生きる喜びおすそ分け16

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「でもセックスなんて、別にしなきゃしないでいい、んですよね? それを俺がしてって言うから、してくれるだけで。俺と恋人続けるために必要だから、頑張ってくれてるだけで」
「そうだね。だからこそ、君には楽しんで欲しいし、出来る限り気持ちよくしてあげたいと思うし、君が楽しんでくれたらホッとするんだよ」
「いやだから、そうだね、と、だからこそ、の間がわからないというか、なんでそうなる? ってなるんですけど。そこまでする価値、俺にあります?」
 何が何でも別れると言い張ったら、残念だと思いながらも別れを受け入れる、みたいな事も言っていたくせに。
「ああ、ちょっとわかってきたかも」
「え、何がです?」
「君にとってはあまりに当たり前過ぎて、俺のためにと何か特別頑張ってくれてた訳じゃないから、君が人生を楽しむ隣でそれを眺めさせて貰うことに対して、俺が君に差し出しているものが多すぎると思ってる。そういやデートを割り勘にしたがってもいたし、今までのデートで俺が支払いをかなり多めに持っていたことも、この部屋も、俺が君に奉仕的なセックスをする気でいることも、そこまでする必要性がわからない。どう? あってる?」
「そういう気持ちは、確かに、ありますけど……」
 肯定すれば、やっぱりねって感じになんだか嬉しそうにされたけれど、なんでそれが嬉しいのかはさっぱりわからなかった。
「ちなみに俺は、君に想って貰うだけの価値が自分にないと思ってる」
「えっ?」
「だって本当に、仕事から離れて個人で付き合ったら、つまらない男でしか無いだろ? 君の思いつきと好奇心と好意とに甘えて、君にデートプランをたてさせて、しかも、君が楽しんでるとこを見せろと言う割に、自分から君を楽しませてあげようともしない、割と最低な部類の男だと思うんだけど」
 まぁ確かにその通りではある。というか自覚はしっかりあったらしい。ただ自分にとっての問題はそこじゃなかったけれど。
 デートだとか恋人だとかって単語の意味に、勝手に振り回されていた自覚はある。自身の想像するそれらと全く当て嵌まらない関係が虚しいのは、彼とのもっと親しい触れ合いを、もっと言うならセックスを、期待する気持ちがあるからだと気づいたせいだ。
 気づいてしまったらさすがに、その気持ちを隠して今まで通りの何もないお出かけを純粋に楽しむなんて無理だと思った。こちらがデートを楽しまなくなったら、彼から別れを切り出してくるだろうと思った。
 だからこそのラブホで、最後に一回抱いてもらえたらラッキーくらいの気持ちで……
 そう思ったところで、彼が最低な部類の男だという理由に、もう一つ思い当たってしまった。
「しかも俺が別れる気だってわかってから、ちょっと本気出すから考え直して、ですしね」
 今まで手ぇ抜いてましたを思いっきり言っちゃう辺り、本当に酷い男だと思う。でも最初っから恋人には不向きだと自己申告されていたのだから、本当はそこまで酷い男ではないってこともわかっていた。本人からの色々な忠告を全部無視して、デートだ恋人だと浮かれて近づいてしまった自分が悪い。
「ああ、うん、まぁそれも確かに酷いね」
「あ、いや、今のはただの言いがかりで」
「そう? ただそれに関しては、俺と付き合うのに飽きたとか疲れたとかって理由じゃなかったからであって、つまんないからもう止めますだったなら引き止めたりしなかったよ、ってのはわかってて欲しいかな、とは思うかな」
「俺が、あなたを好きだって、知ったからですよね。お詫びって言ってましたし。あ、お詫びだからか。お詫びだから頑張ってくれてるのも、あるんですよね。そういえば」
「お詫びも兼ねてはいるけど、お詫びだから楽しんで貰えると安心する、はやっぱちょっと違うかなぁ」
 難しいとぼやけば、そうだね難しいねと相手にも苦笑しながら同意された。
「でも、この辺りのことはっきりさせとかないと、君、俺とのセックス楽しんでくれそうにないからなぁ」
「そういう余計なこと考えられないくらい、ぐちゃぐちゃに感じさせられる激しいセックス、とかでもいいんですけど……」
 ちょっと投げやりな気持ちでそんなことを言ってしまえば、それは最終手段でと返ってきたから、可能性がなくはないんだと知ってドキドキが加速していく。

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生きる喜びおすそ分け15

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 だって、と反論したい気持ちをこぼせば、嬉しくも楽しくも思わないとは言ってないだろと、優しい声に諭される。でもそうは言っても、あんな言い方をしたってことは、たいして嬉しくも楽しくもないってのと同じじゃないのかと思う。
「ただこれも好きって気持ちがどれくらいあるかって話と一緒で、俺がちょっと楽しいなとか嬉しいなとか思う程度じゃ満足しないでしょ」
「そんなことは……」
 思ったそばから、ほぼ考えていた内容を口にされてしまった上に、見透かすみたいに満足できないでしょなんて言われて、とっさに否定の言葉を口に出してしまった。
「じゃあ、君がうんと楽しんでくれたら、俺も嬉しいし楽しいよ。だから、張り切って気持ちよくなって?」
 じゃあってなんだよ、と思ってしまう気持ちはどうしたってある。けれどあえてそう言った事もわかっていた。こちらが反射的に否定の声を上げてしまったことも、見透かされているのかも知れない。
 だってその言葉には間違いなく、本当に出来るのかという意味が含まれている。そしてこんな言われ方をして、わかりましたと張り切れるわけがなかった。
 ニコっと笑ってみせる顔は少し意地悪だ。
「ズルい……」
「ゴメンね。でもわかりやすいかと思って」
「別に、いいですけど。ズルいのなんて今更だし」
 こんなの結局、こちらが張り切って気持ちよくなろうって思えるくらい、楽しいとも嬉しいとも言えないって宣言と変わらないよなと思いながら、大きく息を吐いていく。ほらやっぱりね、という諦めを込めまくった溜め息だった。
 吐き出して、そのまま本当に諦めきれたらいいのに。
「ねぇ、安心する、ってのじゃダメかな?」
「安心じゃダメか? って、なんですか?」
 意味がわからなすぎて、言われた言葉を繰り返してしまう。
「言葉通りの意味なんだけど、つまり、君がうんと楽しんでくれた時に、俺の中に湧く一番大きな感情は何かって考えると、嬉しいとか楽しいとかより、良かったっていう安堵だろうな、って話」
「それ、これでふられなくて済むぞ、っていう安心ですか?」
「えっ?」
 驚かれた事に、こちらまで少しばかり驚いてしまう。だって他の理由がわからない。
「違うんですか?」
「俺とのセックスをうんと楽しめたら恋人続けてくれる気があるとは聞いたけど、でもそれ確約されてるわけじゃないし、これでふられなくて済むぞ、なんて安心は出来そうにないな。まぁ、それが全く無いとも言わないけど」
 でもそうじゃなくてさ、と彼が言葉を続けていく。
「君が日々あれこれ楽しんでるのを、邪魔したくない気持ちは結構あって、なのに今回君がもう止めたいって思ったところを引き止めちゃったからね」
 だから今回のデートを何かしら楽しんで貰えたら本当にただただ安心すると言った相手は、あげられるものが少なくてゴメンねなんて事まで言うから、やっぱりまたその言葉を繰り返してしまった。
「あげられるものが少ない? ってのは?」
「それも言葉通りだけど。君は俺が君に望んだもの以上のものをくれたけど、君が俺から欲しいものをほとんど返せないのが申し訳ないって話」
「望んだもの、以上……」
「君が人生楽しんでるとこを近くで見て、感じて、君の楽しい気持ちのおすそ分けを貰って、俺の人生もそう捨てたもんじゃないかもなって気になるだけのつもりが、好きって気持ちや体まで差し出してくれてるだろ」
「それ、押し付けられた、の間違いじゃなくて?」
「それだけどさ、多分、君は根本的なとこを勘違いしてる。さっきも、男の体なんか抱かせて、みたいな申し訳無さを感じる必要はないって言ったけど、君に好きだと思われることも、セックスを誘われることも、欠片だって迷惑には感じてないよ?」
「本当に?」
 思わず聞いてしまえば、すぐに本当にと繰り返してくれたけれど、どうしてもそれを素直に信じきれない。

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生きる喜びおすそ分け14

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 違う違うと何度も繰り返したせいか、苦笑とともに何が違うか説明できるかと問われて、たどたどしくも不満や否定の意思はないと伝える。キモチイイに集中しきれない理由として、自分がセックスをねだったせいで、男は性対象外だった彼にこんな形で頑張らせているという、後ろめたい気持ちも伝えてみた。
「俺を恋人って形で傍に置いておきたいって理由なのも、恋人としての義務感で抱いてくれるのも、わかっててそれでいいって、思ってたんですけど。でもいくら性対象として認識されたからって、やっぱ男の体触っても楽しくはないだろうなって思ったら、なんか嬉しいとか気持ちぃとかより、申し訳ない気がしてきちゃって。俺が楽しむことが重要なの、わかってるけどどうしても余計なこと考えちゃうから、もし、俺がうんと楽しんだら、あなたも嬉しかったり楽しかったりするよって言って貰えたら、なんていうか、俺自身が張り切って、もっとちゃんと気持ちよくなろうとするんじゃないか、って思っちゃった、だけです」
「なるほどね。どうしたら楽しんで貰えるかっていう俺の言葉に、ちゃんと答えを返してくれてたってだけの話か」
 うーん、と少しだけ迷う様子を見せた後、一つ言っておくけどと前置いて彼が言葉を続けていく。
「男の子の体に性的な意味を持って触るのは初めてだから、全く楽しんでいないわけでもないというか、色々と興味深いと思う気持ちはあるんだよね。君の体、反応いいし。だから男の体なんか抱かせて、みたいな申し訳無さは必要ない。ただこれ、君に触れることが楽しいとか嬉しいとかって気持ちとはどうしたって違うから、言わないほうがいいだろうって思ってた」
「あの、今まで男の恋人がいた事も、男とセックスした事も、なかったんですよね?」
 思わず聞いてしまったのは、男の体に触れることそのものを多少なりとも楽しんでいる、なんて言われるとはまったく思っていなかったせいだ。
「そうだね」
「それって、本来は男なんて恋愛対象にならないとか、性対象にならないとか、そういう理由からなんじゃ……?」
「あぁ、いや。別にそこまで、男はない、みたいな気持ちは元々無いよ。じゃなきゃ、あっさり君と、最初はデートするだけのつもりだったとしても、恋人になんてなってない」
 確かに、お互い酔っていたとはいえ、随分とあっさり付き合うことになったとは思っていたけれど。でも男がないというよりは、一緒にどこかへ出かけるだけならそれの名称がデートだろうと気にしないってだけかと思っていた。だからあの日のラブホだって、断られる前提で連れ込んだ。
「じゃあなんで、俺が初めてなんですか」
「なんで、って……付き合ってみるのはどうかなんて言い出したのも、告白されたのも、君が人生で初めての男性だから、だけど」
「もしかして、過去の彼女たちも、告白されたら付き合うみたいな感じだったとか?」
「まぁ割と」
「自分から告白したこと、あります?」
「そりゃあなくはないけど、自分から好きになってというのはない、かな。好かれてるなって確信持ってて、こっちが動くの待たれてると思ったら、まぁ告白くらいするよね」
 とことん受け身な人生ですねと苦笑してしまえば、相手もそうだよと言いながらやっぱり苦笑している。
「でね、肝心の、君が楽しんだら俺も楽しいか、って話だけど」
「あ、はい」
「全く楽しくも嬉しくもない、なんてことはさすがに思わないけどさ」
 あ、これ否定がくるのか、と思ってしまって胸が痛い。そしてどうやらそれは顔に出てしまったらしく、そんな顔しないでと優しく頬を撫でられてしまった。

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生きる喜びおすそ分け13

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 あちこち撫でられキスされて、いわゆる性感帯を暴かれていく。
 過去の経験と比べるのはどうかと思うけれど、唯一知っている相手はかなりノリの良い男で気安かったのもあって、完全に遊びの延長だった。突っ込まれたし、気持ちよくして貰った側でもあるけれど、感覚的には友達と抜きあったのに近い。
 でも元々尊敬する憧れの人で、成り行きで恋人になって、でも全く恋人らしい要素のないデートが虚しくなって、別れる前にとラブホに誘ったらなぜかこんなことになってしまった、好きを自覚済みの相手に、感じる場所を探るように触れられるのはぜんぜん違う。
 頑張るよって言ってくれているのだから、相手に身も心も委ねきって、ただただ気持ちよくして貰えばいいのかも知れない。とは思うものの、やっぱり色々恥ずかしくて、なんだか怖くて、いたたまれない気持ちが湧いた。
 だってラブホになんて誘わなかったら、この人は男相手にセックスする事なんて考えもしなかったと知っている。今はもうちゃんと性的対象として見れてると言ってくれているし、実際に反応したペニスを確認させてもくれたけれど、女性相手のセックスすらもう良いやと思ってるっぽい男に、何をさせているんだろうと思ってしまう。
 セックスしてもいいと思えるくらいにはちゃんと好きだとも言ってくれているのに、それでもやっぱり、恋人として傍に置いておくために必要だから頑張ってくれてるだけだと思ってしまう気持ちがある。
 ちゃんと気持ちがいいのに、そのキモチイイに全然浸っていけない。
「体の反応はかなりいいけど、なかなか緊張解けないな。というか気が散ってる?」
「ごめ、なさ……」
 集中できていない自覚はあったからつい謝ってしまえば、謝られる理由がないよと優しい声が返った。
「こっちこそ、男の子の体に触るの初めてで勝手がつかめてないから、あちこち色々試すみたいに触っちゃってゴメンね。それで気が散っちゃってたりする?」
「いえ、そんな……ちゃんと、きもちぃ、です」
「うん。ちゃんと気持ちよくなって貰えてるのはわかるんだよ。体はね。でもちっとも楽しくはないでしょ?」
 楽しんでいないと指摘されてドキリとした。だって楽しいとか嬉しいとか思うだけの気持ちの余裕がない。ついでに言うなら、肌のあちこちを撫で擦られてキスを落とされ舐め食まれる程度じゃ、あれこれ余計なことを考えられないくらいの強烈な気持ち良さは生まない。
 でも考えたってどうしようもないことを考えて、相手のくれる気持ちよさに集中できなかったのは事実だ。
「あ、あの、ごめんなさい、その」
「責めて無いから落ち着いて。どうしたら楽しんで貰えるかなって思ってるだけだから」
「あの、俺が、楽しかったら、あなたも少しは楽しい、ですか?」
「あー……俺の方の話、か」
「あ、ちがう。そうじゃなくて、だって、俺がっ」
「ああ、いいよいいよ。言われ慣れてる」
「ちがう。違うんです」
 憧れの人になんて真似をさせてるんだろう、なんて思ってしまったせいで、余計なことを口走った。ちゃんと過去に言われたあれこれを聞いていたのに、まんま、相手がセックスを楽しんでくれていないと取れる発言をした。
 人生をあれこれと楽しむ姿を傍で見ていたい欲求でここまでするのだから、こちらがそのセックスを楽しめないなら意味がないと思われても当然だと思う。でもだったら、こちらが彼のくれるキモチイイに浸って、このセックスをちゃんと楽しめたなら、彼も多少は満足してくれるのかなと、思ってしまった。だったらいいな、という期待からの言葉で、彼が楽しそうではないのが不満だとかの意味は一切なかったのに。

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生きる喜びおすそ分け12

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 そういやセックスもつまんない男だとか言っていたっけ。あのとき確か、奉仕的なことも行為だけなら苦じゃないけど、気持ちを捧げてくれって方向が難しいみたいに言っていたし、セックスがつまんない男の理由も、好意はちゃんとあるつもりだけど、相手からの評価が冷めてるだとか一緒に楽しんでくれないとかだった気がする。
 つまりこの、恋人からの手抜き発言もそれらと同じなんだろう。
 こちらの好きに気づく前は体だけ気持ち良ければいいなら、みたいなことも言っていたから、行為そのものの気持ちよさはある程度保証してくれるっぽいし、気持ちだってないわけじゃないと言っているのに、それでもそう言って別れたくなるくらい、最初の一回と慣れてからの落差が激しいってことなんだろうか?
 ただそれは、今後も付き合いを続けてみない限り、確認しようがない。そして少なくとも初回で頑張ってくれる気満々の相手には、このまま期待してていいって事にも思えてしまう。
「まぁでも、今日は頑張ってくれるわけだし、うんと気持ちよくして貰えそう? って思っててもいい、んですかね?」
「どんどんハードル上げてくるね」
 苦笑を深くはしたけれど、無理だとか期待するなとか言わないってことは、やっぱりそれなりに自信があるんだろう。少なくともテクニック的な方面に関しては。
 もちろん前回の練習で、相手も手応えを感じたって事かも知れないけれど。
 出来ればうんと気持ちよくなりたいと思う。年に一回か二回で満足できるくらいに、というよりは、奉仕セックスでもいいやって思えるくらいに気持ちよくなりたい。
 気持ち良すぎて、いろんなことがどうでも良くなればいいのに。
「だって、うんと気持ちよければ、満足って割り切れるかもだし、そしたら恋人続けられるかもなわけだし」
「確かにそうは言ったけどね。というか、うんと気持ちよく出来たら、俺と恋人続けてくれる気があるってことでいいの?」
「え、その気がなかったら、今日ここ来てないですよね?」
 何を今更、と思ってしまったけれど、どうやらそうでもないらしい。
「俺を試して欲しいとか、このデートで今後どうするかを判断して欲しいみたいなことは何度も言ってるけど、君がそうしてくれる気でここに来てるのかは聞いてないから」
「えっ?」
「最初で最後の思い出づくり、という可能性はあると思ってたんだけど。最後に一度だけセックスしてってお願いにお預け食らわせたのは事実だから、仕方なく付き合ってくれてるのかなと」
 随分と赤裸々にセックスしたいと口にするのも、別れるつもりだからかと思ってたと言われて驚いた。
「え、ええぇ……」
 そういや彼の試してだとか判断して欲しいだとかの申し出に、わかりましたとはっきり返してはいなかったかも知れない。
「ああ、いや、いいよ。もうわかったから」
 ありがとう頑張るよと、いつになく柔らかに笑われて恥ずかしい。そしてこちらがあたふたしている間に、相手の顔がまた寄せられる。しかし唇には軽く触れただけで深くはならず、そのまま頬を滑って耳に触れたかと思うと、耳朶を甘噛まれてヒャンと変な声を上げてしまう。
 クスリと笑われた気配にますます恥ずかしいと思いながらも、ゾワゾワと走る快感から逃げ出さないよう、ぎゅっと手の平に触れた布を握って息を詰めた。

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生きる喜びおすそ分け11

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 なるほど。複数のお風呂はこういう使い方もあるのか、と思う。
 どっちのお風呂に入ってきたんですかと聞きながら、相手が座って待つベッドに近づいていく。
「デッキにある方だね。海が見えるのはそっちだから、明るい時間に楽しもうと思って」
 先に楽しんじゃってゴメンねと言われて、時間はたっぷりあるから大丈夫ですと返しておく。
「まぁ、俺だって檜の内風呂はそれなりに堪能して来ましたし、この後はもう、お風呂楽しむ余裕なくずっとベッドで過ごす事になっても、それはそれで本望ですけど」
「言うと思った」
 差し出された手を取り、促されるままベッドの上に寝転がれば、無茶する気はないよと苦笑されながら顔が寄せられる。ゆるく唇を解いて待てば、軽く何度か触れたあとで、相手の舌がぬるりと差し込まれてきた。
 応じるように舌を差し出せば、絡み取られて舌同士をぬるぬると擦るように扱かれて、たまらなく気持ちがいい。
 すぐ振られるからだんだん面倒になって、なんていう理由で恋人がいなかったこの人は、すぐ振られると言いつつも過去の恋人たちとちゃんと体の関係があって、しかも多分かなり上手い。
 どうすれば男同士で気持ちよくセックスできるかを必死に検索したと言っていたけれど、それだけで結構簡単に、お尻を弄られながら彼の手で気持ちよく射精してしまっている。それも結局の所、男相手は初めてだとしたって、女性相手にはそれなりに経験を積んでいた結果なんだろうと思う。
 好きな相手から貰うキスだから、という精神的なものももちろんあると思うけれど、それを差し引いたって、やっぱりキスという行為そのものが気持ちがいい。だって、こちらもそれなりに女性との経験はあるし、男は一人しか知らないけれどちゃんと気持ちよくして貰ったのだから、そいつだってそれなりに上手かったと思うのだけど、でもキスだけでここまで気持ちよくなれた相手は居なかった気がする。
 先日のラブホでも、練習と言われてお尻を弄られながら何度かキスを貰っているから、全くの初めてというわけではないのだけれど、気持ち良すぎてたかがキスに全然慣れない。
「気持ち良さそう」
 ふふっと笑って見下ろす顔は満足げだった。
「きもちぃです、よ。というか、この前も思ったんですけど、キス、上手いですよね」
「そう? ああでも確かに、キス嫌がられたり下手って言われたことはないかも。ただ、」
「ただ?」
 いや、何でもない。なんてごまかそうとするのを、気になると食い下がってみたら、ベッドの中で過去の恋人の話なんてしない方がいいでしょ、と返されて、更には下手って言われたことがないって言ったことも忘れてよと続く。
「過去の恋人と比較して、というか女性と比較して、俺のことをどう思うとか、男の体がどうだとか、そういうのは聞きたくないですけど。でも、過去の恋人にどう言われたとかは聞きたいですよ。というか、知っておきたい? 参考にしたい? みたいな」
「あー……そうか。いやでもやっぱ、出来れば今日で終わりにしたくないと思ってるのに、こんなの言うのどうかと思って……」
「いやそれ、尚更聞いておきたいやつですけど」
「だよね」
 そう言いながらもしばし迷って、けれど結局は教えてくれる気になったらしい。
「というかほら、最初の一回ってやっぱそれなりに頑張るもんだから、下手と言われたことはないんだけど、関係が続いて慣れてくと手抜きって言われることはあったよね、っていう……」
「あー……」
 なるほど、それはありそう。なんて素直に納得してしまって、微妙な声を出してしまえば、相手も微妙な顔になって苦笑している。

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