男子校だったのもあって、態度が悪かろうが冷たかろうが顔が良けりゃいいと群がるような女はおらず、常に一人だったし感情を削ぎ落としたような無表情が多かったし、あれで高校生活楽しかったなどと言われる方が驚きだ。自分だって、運悪くクラス委員になどなっていなければ、極力関わらずにいただろう。
なのに、同じ大学の同じ学部学科に入って一緒に行動することが増えたら、高校時代が嘘みたいに随分と人当たりが良くなって、しかもこのお綺麗な顔で気安く笑顔を振りまくものだから、あっという間に友人が増えて拍子抜けしたのを覚えている。そもそも本当に同じ学部学科に進学を決めてくると思っていなかったせいで、相手も合格したと知ったときには、入学前から大変なお荷物を抱え込んでしまったと暗澹たる気持ちになっていたのに。
残念ながら進学先も男子学生の割合がかなり高い学部だったので、出来たのは男の友人ばかりだけれど。もし半分でも女子がいる学部だったら、今、こんな関係になっては居なかっただろうか。などと思考がおかしな方向へ行きかけた時、相手の次の言葉が耳に飛び込んできて意識を戻した。危ない危ない。
「あと提出物出さなすぎて単位不足で、という可能性もあった」
「あー、それは納得だわ。てか3年の時はどうしてたんだよ」
1年時はまさにそれで留年しかけたらしいのは知っている。2年時は自分がしつこく声掛けして出させていた。
そのせいで面倒見が良いと思われているらしいが、それは担任が部活の顧問だったのもかなり関係している。運悪くクラス委員になってしまったのもそれで、つまり担任からすると自分は、頼みごとのしやすい大変使いやすい駒だったというだけだ。留年しかけた生徒の提出物の管理など、本来ならクラス委員の仕事ではなかったと思う。
こんな妙な懐かれ方をするとわかっていたら、もっと手を抜いていたかも知れないが後の祭りだ。
「3年の時は先生たちが結構煩かったし、一緒の大学行こって思ってからは、卒業できないの困るから俺もちゃんと頑張って出したよ」
「あっそ」
「2年の時の経験があったからできたと思ってるよ?」
「いやそういうのいいから」
「今だって、レポート提出とか忘れないように何回も確認してくれるの、本当に助かってるんだからね?」
「だってお前が俺にひっついてんのって、完全にそれ目的だもんな」
進路希望調査を提出しようと歩いていた廊下で、目の前を歩いてきたこいつに通りすがりに手の中のその紙を奪われたのだ。ジロジロと人の進学希望先を眺めたと思ったら、唐突に、じゃあ俺もここ行こうなどと言い出すからわけが分からなくて随分と混乱した。
だってあの頃はちっとも仲良くなかったし、こいつは無愛想な孤高のイケメンだったし、言い方があまりに一方的だったし、こいつのイカレタ頭の良さなんて知らなかったから留年しかけた奴がじゃあ行こうで行けるわけないだろと思ったし。しかも、なんでと聞いたら、シレッと面倒見てもらえそうだからと返されて、はっきりきっぱり、見るわけ無いだろと返したはずなのに。
まぁ一方的に面倒を見ているわけではないし、今はもう提出物がなかなか出せない理由も知っているし、自覚はなさそうだが、親しくなるにつれて世話焼き属性を発揮してるのはむしろ相手の方なのだけれど。
「まぁ、同じとこ行ったら大学も卒業できそうとは思ったけど、別にそれだけが目的ってわけじゃなかったよ」
「他の目的って?」
「それはさ、同じとこ行ったら、友だちになれるかな、って思って」
「え、誰と? てか俺と?」
「そう」
「ともだち、ねぇ……」
「だからこうやって誕生日お祝い出来るのも、凄く嬉しくってさ」
友だちの誕生日祝うのなんて小学生以来だよなんてサラリと言ってくるので、ぎゅっと拳を握りしめる。冷蔵庫の前、運んできた酒をちょうど相手に全て託したところだったので、そうしていないと相手の頭に手を伸ばして、グシャグシャとその柔らかそうな髪をかき混ぜてしまいそうだった。
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■
HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁