見せた態度と、実は抱かれた経験がないという訴えとを照らし合わせて納得が行ったのか、経験がない事自体はあっさり信じたようだけれど、やっぱりバカだとは言われたし、そんな所で見栄を張る意味がわからないとも言われた。別に見栄だとかカッコつけだとかだけで、言えなかったわけじゃないんだけど。相手に好きだと言われた後は、知ったら喜んでくれそう、とは一応ちゃんと思ってたけど。
まぁそれも、喜ばせたくなかった、という気持ちが欠片もないとまでは言えないが。こいつが過去に抱いただろう男たちへの嫉妬がなかったわけではないから、居もしない誰かに嫉妬すると言われて、そのまま嫉妬し続ければいいって気持ちもあったとは思う。
ただ、それらを全部晒して、言い訳をする必要はなかった。別に見栄のせいだけで言えなかったわけじゃないという気持ちを込めて、こっちにも色々事情があってと濁せば、言えなかった事情についてはそれ以上の追求がされなかったからだ。
それはきっと、無駄にカッコつけのせいで言えないことがあるのは仕方がない、という妙な納得と理解とをされているせいなんだろう。間違いなくありがたいのに、なんとも複雑な気分だ。
なんて思った気持ちが覆るのも早かった。
もしかしなくても、単に、色々な事情とやらを細かに聞く必要がなかっただけかも知れない。そう思ってしまったのは、色々な事情については聞かなくていいけど、どこまで自己開発したのかは話せと言われたからだ。
今日という日のために自分で弄って拡げたのは事実で、相手が誤解した理由がそこなのは明白ではあったけれど、自分でどこまで拡げられたかを吐かされるのは、それはそれでなかなかに苦痛だった。苦痛の理由は主に羞恥で、なんとも居た堪れないのに、どうしても知っておきたい情報だと言うから諦めて晒した。
男に抱かれた事がないのは事実だけれど、小ぶりのディルドは突っ込んでみたから、厳密に言えば真っ皿の処女では無いかも知れない。なんてことを照れ隠しに口に出したら、小ぶりのと評したディルドのサイズをめちゃくちゃ気にされてしまったのは、多分失敗だった。さすがに相手のナニよりは小さかったので、内心セーフと思いながら、すぐさま正直に、お前サイズは未体験だと告げておいたけれど。
しかし、相手サイズが未体験なことと、自己拡張で全く快感を得られなかった事は、相手にとっては喜びよりも憂慮が勝るらしい。
これから開発し放題なんだから、もっと喜べばいいのに。なんて気持ちをうっかりこぼせば、確かにそうだと、あっさり気持ちを切り替えたようだけど。結果、じゃあ慣らすところからやり直そうか、なんて言われて、相手と繋がる直前だったはずの行為は、ほぼ最初からになってしまったけれど。
でもまぁ、相手のその選択は、間違いじゃなかった。
「ぁ、……っぁ……はぅん」
自分の口から溢れる小さな音が、甘さを含んで響き、部屋の中に溶けていく。尻の中に突っ込まれた指に感じているわけではなくて、そこ以外の、相手の手が撫で、唇が落とされる場所から、快感の波が広がっている。
ただただ指を突っ込まれて拡げられていた、優しさの欠片もなかった行為とは天地ほどの差がある。嬉しさと安堵とで、体から余計な力が抜けているのも、快感を快感として得やすくしているかもしれない。
「ここ、だね」
感じて体を震わせれば、甘い息を大きく吐けば。その場所を覚えるように何度も撫で擦り、唇を落として舐めたり食んだりの刺激をくれる相手が、随分と楽しげなのも良かった。
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