抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ13

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 泣き顔を見られたくない。さっき何度も泣いたし、目が赤いという指摘も受けたけど、泣いてる真っ最中の顔はまだ見られてないし、どう考えたって不細工に歪むだろうそんな顔を見せたくなかった。
「あれ、また泣かせちゃった?」
 片腕を上げて目元を覆えば、そんな声が降ってきたけれど、声音から、そこまで驚いてはいないようだと思う。要するに、なんで泣く必要が、とは思われていない。きっと、次もあるのが嬉しいって思ったことを、見抜いているのだろう。
「それ、嬉し泣きってことで、いい?」
 やっぱりと思いながら、黙って小さく頷けば。
「ほんっと、バカ」
 少し呆れた冷たい声に、ギュッと胸が締め付けられて痛い。
「だからぁ、」
「わかってる。可愛いよ」
 バカって言うなと続くはずだった半泣きの声は、またしても相手によって遮られてしまった。しかも、一転して酷く甘やかな声で。
「可愛い。ホント。バカでも可愛い。バカなとこも、可愛い」
「バカは否定しねぇのかよっ」
「うんまぁ、そこはね。事実だよね」
「ひでぇな」
 そう返す声は少しばかり笑っていた。バカって言われても、そこまで気にしなくていいのかと、安堵してしまったのが大きいと思う。
 涙も止まったのでそっと腕をどけて相手を見上げれば、それでいいとでも言うみたいに優しい顔で頷かれて、また少し恥ずかしい。なんだか「いい子だね」とでも言いたそうで、それを間違いなく嬉しいと思って受け入れているのが、なんとも不思議だった。
 だって同じ男を好きになった自分たちの関係はどちらかと言えばライバルで、相手へ向かう想いを自覚後だって必死にそれを隠して虚勢を張っていた部分はあって、つまりはこれまでは割と対等だった。はずだ。
 なのに、想いを知られて受け入れられて、それどころか実は両想いだった事まで知らされた今は、可愛いと言われようがいい子だと思われようが、反発する気持ちが湧いてこない。それどころか嬉しいだなんて、内心驚かずには居られないのだ。
「好きな子との両想いが判明してて、その子が自ら体を差し出してきてるのに、このまま逃がすわけないでしょ。てわけで、覚悟してよね」
 自身の気持ちに関心が向いていたせいで、相手の言葉への反応が遅れた。
「……えっ?」
 覚悟してという最後の言葉から脳内に届いて、続いてその直前に逃がすわけがないと言われていたことも認識する。相手は柔らかに笑ったままだけれど、言葉の内容があまりに不穏だった。
「覚悟、って、なに、を……」
「ああ、違う違う。あんたが不安になるような話じゃなくて、あんたに、もうお前には抱かれたくない、なんて言われてこれっきりにさせる気はないから、って意味」
 次があるかどうかを選ぶのはこっちじゃなくてそっち、と言われて、気付いてなかったでしょとも続いたけれど、確かに、そんな風に考えたことはない。というか、言われた今も、そう言い切る理由がわからない。
「だって俺は間違いなくいい思いをするけど、抱かれるセックスで感じられたことがないって言ってるあんたが、いい思いを出来るかは俺の腕次第ってことでしょ。もし次が無いとしたら、それは、俺が相当あんたに嫌がられるセックスをした場合だけだよ」
「ああ、なるほど……」
「わかってくれた?」
「あー……うん、まぁ」
 言いたいことはわかった。けれど実の所、本当に間違いなく、相手がいい思いを出来るかの自信がない。自分が選ぶ側だなんてチラリとも考えなかったのはそのせいだ。

続きました→

 
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