」
 正解ではないが、何をされるのか聞いて置きたい気持ちはもちろんあって、取り敢えず話に乗ってみた。
 正直に未経験を晒すかは、もう少し考えたかった。だって今の段階で、すっかり自分たちのバランスは崩れていて、ちっとも対等じゃない。
 今の状態が不快なわけじゃないけれど、相手の優しさやら甘やかしやらに触れられるのは喜びでもあるけれど、今後ずっとこんな状態が続くのか、それを自分が受け入れられるのか、わからなかった。というよりは、自信がない。
 関係を変えるつもりで誘ったわけじゃないから、想定と大きく変わってしまった現状に、未だ気持ちが定まらない。
「優しくしてくれって散々言われてんだから、そりゃ、優しくするでしょ。目一杯」
 どろどろに甘やかしてあげるつもりだけど、なんてことを平然と口に出すから、聞かされるこちらが恥ずかしい。
「あ、覚悟して、じゃなくて、期待して、とか言ったほうが良かった?」
「変わんねぇよ。どっちにしろ怖ぇよ」
「そう? 望み通りうんと甘やかしてあげるよ、って言うのの、どの辺が怖いと思ってる?」
「どのへん、って、だって、お前、加減しなそう、っつーか、うんと甘やかすっつー羞恥プレイ的な意地悪とか、してきそう」
 言いながら、これは本当にやられそうだなと思う。
 相手の持つ、強かな腹黒さを知っている。同じ目的を持って動くとき、それはなかなか心強くもあるんだけれど、それが真っ向から自分に向けられるのは普通に怖いとも思う。
 望み通り優しくされて、どろどろに甘やかされて、終わる頃にはすっかり体まで相手の虜になっている、なんて状態にされてしまったら、どうしていいかわからない。しかも相手は多分それを狙っている。ついでに言うなら、そう出来るだけの経験なりテクニックなりを持っても居るんだろう。
 経験がないと知られるのが嫌なのも、多少これに関係していそうだった。あまりに不利が多すぎる。だったら、こちらにもそれなりの経験があると誤解されたまま、居もしない誰かに嫉妬しててくれた方がマシに思えた。
「それは、ちょっと、否定しづらいような」
「ほらみろ」
「で、それが不安の原因?」
 だけじゃない。というか、どちらかというとこれは、話してて新たに認識した不安にも思える。
「まだ何か、ありそうだね」
 困ったなと、本気で困った顔をする相手が、どういうつもりでこちらの不安や気掛かりを、そこまで気にするのかがわからない。
「というか、まさかお前、俺の不安を全部引きずり出して解決するまで、突っ込む気ないとか言う気?」
 思わず視線を相手の股間に向けてしまったけれど、こんな色気も何もないような会話を続けていても、そこまで萎えては居ないらしい。とっくに萎えきっていて、それで仕方なく、先にこちらの不安を解消しておこうと思っているわけではないようだ。

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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ13

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 泣き顔を見られたくない。さっき何度も泣いたし、目が赤いという指摘も受けたけど、泣いてる真っ最中の顔はまだ見られてないし、どう考えたって不細工に歪むだろうそんな顔を見せたくなかった。
「あれ、また泣かせちゃった?」
 片腕を上げて目元を覆えば、そんな声が降ってきたけれど、声音から、そこまで驚いてはいないようだと思う。要するに、なんで泣く必要が、とは思われていない。きっと、次もあるのが嬉しいって思ったことを、見抜いているのだろう。
「それ、嬉し泣きってことで、いい?」
 やっぱりと思いながら、黙って小さく頷けば。
「ほんっと、バカ」
 少し呆れた冷たい声に、ギュッと胸が締め付けられて痛い。
「だからぁ、」
「わかってる。可愛いよ」
 バカって言うなと続くはずだった半泣きの声は、またしても相手によって遮られてしまった。しかも、一転して酷く甘やかな声で。
「可愛い。ホント。バカでも可愛い。バカなとこも、可愛い」
「バカは否定しねぇのかよっ」
「うんまぁ、そこはね。事実だよね」
「ひでぇな」
 そう返す声は少しばかり笑っていた。バカって言われても、そこまで気にしなくていいのかと、安堵してしまったのが大きいと思う。
 涙も止まったのでそっと腕をどけて相手を見上げれば、それでいいとでも言うみたいに優しい顔で頷かれて、また少し恥ずかしい。なんだか「いい子だね」とでも言いたそうで、それを間違いなく嬉しいと思って受け入れているのが、なんとも不思議だった。
 だって同じ男を好きになった自分たちの関係はどちらかと言えばライバルで、相手へ向かう想いを自覚後だって必死にそれを隠して虚勢を張っていた部分はあって、つまりはこれまでは割と対等だった。はずだ。
 なのに、想いを知られて受け入れられて、それどころか実は両想いだった事まで知らされた今は、可愛いと言われようがいい子だと思われようが、反発する気持ちが湧いてこない。それどころか嬉しいだなんて、内心驚かずには居られないのだ。
「好きな子との両想いが判明してて、その子が自ら体を差し出してきてるのに、このまま逃がすわけないでしょ。てわけで、覚悟してよね」
 自身の気持ちに関心が向いていたせいで、相手の言葉への反応が遅れた。
「……えっ?」
 覚悟してという最後の言葉から脳内に届いて、続いてその直前に逃がすわけがないと言われていたことも認識する。相手は柔らかに笑ったままだけれど、言葉の内容があまりに不穏だった。
「覚悟、って、なに、を……」
「ああ、違う違う。あんたが不安になるような話じゃなくて、あんたに、もうお前には抱かれたくない、なんて言われてこれっきりにさせる気はないから、って意味」
 次があるかどうかを選ぶのはこっちじゃなくてそっち、と言われて、気付いてなかったでしょとも続いたけれど、確かに、そんな風に考えたことはない。というか、言われた今も、そう言い切る理由がわからない。
「だって俺は間違いなくいい思いをするけど、抱かれるセックスで感じられたことがないって言ってるあんたが、いい思いを出来るかは俺の腕次第ってことでしょ。もし次が無いとしたら、それは、俺が相当あんたに嫌がられるセックスをした場合だけだよ」
「ああ、なるほど……」
「わかってくれた?」
「あー……うん、まぁ」
 言いたいことはわかった。けれど実の所、本当に間違いなく、相手がいい思いを出来るかの自信がない。自分が選ぶ側だなんてチラリとも考えなかったのはそのせいだ。

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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ12

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 ああ、マジだ。これは本気だ。どうしよう。どうしよう。
 相手のナニが普通サイズで、間違っても大きいとは言えない部類だった事に安堵したのは、初めての体に受け入れるなら、なるべく小さい方がきっと負担も少ないだろうと思っているからだ。負担というか、つまりは、痛み。
 試しに男を抱いてみた経験はあるが、もちろん相手は初めてなんかじゃなかったし、女性の恋人相手に、アナルでのセックスに興味があると言ったこともない。つまるところ、初めてがどんなものなのかというのがさっぱりわからない。でもわからないなりに、痛いんだろうなとか苦しいんだろうなと言う想像は容易で、もちろん不安がないわけじゃなかった。
 当然だけど、相手に抱かれて感じるのなんて、絶対に無理だとしか思えない。なのに相手は、こちらが彼に抱かれながら果てる事を、考えている。
 あまり慣れてなさそうだ、とは言われていたから、抱かれるこちらの反応への期待なんて、ないと思っていたのだけど。経験があって誘ったと思われているというのは、つまり、抱かれることで感じられるとも、思っているってことなのだと、この土壇場で気付いて焦っていた。
 そんなこちらの焦りに、相手も何かを感じたらしい。
「ねぇ、このまま挿れて、本当に大丈夫?」
 開いた足の間に相手の体を受け入れて、既に相手のナニの先端がアナルに触れた状態なのに、最後の最後で、そんな気遣いを見せてくる。
 すぐに頷けず迷ってしまえば、それはもう、大丈夫ではないと言っているのと変わらない。
「楽な体位があるなら、今からでも変えられるよ?」
「楽な、体位、っつーか……」
「うん」
 先を促すように頷く声が優しい。だから不安を少しだけ、口に出して伝えてしまった。
「お前に抱かれて感じるのは、多分、無理」
「……ああ、そういうこと」
 一瞬面食らった顔をされたけれど、すぐに何かに納得した様子を見せる。不機嫌にはなられずホッとしたけれど、でも、安堵してる場合じゃないこともわかっていた。だって全くの未経験だとは言えずに居るのだから、その納得は何か別の理由なのだ。
「そーゆーこと、って?」
「あまり慣れてなさそうとは思ってたけど、つまり、男に抱かれて感じられた事がまだない、って話でしょ?」
「ご、めん」
「いやちょっと待って。なんで謝られるのか、さすがにわかんないんだけど」
「だってお前、俺が、お前に抱かれて果てるのが、楽しみ、って」
「あんたって、……」
 驚きと呆れとが交じるような顔と声とで、それだけ言って言葉を止められてしまうと、なんだかますます不安が増してくる。
「あの、」
「これ以上謝らなくていいから」
 もう一度謝ろうとしたのは、あっさり相手に遮られてしまった。
「というか、あんたって時々、予想外に可愛いこと言ってくるよね」
「か、わいい、か?」
「可愛いでしょ。あんたを抱いた他の男に嫉妬するよ、って言ったのに、男に抱かれて感じられる体じゃないことを謝られる意味、どこにあるわけ?」
 あんたも男ならわかると思うんだけどと言われて、ようやく、相手が何を考えたのかがわかった気がする。というか、他の男に開発される前で良かった、みたいなことを考えてくれたのなら、もしかしなくても、結構本気で好かれているのかも知れない。
 そう思うと、嬉しいのと恥ずかしいのとで、相手の顔がまともに見れなくなった。そっと視線を外しても相手は何も言わなかったけれど、小さく笑う気配が溢れて、照れる姿をまた可愛いとか思ってくれてるんだろうか、なんて考えてしまう自分がますます恥ずかしい。
「まぁ、今日中は無理でも、いつかは見れると思ってるから、楽しみが先延ばしになった、程度の問題だよね」
「先、のばし……」
 ああこれ。次もあるって思っていいんだ。
 そう思ったら、今度は嬉しさで泣きそうになった。

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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ11

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 そのまま押し倒すための力に逆らうことなく従って身を倒した後は、暫く深いキスが続いて、また、口の中でゾワゾワとする快感が生まれだす。やっぱり慣れなくて、それでも耐えられるギリギリまで待って、さっきみたいに手を伸ばした。
「んん゛ぅっっ」
 相手の部屋着を縋るように握って引けば、ひときわ強く、ぢゅっと舌を吸われて呻く。その後は、ようやくキスから開放された。
 離れていく相手の、どこか満足げで柔らかな表情に、ぼんやりと見惚れてしまう。その視線に気づいたらしい相手が、満足げで柔らかなまま笑うから、なんだかドキドキする。
「キス、好き?」
 気持ちよかったか、という意味合いでの問いかけなんだろうそれに、少し迷った後で頷いた。口の中はなんとなくまだ痺れたような感じが残っていたから、口は開かなかったけれど。
「そう。なら良かった」
 相手の手が優しく頭と頬とを撫でて、また顔が寄せられてくる。ゆっくりと瞼を下ろして待てば、今度のキスはただ柔らかに唇が押し付けられただけで、すぐに離れて行ったけれど、離れてしまう直前に、甘い声が可愛いと囁いて行ったから、カッと体の熱が上がっていくのがわかった。
 恥ずかしい。けれど間違いなく、嬉しいとも思っていた。
「ちょっと待ってね。俺も、準備するから」
 言いながら部屋着を脱いでいく相手の股間に、どうしたって視線が引き寄せられる。やはり大きさは気になるし、ちゃんと勃っているかどうかだって、気にせずには居られない。
「そのあからさまな安堵、俺はどう反応したらいいわけ?」
 ハッとして視線を相手の顔へ移せば、少し困ったような顔で、それでも柔らかに笑っている。
「ど、ぅって……」
 戸惑うようにこぼした声は、やはりなんだか舌っ足らずで、口の中に残る違和感をまた意識してしまう羽目になる。
「まぁ、ガッカリされるよりは全然いいんだけどね」
 小さくてガッカリ、なんて反応されたら、あんたの過去の男に嫉妬しそうだなんて笑うから、思い出してしまう。そうだ。相手は自分に経験があると、誤解しているんだった。
「どうしたの?」
「いや……その、小さくは、ない、だろ。多分」
 初めてなんだ、と告げるのをどうしても躊躇ってしまって、結局サイズ話に乗ってしまう。
 初めてだって言ったら、喜んでくれそうな気もするんだけど。うんと優しく抱いてくれるんじゃ、みたいな期待は間違いなくあるんだけど。でもなんか、経験の無さを晒すことに、抵抗がある。
 相手だって抱かれる側は未経験かも知れないと言うか、その可能性が高いのに。好きだから誘ったのはもうバレているのに。好きだから初めてを貰って欲しい、みたいな取られ方をしそうで嫌だった。
 そんな気持ちも間違いなくあるけれど、そこまで知られるのは恥ずかしいような悔しいような気持ちになってしまう。知られたく、ない。
「まぁ卑屈になったり恥ずかしく思うほどにはね。でもまぁ、自慢できるような大きさではないし、あんたには確実に負けてるでしょ」
 相手の視線が落ちる先には、まぁまぁ自慢の息子がそこそこ立派に勃ち上がっていた。
「まぁ、勝った、的な意味での安堵だってなら、ちょっと腹立たしくもあるけどね」
「そ、っんなんじゃっ」
「わかってるって。そういう、勝ったぜ、みたいな顔はしてなかった。ゴメン。これは俺の方の劣等感」
「つまり、負けた、とは思ってる、みたいな」
「多少はね。立派なもの持ってるなぁ、みたいな事はまぁ、思ったよね。ただ、」
「ただ?」
 少し困った様子で柔らかに笑い続けていた顔が、ニヤリと、少し意地の悪い笑みを見せるから、さすがにちょっと身構えてしまう。
「その立派なものが使われもせず、俺に抱かれて果てるのかと思うと、まぁ、楽しみではある、かな」
「う、あ……へ、んたい、かよっ」
 めちゃくちゃ顔が熱い。どうにか声を絞り出せば、否定する気はないかな、なんて言って楽しげに笑われた。

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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ10

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 ただ、色々無駄にしてきたってなら、それはこっちだって同意見だ。
「お前がわかりにくいから、こうなってんだろ」
「だから、それもわかってるってば。半分は自業自得って言ったし、そもそも俺を好きになるとか思わないでしょ」
「なんで?」
「あんたの好みのタイプじゃないはずだから。あと、男が恋愛対象になるわけじゃないでしょ。あいつが特別だったってだけで」
「まぁそれは、……確かに?」
 ほらみろと言いたげな胡乱な目に見つめられて、へろりと笑ってごまかしてしまう。
「というか、そんな、特に好みでもない対象外な俺を好きになった理由とか、聞いてもいいわけ?」
「あー……それは、ほら、あいつへの気持ちを知られてるから気楽だったというか、お前の前では隠さなくていいから気を張ってなくていいとか、つまりはまぁ、お前と二人きりの時って、なんかすごく安心できる」
「あぁ……あんた無駄にカッコつけだもんね」
 納得という顔はしているものの、その口から吐き出されてきた言葉は容赦がない。
「うっせぇ。周りにカッコいい俺を見せたいと思ってて何が悪い」
「別に悪くはないけどさ。つまり恋人相手にも、常にカッコいいとこ見せたい派なんだなって」
「なんだよ。男なんて割と皆、そういうもんじゃねぇの?」
「個人によるし程度によるって言ってんの。俺はそこまで、恋人にカッコいい俺を見せたい、とは思ってないし。あとまぁ、嬉しいよ」
「は? 嬉しい?」
「だってそれ、あんたが気を許せる一番の相手が俺、って意味じゃないの?」
「そうは言ってないだろ!」
「じゃあ、俺以上に気を許せる同性の友人って誰? だいたい、あんたの一番の親友って、あいつじゃなかった?」
 とっさに、お前が知らないやつだ、なんてことは言えなかった。ウッと言葉を詰まらせれば、勝ち誇ったような顔をされて嫌になる。
「ほんっと、意地が悪い」
「そんなこと無いでしょ。これさっきも言ったけど」
「じゃあ、俺がまた何か見落としてるってのかよ」
「まぁ、そうなるかな」
「まじかよっ。で、今度は何だって?」
「俺に一番気を許してる。って言って欲しいだけ、って気付いてないよね?」
「そ、れは、……だってお前、気付いてんだろ、もう。というか、あれじゃ俺にはわかんねぇよ、そんな気持ち」
「気付いてても言って欲しい気持ちは別。で、わかれよとは思ってないから、いちいち説明することにしたの」
 てわけで、はい、言って。なんて促されて、またしても言葉を詰まらせた。というか、こんな形で強引に言わされた言葉でもいいって言うんだろうか。
「そんな言わされただけの言葉に、意味、あんのかよ」
「あるね。大アリだね」
 悲しい誤解がこれ以上発生しないための訓練だよ、などと言われたってわからない。そして全くわかってないって事は、間違いなく伝わっている。
「俺は、あんたが理解しない言い回しや態度を見せたなと思ったら噛み砕いて説明する。だからあんたには、俺の前でもっと素直に振る舞えるようになって欲しいわけ。で、手始めに、恥ずかしいだの悔しいだのカッコ悪いだので言うの躊躇う言葉を、口に出すことにまず慣れて貰いたいわけ」
 だから言ってよと、どこか甘えを含んだ柔らかな声に促されて、その声はなんか卑怯だと思いながらも、渋々口を開いた。
「俺が、一番気を許せるのは、お前だよ」
「はは、うん。嬉しい。ありがとう」
 確かに嬉しげな笑顔が近づいてきて、唇が触れる。何度かちゅっちゅと、角度を変えて唇を触れ合わせながら、ゆっくりと体に伸し掛かるような力と圧とが増えていく。

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