充分とはいいがたいものの、すっきりとした気分で瞼をあげたガイは、差し込む朝日に眩しそうに目を細める。今日も天気はいいらしい。
仰向けに寝転がったまま、んーっ と大きく伸びをしてから、隣で寝息をたてているビリーへ顔を向ける。不思議と毎朝、ビリーはガイへと顔を向けて眠っているのだが、それは今朝も変わらない。
そっと伸ばした指先で、前髪をサラリと掻き揚げてみる。そんな悪戯をしても一向に構うことなく、ビリーは穏やかな表情で目を閉じたままだ。
無防備な寝顔を晒すのは、安心の証。従順な性の奴隷として調教される身となり、半ば強制的にビリーと一緒に暮らすようになった当初は当然、彼の寝顔なんて見た事がなかった。
色々な不安感や恐怖心を抱えた日々の中、自分からビリーに近づくということをしなかったからだ。
自分だって、疲れ切って眠ってしまうことはあっても、いくらビリーが一日の大半を部屋の外で過ごし、部屋の中でも極力ガイを無視するような生活をしてても。やはり、そこに存在するビリーの気配に、安心して眠れる夜などなかった。
今となっては、それすら懐かしい思い出。そして今では自分もきっと、ビリーの隣で幸せな笑みを浮かべて眠っているのだろう。
本当は優しい人なのだと気付けてよかった。
好きになれてよかった。
好きになって貰えて、本当に、よかった。
ガイは湧きあがる愛しさに小さな笑みを零してから、ゆっくりと身体を起こした。
朝食の準備をしてからビリーを起こして、今日は比較的時間に余裕があるから、昼間の内に一緒に買い出しに出掛けるのもいいかもしれない。そんな予定を脳内で思い描きながらベッドを降りたガイの腕を、伸びてきたビリーの腕が捕まえた。
「っわ!」
驚きで身体を跳ねさせつつガイは振り返る。
「スマン、起こしてもうた?」
「いや、いい。それより……」
窓に視線を向けたビリーは、やはり目を細めながらいい天気だなと呟いた。
「今から、メシの用意をするんだろう?」
「そうやけど……なんや、リクエストか?」
卵の焼き方くらいなら応えてやれると笑うガイに、ビリーは笑い返しながら首を振る。
「せっかくだから、食べに出ないか? その後、買い物をして帰ってくる。というのはどうだ?」
奢ってやるよと続いたセリフに、ガイは最初驚き、次には満面の笑顔を見せた。一緒に買い物に行きたいと思っていたのを、ビリーの方から申し出てくれたのがなにより嬉しかった。
天気の良さに、同じことを考えたのだ。
「ホンマに!?」
思わずビリーの背中に飛び乗ったガイに、ビリーは口先だけで重いと文句を言ったけれど。
「決まりだな」
そう告げながら、次にはやはり、同じように笑って見せるのだろう。
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