夢見る腐男子は理想の攻めを手に入れたい・その後の二人の久々H2

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 久々の行為で颯真の体にどの程度の負担が掛かるのか想像がつきにくい事を考えたら、やはり夜まで待ったほうがいいと思ってしまう。なんせランチは予約を入れている。
 しかし体を離そうと背に回していた腕をほどいて肩を掴めば、離されまいとしてか颯真の方からギュッと抱きつかれてしまう。
「颯真?」
「しないの?」
「したくないとは言わないが、久々だし、やはり夜まで待ってゆっくり」
「え、夜!?」
「なぜそこに驚くんだ。そういう予定だったろう?」
「それは、でも、昼に外で待ち合わせる予定だったからで、その、夜まで待てないっていうか、卒業したし、もう翔さんに抱いてもらえるんだって思ったら待ちきれなくて来ちゃったっていうか、だから」
 抱いてよの声がくぐもって耳に届くのは、その言葉を発する直前に、胸元に顔を押し付けられたからだ。耳がうっすらと色づいているから、もしかしたら照れているのかも知れない。
 しかし、珍しいなと思った矢先に、胸元で深く息を吸われた。どうやら匂いを嗅がれているらしい。
 照れていると言うよりは興奮しているのだという理解とともに、そういう子だったと零れそうになる苦笑を噛み殺した。
 BL経由のエロ知識がやたらと豊富で、それらを試してみたくて仕方がない好奇心の強さと、どうすればより気持ちよくなれるか探っていく貪欲さまで持ち合わせているような子だ。理想の攻めだの、セックスが上手いだのと言ってくれるけれど、そんな言葉はどう考えたって、彼の素質と思い込みの産物だと思う。
 心も体もひどく素直で、どうされると気持ちがいいのか、どうされたいのか、言葉にも態度にも無意識の体の反応にまで、わかりやすく表れているのだから、セックスが気持ちいいのは当然だ。翔でなくたって、颯真を気持ちよく抱いてやれる男はいくらでもいるだろう。
 もちろん、翔が颯真の初めての相手となったことも、颯真が翔との行為しか知らずに居ることも、偶然や幸運が重なった結果でしかないことだってわかっている。だとしても、今はもう恋人なのだし、今更誰かに譲る気は欠片だってなかった。
 これから先も、彼の好奇心や快楽を求める体を、満たしてやれる存在でいたいと思っている。
「颯真、顔を上げてくれないとキスが出来ない」
 色づく耳殻に口を寄せてそっと告げれば、くすぐったかったのか感じたのか、んっと甘やかな吐息が漏れてわずかに肩が竦んだ。
「颯真」
 もう一度名を呼んで、胸元から離れていく顔をすくい上げるようにして唇を塞ぐ。何度か角度を変えながら、唇の先で相手の唇を食んで焦らすように遊んでから、待ちきれないと伸ばされてくる舌を捉えて吸い上げる。
「んぅっ! ん……ん、ふ……ふ……」
 少しきつく吸い上げてしまったのか、最初だけ苦しげな音が漏れたけれど、すぐに蕩けた様子の呼気に変わっていく。ここ暫くは性感を煽らない軽いキスばかりだったので、久々に味わう颯真の舌を存分に堪能してやった。
「も、っと」
 一度開放した隙に、足りないとばかりに口を開いた颯真が、舌足らずに続きをねだる。舌ばかりではなく、口の中の感じる場所も舐めて欲しいというお願いに応えるべく、再度口づけて今度は相手の口内に舌先を伸ばした。
「ぁ……は、ん……ん……」
 やはり気持ちよさげに鼻を鳴らしていた颯真の体がフルリと震えて、腕に添えられていた手がキュッと腕を掴んでからもしつこく弱い場所を責めてやれば、今度はもぞもぞと腰が揺れだしている。
 触って確かめなくともどういう状態になっているかはわかる。しかし、場所を移動しようという提案には、キスの余韻を残すぼんやりとした顔で「なんで?」と問われてしまった。
「なんで?」
 思わず同じ言葉で問い返してしまえば、何かに思い当たったようで慌てだす。
「あ、いや、その……」
 ここでしてくれるのかと思って、と尻すぼみに小さくなっていく声に、なるほどと思う。
「玄関でしたいの? それとも、立位試したいとかそういう話?」
「というか、ベッド以外でしたことないし、気持ち盛り上がってそのままそこで、みたいなの、憧れるというか」
「じゃあ、玄関にはこだわりなし?」
「玄関は玄関で、興味はあります。って言ったら、このままする?」
 期待の滲む声に、やっぱり玄関でもしたいらしいと思うが、さすがに今日このままここでというのには抵抗がありすぎる。なんせ何も用意がない。今後はあちこちにローションやゴムをこっそり隠し置く必要がありそうだ。
「それは今度な。ああ、でも、手か口で、颯真だけ先に、ここで気持ちよくなる?」
 立ったままイカせてあげようかの言葉には、やはり心惹かれるものがあるらしい。再度引き寄せて、まずは服の上から股間の膨らみを確かめる。先程のキスで腰を揺らしていたくらいなので、当然、既にしっかりと形を変えている。
「ぁ、待っ、て」
「やっぱり寝室に移動するか?」
 抵抗する素振りはないのに、口からはそんな言葉を漏らすから、少し強めに弄りながら問いかけてやる。
「ち、ちがっ、ぽけっと」
「ポケット?」
「こーと、ぽけっとに、ローションが」
「どっち?」
「右」
 教えられるまま探ったポケットからは、言葉通り小分けにされたローションのパックが出てきた。つまりこれを使ってお尻も一緒に弄って、というお願いなんだろう。多分。
「持ってきたのはローションだけ?」
 ゴムは他の場所にという可能性は低そうだ。ということは、つまり。
「俺がのんきにグースカ寝てたら、そのまま繋がるつもりだった?」
「勢いでそうなったらいいな、的なことは、まぁ」
「中出しは懲りたのかと思ってたんだけど」
 性行為は翔としか経験がなく、キスですら掲示板経由で知り合った男に奪われた一度きり以外は翔としかしたことがないというのを知らされた後、変な病気は持ってないはずだから中出しされてみたいと頼まれた事がある。BLに夢見過ぎだと常々思ってはいるのだが、現実で行うリスクも手間も、一応ちゃんとわかっているようだったので応じた。

続きました→

 
 
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