夢見る腐男子は理想の攻めを手に入れたい8(終)

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8章 卒業するまで待てるから

薄暗い路上で向かい合う二人の間には気まずい雰囲気が流れている。
俯いたまま何も言えずにいれば小さなため息が聞こえてきた。

:とりあえず家に戻ろうか

颯真:(この後の展開なんか分かりきってるし)
  :(高校生なの黙ってたこと怒られたり)
  :(セフレ解消の話されたりするんでしょ)
  :(だったらさっさと謝って)
  :(自分から離れた方がきっとマシ)
  :高校生って黙っててごめんなさい

:それはやっぱり事実なの?

颯真:はい

:歳は?

颯真:今はまだ17、です

:高校2年生?

颯真:じゃなくて誕生日がまだ先で
  :18になるのは2月の終わりです

:そうか

颯真:あの、迷惑ばっかり掛けて
  :本当にごめんなさい
  :俺、翔さんのこと諦めますから
  :色々ありがとうございました

:待てっ

走り出す手前、翔に腕を掴まれてしまった。

颯真:放して!

:散々好きだと言っておいて
 :勝手に終わりにして逃げだすなよ

颯真:それは、だって……

:話があるからまずは家に……
 :ああ、もう

深いため息とともに抱きしめられる。

:怒ってないから泣かないでくれ

颯真:そ、なの、信じられ、ないっ
  :だって、俺、俺がっ

:本当に怒ってない
 :ちゃんと話がしたいんだ
 :頼むよ

【翔の家のリビング】
促されて椅子に座るが翔は座らずキッチンへ消えた。
少しして戻ってきた翔が目の前の机にマグを置く。

颯真:ホットミルク?

:ああ、少しは落ち着くかと思って

颯真:俺が、高校生だったから?

:どういう意味だ?

颯真:子供扱い……

:そうだな、もし20歳を超えてたら
 :ここにブランデーでも垂らしてやったかもな

颯真:それって?

:正直ホットミルク程度にそんな反応されてビックリしてる
 :もしかしなくても
 :大学生のフリして書き込みしてたこと
 :前から気に病んでた?
 :最近少し態度おかしかったし

颯真:だって翔さんが
  :男子高校生にトラウマ持ってるって言うし
  :たとえ両想いだとしても
  :高校生に手を出していいわけがないって
  :だから、知られたら抱いてくれなくなるって思って

:やっぱりそれか
 :最初から知ってたらもちろん
 :どんなに頼まれても抱くことはしなかったし
 :知った以上は卒業するまではもう抱かないよ

颯真:ですよね……
  :恋人にもなれないし
  :抱いても貰えなくなるし
  :そしたらここに来る理由がなくなっちゃうし

:まぁ確かに
 :現状考えたらそうなるよな

颯真:翔さんと会えなくなるなら
  :俺、ちゃんと自分から
  :諦めようって思ったのに……

またじわじわと涙が浮かんできてしまう。

颯真:なんで俺を引き止めたの?
  :翔さんのしたい話って何?
  :もう抱かないなんて
  :言われなくたってわかってたのに

:引き止めたのは諦めて欲しくなかったからだ

颯真:それ、どういう意味?
  :好き好き言われるの
  :苦手なんじゃないの?
  :俺、トラウマ原因の教え子と同じ
  :男子高校生だよ?
  :諦めるって言ったら喜ぶとこでしょ?

:それだけど
 :この前久々に昔のトラウマに触れて考えてたんだよ
 :颯真くんとは既に体の関係まであって
 :せっかく恋人になりたいって言ってくれてるのに
 :いつまでも過去のトラウマにとらわれて
 :好きになるのが怖いなんて言ってるのは
 :凄く勿体無いんじゃないかって

颯真:なら、俺と恋人になってくれるって言うの?

:うん
 :それもありかなって思ってたとこだった

颯真:えっ……

:さっきもう抱かないって言ったけど
 :卒業するまではとも言ってるんだよ

颯真:つまり?

:卒業までセックス無しの恋人では不満?

颯真:次のエッチは卒業までお預けだけど
  :それが我慢できるなら
  :恋人になってあげるよってこと?

:なってあげるよじゃなくて
 :暫く抱いてあげられないけど
 :恋人にしてもらえないかって
 :俺がお願いしてる立場

颯真:いいの?

:恋人にしてくれる?

颯真:凄く、嬉しい

:なら良かった

颯真:卒業まで抱いて貰えないくらい
  :全然我慢できるから
  :だからさ、あのさ

:何かして欲しいことがあるなら言って
 :出来る限り叶えてあげるから

颯真:一緒にどっか出掛けてみたい

:デート?

颯真:そう

:もちろんいいよ
 :楽しみだな

颯真:それとさっきみたいに
  :颯真、って呼んで欲しい

:わかった
 :好きだよ、颯真

颯真:ぅあっ、ちょっ
  :いきなりそれは

:嬉しくなかった?

颯真:それは嬉しいけど!!
  :めちゃくちゃ嬉しいけど!!

:んふふ、真っ赤になって可愛いな

颯真:もー!!

頬を膨らませればますます楽しげに笑われてしまった。

颯真:ねぇ、エッチはダメでも
  :キスして、くらいなら言ってもいい?

:俺としてはハグも付けたいところだけど

颯真:ぜひ付けて

:じゃあおいで

急いで椅子を降り、広げられた腕の中に飛び込んだ。

<終>

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