もう一度イカせてあげようかと言われながら、軽くペニスを扱かれつつアナルに挿し込まれたままの指で弱いところを柔く押されれば、腰に甘い痺れが走って膝が震えた。
「お、俺、だけ? 一緒に、イッてくれないなら、や、ですっ」
「さすがにここでもう一回一緒に、は難しいなぁ」
半泣きで訴えれば、そんなセリフとともにギュッとペニスが握られて、ビクッと体を跳ねてしまう。
「や、やだっ」
「うん。ゴム外して綺麗にするだけだから」
慌ててあげた声には宥めるみたいな声が掛かって、その言葉通り、タオル越しにズルっとゴムが引っ張られていく。お尻の指はそのままだから、ゴムを外した後のペニスを拭き取るのまで全部片手で済ませる辺り、本当に器用だと思う。
「お尻の方も、もう垂れてくるのはなさそうだね」
抜くから声気をつけてと言われて、ゆっくりと指が引き抜かれていく。
「ふぅううっっ」
その指が何かを掻き出すみたいに腸壁をこすっていくから、声に気をつけてと言われていなければ、甘い声を響かせていたかも知れない。
「はい、終わり」
指が抜け出た後のアナルをタオルで軽く拭われて、どうやら後始末は終了したらしい。お湯に浸かって温まってと促されるまま、その場で膝を折り湯の中に腰を落とした。
きっと中に出されたあの瞬間が、多幸感と達成感のピークだった。なんてことを思いながら、目の前の岩に縋るような気分で頭を乗せる。中出しの後始末を彼の手で直接されるなんて想定は欠片もなくて、脱力感といたたまれなさが酷い。
「疲れちゃった?」
労り混じりではあるものの、どこか笑いを含んだ声だった。
「そーゆーあなたは、なんだか楽しそうですね」
「うん。楽しかったし、今もまだ、その余韻を楽しんでる」
自分から望んでおいて、あんなにたっぷり楽しんでおいて、疲れた様子で脱力しているこちらをからかう笑いかと思っていた。まさかこんなにあっさり肯定されるとは思わなくて驚く。
「えっ」
慌てて身を起こして、隣に腰を下ろしてくる相手をまじまじと見つめてしまう。風呂の縁に向いているこちらと違って、風呂の縁に背を向ける形の彼とは、ほぼ正面に向き合っている形になる。
「勃ってる……」
だからこそ見えてしまった股間に気を取られて、相手の顔ではなく、そのまま釣られて湯面に視線が落ちていく。
「興奮してるよ、って言ったろ」
苦笑されてようやく真っ直ぐに見た彼は、苦笑顔なのにどこか満足げで楽しげだった。
「でも……」
「君に誘われるまま、もう一度ここで中出しはあまりに無謀でしょ。朝食は七時半でチェックアウトは十一時だよ」
「つまり」
「うん。君にその気があるなら、朝ごはんの後、ベッドでしよう。お腹いっぱいになった君が、寝落ちなければ、だけど」
「寝ませんよっ。ってか、さっきの」
「さっきの?」
「余韻を楽しんでるって、ほんと、ですか?」
自分と過ごす時間を、はっきり楽しんでいると肯定されたことはほぼない。昨日だって散々、楽しい気持ちはあるけどこちらが満足いくほどの熱量での楽しさではない、みたいな言い方をしていた。もちろん、言葉通りに楽しそうな様子を見せてくれたことだってない。
こちらの、人生楽しいって気持ちを受け取ってはくれても、それが彼自身を楽しませているわけじゃなかった。こちらに釣られて、彼の人生もそう捨てたもんじゃない、って思えるのが良いって理由が大きかったはずだ。
「ホント」
言いながら伸びてきた手が、頬をするっと撫でていく。
「さすがに認めないとね。君が傍にいてくれる人生は、楽しいよ」
真っ直ぐに伝えられた言葉に、胸の奥が喜びで満ちた。じわじわと頬が緩んで、にやけてしまうのがわかる。
嬉しいという言葉は相手の唇に塞がれて音にならなかったけれど、でも間違いなく、相手にも伝わっているだろう。
<終>
某電車広告から派生した 月収50万だけど人生つまらない男×月収30万だけど人生楽しい男 からのインスパイアでしたが、こんなに長引くと思いませんでした。長々とお付き合いありがとうございました。
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