イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった9

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「あ、でも、ローションは使っていい?」
 何かを思いついたらしく、しょんぼりしていた顔を輝かせたから、警戒しつつ何に使うんだと聞けばペニスに垂らすと返された。過去の経験上、ローションが出てきたときは尻穴を弄られているけれど、ついでのようにローションにまみれた手でペニスを扱かれた事を思い出す。ヌルヌルと滑る感触に、たまらなく気持ちが良い思いをした事もだ。
「なし崩しで尻穴弄るってんじゃなきゃ、いいけど」
「絶対なしって言われてるようなことはしないよ。嫌われたくはないし」
「本当に?」
「え、やだな。そこ疑われてるの?」
 さきほど最後にと言っていたし、卒業後に続ける気がないのも認めたし、気まずくなろうと構わないから強引にでも抱いてしまおう。という気持ちが本当にないのかなんてわからない。途中でも帰ると宣言はしたが、快楽のただ中で実行できるかどうかだって、正直そこまで自信がなかった。
「だってなんだかんだで酔った時に尻穴に指突っ込まれてるし」
「酔ってる時に卑怯、てのはまぁ認めないでもないけど。でも指ならいいってちゃんと許可取ってるし、許可された通りに指しか挿れてないんだけど」
 俺の自制心に感謝するとこだよ、という言い草的に、今までだってこいつさえその気なら抱いてしまう機会はあったってことなんだろう。
「結構酔っ払ってても、抱いていいよとは言ってくれたこと無いから、まぁ、俺に抱かれるのは本気で嫌なんだろうな、ってのもわかってるよ」
 嫌われたくないから、相手が受け入れてくれることで一緒に気持ちよくなれればいい。らしい。
「けどもう卒業するだろ。もう俺に嫌われたっていいや、とか」
「思うわけ無いでしょ。卒業したって、たまには飲みに行ったりの友人関係、続けられるなら続けたいと思ってるもん。そこまで遠くないんだし、お正月とかお盆とか、実家戻ることもあるんじゃないの。てかせっかく友だちになれたのに、卒業したら友だち止めるとか言う気なの?」
「いや、そんなことは……」
 ただなんとなく、エロいことをする関係を続ける気がないと認めた時点で、友人関係も切れるのだろうと思っていたというか、まさかエロいことをしない友人関係だけが続くだなんて考えもしなかった。
「それとも、ヤダヤダ言いながらも無理やり俺に抱かれる、みたいなシチュエーション希望とか言う?」
「は?」
「抱いていいよとは言えないけど、無理やり抱かれるのは構わないと思ってる?」
「アホかっ! んなわけあるかよ」
「だよね。知ってる。今のは単なる俺の悪あがき」
 そう言いながらも、さらに、無理やりされても嫌いになったりしないよって言ってくれたら抱いちゃうんだけど、などと言い募るあたり、卒業前に一度でいいから抱きたいという気持ちはかなり強いようだ。
「ぜってー言わない」
 多少強引に、なし崩し的に抱かれてしまったって、きっとこの体はそれなりに感じてしまうだろうし、気持ちよくしてくれた相手を本気で嫌えるかというと難しいんじゃないかという気はするけれど。ついでに言うなら、気持ちよさげに自分を抱くこの男の色気たっぷりな顔を見てしまったら、なおさら嫌うのは難しい気がする。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった8

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 卒研発表を終えた夜、誘われるまま相手の家に寄った。
「していい?」
「ん。俺もそのつもりで来てる。けど、酔ってるからって尻穴弄るのはナシな」
 開放感から多少飲みすぎている自覚はあったし、酔った状態でするのは危ないと、過去の経験から学んでいる。酔った勢いで相手のペニスを突っ込まれるまでには至ってないが、酔った勢いで指を突っ込まれた事が何回かあった。
 その経験から酔い過ぎないラインというのがある程度は把握できているし、その基準から言えば今日はそこまで酔っていないので、釘を差さなくたって尻穴に手を出されはしないかもだけれど。なんて思った矢先に。
「それだけど、最後に一回、抱かせてくれない?」
「は?」
「就職先そこそこ離れてるし、卒業してまでこういうの続けようとは思ってないでしょ?」
「そりゃそうだけど」
 こいつは実家から通えることを条件に入れて就活をしていたので、卒業後は実家に戻ることが決まっている。対するこちらは実家へは戻らず、暫くは現在のアパートから職場へ通う予定だった。実家とこことでめちゃくちゃ距離があるわけではないが、大学進学にあたってアパート暮らしを選択する程度の距離はある。
「酔い足りないならお酒追加する? ツマミも作るけど」
「いやいやいやいや。何許可出る前提で話進めてんだ。いいよ、とか言うわけ無いだろ」
「どうしてもダメ? お尻、本当はそこまで抵抗なくない?」
 お尻も結構気持ちいいって思ってるでしょ、という指摘は間違っていないが、それとこれとは話が別だ。最初は酔った勢いだったキスやフェラはその後行為の一部に取り込まれたけれど、酔った勢いで指を突っ込まれて喘いだことがあったって、シラフの時にそれを許したことはない。
「お前に抱かれて気持ちいい、とか絶対経験したくない」
「気持ちよくなれそう、とは思ってるんだ?」
「俺より俺の気持ちぃとこ把握してんだから、なんだかんだ気持ちよくされんだろ、とは思ってる。から、絶対イヤだ」
「なんで?」
「なんで、って男に抱かれて気持ちいい経験なんかしたら、人生変わっちまうだろ」
「人生変わる、って大げさすぎじゃない? もしくは今更すぎ。さんざん男の俺に気持ちよくされてるのに?」
「手や口でされて気持ちよくなるのと、突っ込まれて気持ちよくなるのじゃ、全然違うっつーの」
 卒業したら今度こそ彼女を作りたいと思っているのだ。職場もそう女性率が高そうには思えないが、職場恋愛を望んでいるわけでなし、問題は男女比ではないこともわかっている。大学時代に彼女を作れなかった一番の原因は、どう考えたって目の前のこのイケメンだった。
 そこそこ親しくなった女子たちの本命はことごとくこいつだったし、それがわかっているこいつは、それなりに愛想は振りまきつつもわかりやすくこちらを優先して構い倒すものだから、無駄に女子の嫉妬を買う羽目にもなって散々だった。
 就職してこいつと離れた暁には、自分だけを見てくれる女性と出会えるはずで、それを前に余計な経験を重ねたくはない。
 男が好きだとか男に抱かれてみたい欲求が自発的にわかず、女性と付き合いたい意思があるというのに、男に抱かれて感じられる体を持っているなど自覚したくなかった。
「とにかく、抱かれるのは絶対なしで。てか尻穴弄るのなしで」
 そっち触ったら途中でも帰ると宣言すれば、諦めのため息とともにわかったと返る。しょんぼりとした顔に少しだけ胸が痛んだけれど、さすがにこれは譲れない。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった7

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 ねだらなくても口でしてくれることが増えて、イク直前にはだいたい口の中を舐め回されている、というのに慣れきった頃。相変わらずイケメン台無しなフェラ顔を見つめながら、このまま出したらダメかと聞いた。
 口でしてくれるのは興奮と快感を煽るためであって、その口の中で果てたことはない。だから単純な好奇心からの欲求だった。
 もちろん、先走り程度なら口にできても、精液までは無理と言われたら諦めるつもりでいた。なんせ、この行為に対しては基本全て受け身で、相手のペニスにすらまともに触れたことがないのだ。自分じゃ一口だって舐めれないし、口の中で射精されるなんて絶対無理なのに、相手の口で果てたいと言うのは我儘な望みだという自覚がある。
「や、無理にとは言わないけど」
 驚いた様子で目を見張ったあと、口を離して考え込んでしまった相手に、多少慌てて言葉を足した。
「いや、無理、とかじゃなくてさ……」
「無理じゃないって? 口の中に出されても平気そうってこと?」
「うん。それは問題ない」
 マジか。じゃあ何が問題だって言うんだと、相手の次の言葉を待った。
「そっち先にイカせて俺だけ置いてけぼりなのはちょっと」
「あー……」
 言われれば確かに。相手が渋る理由としては納得しかない。
「イッたあと、今度は俺がイケるように手伝ってくれる気とかある?」
「同じように口で、ってのは絶対ムリ」
「だよね」
「手、くらいなら……?」
 とはいえ相手の勃起ペニスを握ったこともないのに、イカせてやれる自信はなかった。
「俺が気持ちよくなれるように握って扱いて、ちゃんとイケるまで頑張ってくれるならいいけど、今までのこと考えたらそういうの望めそうにないからなぁ」
 自信のなさを見透かされている。
「しかもイッた後じゃなおさらそんな事したくないだろうし。あ、じゃあ、俺をイカせてくれたら口の中でイッていいよ、ってのは?」
「は?」
「俺ならイッた後の賢者タイムでも、手ぇ抜いたりせずにフェラしてあげれると思うし」
「それは、いや、でも……」
 賢者タイムでもこいつなら手を抜かずにこちらをイカせてくれるだろう、という部分を疑いはしないが。
「先に俺がイクのは不満?」
「じゃなくて、俺がお前イカせられなかったらどーなんだよ、それ」
「そしたらいつも通り一緒に握って一緒に気持ちよくなればいいんじゃないの?」
 とすると、結局相手の口で果ててみたい欲求は消化されず、今までは避けてきた相手のペニスへの奉仕だけ課される結果になる可能性が高い。それはちょっと、チャレンジするには旨味が少なすぎる。
「やっぱ手くらいなら使っていいから好きにオナニーしていいぞ、くらいの気持ち?」
「うっ……」
「気持ちよくして貰えるから拒まないだけで、俺を気持ちよくしてやろうって気がないのは知ってるから別にいいんだけどさ。俺をイカせるの無理そうだからやりたくないってなら、お尻、弄らせてよ」
「え? なんて?」
 いきなり話がえらいとこにすっ飛んで、聞こえてはいたが思わず聞き返してしまった。
「お尻……の穴。肛門。アナル」
「や、言い換えなくていい。てか、え、なんで?」
「フェラしてる間お尻弄っていいなら、そのまま口の中でイカせてあげても良いかなって思って」
「え、ちょ、つまりそれって、俺がイッた後、俺の尻穴に突っ込んで気持ちよくなればいいか、みたいなこと考えてんの?」
「当たり。借りるなら手より穴がいいなぁって」
「ぜってーやだ! てか入んねぇよ。無理」
「さすがにすぐには無理でも、慣らして拡げれば入るでしょ。アナルセックスって単語だってあるし」
「お前とセックスまでする気がねぇ、って言ってんだ!」
「えー、でも、今やってるのだって、そう大差なくない?」
「大差あるわ。てか口の中でイッてみたいとか言った俺が悪かった。撤回するから今まで通りで」
「口の中で出されるのは構わないよ、って言ったのに?」
「交換条件が俺には無理すぎた。てわけで諦める」
「え〜」
「なんか気が削がれたし、今日はもう止めとくか?」
 放置されたペニスはそこそこ萎えていたので、このまま終わりでも良かったのだけれど。止めるわけ無いと言いながら伸ばされた手にペニスをグニグニと揉まれてしまえば、あっという間に再度体の熱が上がっていく。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった6

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 口の中は熱く滑っていて、器用な舌先に先端やら括れやらを擽られるのはたまらなく気持ちがいい。しかもこちらの興奮を確かめたいのかチラチラと視線をよこしてくるから、それなりに状況が見えてもいた。
 舌を出して見せつけるようにペロペロと舐められている時はまだしも、しっかりと口の中に迎え入れ、更には頬を窄めてそれに吸い付いたりもしているので、歪んだ顔に頭の片隅ではイケメン台無しだなんて酷いことを考えたりもする。けれど、顔を歪ませながらもどこか楽しげにペニスに吸い付いている相手の姿に、間違いなく興奮が増してもいた。
 酔っていたってそんな発想になるかと後から結構ドン引いたし、今日なんて一滴もアルコールは摂取していない。して欲しいとねだった自分を完全に棚上げして、シラフで楽しげに男のペニスを咥えられるってどういうことだよと思ってしまう気持ちがある。
 やっぱりこいつはゲイなんだろうか。いや、女性とのセックス経験はあるみたいだから、この場合はバイってやつか。
 でも積極的に女性とどうこうって話は聞いたことがないし、彼女を作っていないのも知っている。いくら男性率がやたら高い学部だろうと、これだけのイケメンならそれなりに出会いやら誘いやらもあるらしいのに。
 だとすると、女も抱けるがどちらかというと男のほうが好き。そう考えてしまうのは当然の流れだと思う。もしかしたら自分以外にも、彼に気持ちよくしてもらっている男友達がいるかも知れない。そう思うと、少しばかり胸の中がモヤッとした。
 自分相手に手を出してくる男友達なんてこいつくらいだし、自分から別の男友達を誘おうなんて考えたこともないが、逆はどうかわからない。結構な軽さで手を出された気がするし、同じように他の男友達にだって手を出しているかも知れない。だったらどうなんだ、という話だけれど。
 だってなし崩し的にこんな事を続けているし、さっきは自分の意志でキスまで受け入れてしまったが、結局の所これはただの性欲処理でしかない。好きだと言われたことはないし、こっちだって、恋愛感情があって相手に身を任せているわけでもない。人にして貰うと自分でするより興奮するし気持ちがいい。ただそれだけだった。
 カチャカチャと金属的な音が聞こえてきて、その音の出処を探して視線を移動させる。どうやら相手がズボンのジッパーを下ろしたようだ。つまりは勃起ペニスを舐めしゃぶりながら興奮したって事らしいと気づいて、相手はきっとゲイよりのバイ、という想定が自分の中でほぼ確実になった。
 顔が良かろうとどう頑張っても女と間違えるのは無理な相手に股間をしゃぶられ興奮している自分だって、人の性志向をどうこう言える立場ではなさそうだけれど、やっぱりそれは棚上げしておく。なんせ、今でも機会さえあれば女の子と付き合いたいと思っているし、女の子に触れてみたいし抱いてみたいし、この男とこんな関係になるまでは自分をゲイかもなどと思ったことがない。それにこんな関係と言ったって、相手を抱きたいだとかましてや抱かれたいだとか思ったことはないし、触られたら反応するの仕方ないだろ的な気持ちが強いし、口でされるのだってきっと男も女もそう変わらないはずだ。
 脳内でそんな言い訳を延々と繰り返す中、熱く滑った口内からペニスがこぼれ落ち、濡れたペニスが部屋の空気に包まれる冷たさにハッとする。慌てて股間に視線を定めれば、熱のこもった目で相手がジッとこちらを見つめていた。
「な、に……」
「また何か考え事?」
「や、なんでも、ない」
 まさか、ペニス咥えて興奮できるのは男が好きってことでいいか、なんて聞けるわけがない。男に咥えられて気持ちよくなっているお前こそどうなんだという反撃が怖いというのもある。しかも今回は自分から相手にねだってしまったという負い目もあった。
「俺、そろそろイキたくなってんだけど、一緒に扱いていい?」
「あ、ああ」
「大丈夫? 口、シラフだとやっぱあんまり良くなかった?」
「いや、口ん中、温かいしヌルヌルだし、やっぱめちゃくちゃ気持ちぃ」
「ならいいけど。俺だけ興奮してんだったらさすがに気まずいなって」
「興奮してなかったらこんな硬くなってないだろ」
「まぁそれもそうか」
 身を起こした相手が半端に下げていたズボンと下着を脱ぎ捨てて、ペニス同士が触れ合う近さに身を寄せてくる。後はもう、既に何度も重ねた行為で気持ちよく果てるだけだ。
 そう思った矢先。パクっと唇に吸い付かれて、さすがに大きく肩が跳ねた。
「んぅっ、んっ、ぁっ、なんでっ」
「キスしながらのがもっと気持ちよくなれるでしょ」
「けどっ」
「先走りちょっと舐めたくらいじゃ、そんな違わないと思うんだけど」
 さっきのキスと比較してみてと言われながら、容赦なく舌が口内に差し込まれてくる。味がどうこうではなく、精神的な抵抗感だ。なんて抗議する隙はない。
「ん、……んんっ……ふっ、」
 口の中の弱いところを舌先で擽られれば感じてしまうし、同時にペニスを扱かれれば気持ちよさが何倍にも跳ね上がる。しかも今度は、イカせるための動きをされていた。こんなの、耐えられるわけがない。
「んんんんっっ」
 あっという間に追い詰められてびゅくびゅくと精を放つ中、相手の体と口内の舌が小さく震えたので、どうやら今回は相手も一緒にイケたらしいと安堵した。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった5

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「ねぇ、お礼、していい?」
「それ、ご褒美ちょうだい、としか聞こえねぇんだけど」
「させてくれんならどっちでもいいよ」
 ご褒美ちょうだいって言う? と聞かれて、要らないと返す。やることは変わらないので、ご褒美を与えるよりもお礼を受け取る方がまだマシだ。
 強く拒否を示さなければ許可したも同然で、了承と受け取った相手が立ち上がる。短な距離だが手を引かれて、先程まで腰掛けていたベッドに逆戻りし、相手のなすがままズボンも下着も手早く脱がされてしまう。股間はまったく萌していなかったけれど、大きな手に包まれて慣れ親しんだ仕草で撫で擦られれば、すぐに頭を擡げていく。
「ふふっ」
 反応の速さに、満足気に笑った相手の口元に指を伸ばした。唇を指先で軽くなぞってやれば、相手は何かを察したらしい。
「舐めて欲しいの?」
「そりゃ、めちゃくちゃ気持ちよかった、し。礼だってなら……いやまぁ、今日は酔ってるわけじゃないから、無理にとは言わないけど」
 先日の誕生日に、双方ともに酔っ払うという経験をした結果、人の口でして貰う気持ちよさを知ってしまった。シラフだったら相手は舐めれそうなどと言い出さなかったと思うし、自分だってそんなことはするなとお断りしていたと思う。
「無理じゃないけど、先にキスしていい?」
「えっ?」
「この前、舐めた後でキスしたのめちゃくちゃ嫌そうにしてたから。今日は先にキスさせてよ」
「え、キスもすんの?」
「だめなの? キスも気持ちよさそうにしてたと思ったんだけど」
 実のところ、酔っ払った勢いでキスもしていた。自分にとってはファーストキスで、もちろん、この男相手にファーストキスを済ませる気など一切なかったのに。酔ってふわふわと思考を散らしていたせいで、普段なら嫌だとかダメだとか素早く一蹴しているところを、拒絶しそこねてしまったのだ。
 嫌そうにしていたのは、ファーストキスを奪われたことに気づいたせいもある。もちろん、あれを舐めた後の口、というのに抵抗感があったのも事実だけれど。
「あー……まぁ、確かに」
 気持ちが良かったことを否定する気はないし、既にファーストキスを失ってしまった以上、拒否する理由も特に無い。今までは興奮した相手が口を寄せてくるのをきっぱり拒否してツレナイと気落ちさせてきたが、そのせいもあってか、初めてのキスで気持ちよく喘いでしまったこちらに、随分と嬉しそうにしていたのを覚えている。あの顔がまた見れるなら、まぁいいか、と気持ちが揺れた。愛想のいいイケメンはズルい。
「いい?」
「ぅん」
 小さく頷けば、それだけでふわっと嬉しげに笑ってみせるから、本当にズルい。しかもその顔がどんどんと近づいてくるのだから、直視し続けるのがツラくなって早々に目を閉じてしまった。
 唇に、ふわりと柔らかな感触が押し当てられて、軽く吸われたり喰まれたりを何度か繰り返すうちに、体の力が抜けていく。シラフでのキスに多少なりとも緊張していたらしいと、力が抜けてから気づいた。
「んっ……んっ、ふっ……」
 意図的に唇を解いて隙間を作ってやれば、見逃すことなくその隙間に舌が伸びてくる。さっそく舌先に口蓋を擽られて、ゾクゾクとした何かが背を這った。
「ん、ぁ……おまっ、……ぁっ」
 口の中を探られながらペニスを扱かれると、気持ちよさが何倍にも跳ね上がる。
「きもちよさそ」
「そりゃ、てか、やり過ぎたら先イッちまうぞ」
「それは一応気をつけてる」
「あんま焦らされんのもヤなんだけど」
「わかってるよ」
 キスできるの嬉しくてついいっぱいしちゃったと言いながら、最後にチュッとわざとらしく音を立てて唇を吸った後、ようやく相手の頭が股間へ向かって下がっていった。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった4

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 ちょっと休憩、と言って立ち上がった相手は玄関へ向かう。少しして、玄関扉が開閉する音が聞こえてきてから、手持ち無沙汰に読んでいた本を閉じて放置された書きかけレポートを手に取った。
 軽く目を通しながら、これなら次の休憩前には書き上がるなと思う。明日の朝イチ講義の提出にはしっかり間に合うどころか、まだ日付を超えてもいないので、睡眠時間だって充分に取れる。泊まりのつもりで来ていたが、一旦帰宅するのだってありかもしれない。
 相変わらず机に向かっていられる時間は1時間程度だけれど、初めて見張ってて欲しいと頼まれた頃に比べたら徐々に休憩を挟むまでの時間は長くなっているし、休憩を終えて戻ってくる時間も短くなっている。
「ただいま」
「ん、おかえり」
 5分と経たずに戻ってきた相手は、真っ直ぐに机に向かうとレポートの続きに取り掛かる。真剣な横顔をジッと見つめてしまっても、集中しているのか気づかれる様子はない。
 彼がようやく二桁年齢になった頃、母親に治療の難しい病気が見つかったそうで、家族全員その対応に追われる数年を過ごした結果、彼自身の学習習慣がほとんど身につかないままここまで来てしまった。というのがどうやら提出物が出せない原因らしい。
 すこぶる頭が良かったせいで、日々の授業を受けるだけで問題なくテストで高得点を得られていたのと中学は家庭事情を考慮されていたのか、高校1年時に未提出課題の多さで留年しかけるまで問題が発覚しなかったというのだから恐ろしい。
 自主的な学習時間なしで大学受験を乗り切るなんてさすがに無理があるだろうと思ったら、高校3年時には塾にも行ったし少しは家でも勉強したとは言ってはいたけれど。その少しは家で、というのも、どうやら家族が協力していたようで、つまりは今時分がしているように、机に向かう彼を家族の誰かしらが見守っていた。
 その頃には母親の容態がかなり落ち着いていたというから、今度は家族全員で彼の大学受験を支えたという話かもしれない。
 彼が実家を離れて大学生活を送れているのも母親の回復があってこそだし、相当大変だったはずなのに、彼が母親の闘病生活含む思い出を語る時はいつも穏やかで幸せそうな顔をしているので、家族の全力サポートが報われたことは本当に良かったのだと思う。
 学習習慣を身につけられなかっただとか、母親が倒れてからは友人と遊んだ記憶もほぼないだとか、自分だったら、大事な学生時代を母親のせいで台無しにされた的なことを思ってしまいそうだから、そんなことは考え付きもしていなそうな彼のことを、かわいそうに思うのはきっと間違っている。学習習慣が身についていればもっとレベルの高い大学を狙えただろうに勿体ない。なんて気持ちだって、自分の価値観での話だということもわかっていた。
 狙った大学への入学も、狙った相手と親しくなることも、たくさんの友人を作ることも、友人たちと遊ぶことも。全部成功している彼に、現状不満は一切ないのだ。高校時代が嘘みたいに、柔らかに笑う顔を毎日のように見ている。
 レポートと向き合う真剣な横顔と、その周りの張り詰めた空気が高校時代を思い出させて、あの無愛想な孤高のイケメンが、今じゃふわふわと笑顔を振りまいているだなんて不思議だよなと思う。決してあの頃に戻って欲しいわけじゃないし、事情を知ったら笑えるようになって良かった以外の感情なんてないはずなのに、それでも時折、あの頃の彼を懐かしく思ってしまうのはなんでだろう。
「おわった〜」
 くるりと体ごと振り向いた相手とばっちり目があってしまったが、思いっきり見つめていた事への言及はなかった。ふにゃんと顔を緩ませ、先程までの硬い雰囲気ごと綺麗サッパリどこかへ押しやってしまった彼は、甘えるみたいに両腕を開いて見せる。
 その腕に誘われてやるのは癪だと思うのに、黙って立ち上がり彼に向かって歩いている自分自身のことがわからない。特別面食いだと思ったことはないし、そもそも男じゃねーかと思っても居るのに、イケメンの緩んだ笑顔にどうにも逆らい難い。
 無愛想イケメンのままなら、ふざけんなの一言で終わらせる自信があるから、もしかしてそれであの頃の彼が懐かしいのだろうか。あの頃のままの彼で居てくれたら、甘える相手を受け入れて、お疲れと言いながら頭を撫でてやるような、どう考えたって男友達相手の対応じゃない真似をせずに済んだだろう。

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