数日後、続きの撮影でまず行ったのは、二人きりでの準備だった。
衣装ではなくバスローブが用意されていて、シャワー後にそれを着て案内されたのはベッドとテレビくらいしかない小さな部屋で、部屋の中には彼一人しか居なかった。
そしてざっくり編集済みの前回撮影分を一緒になって観る、という何かを思い出させる展開に、思わず部屋の中に隠しカメラがあるのかと疑ってしまったのは仕方がないと思う。けれどそれはあっさり否定されて、気持ちを前回の続きというか、この映像の続きに向けて合わせやすいようにというだけの気遣いらしい。
前回時系列メチャクチャな撮り方をしたことと、それでこちらが撮影後に混乱から疲労していたこともあって、撮影前の予習が必要だと判断したようだ。ただまぁ、ついでに今日の撮影へ向けて体も慣らして置こうかって言われて、自分がエロいことをされている映像を見ながらお尻を弄られるという、なかなかな羞恥プレイも付属していたけれど。
だってただただ映像の確認をしながらお尻を慣らされているわけじゃない。彼は画面の中の男同様に生徒としてこちらに接してくるのだ。
画面の中で彼に弄られている男はやっぱりそこまで馴染みがない姿をしていて、イマイチ自分自身だとは認識しずらいのに、それでも生徒として語りかけられると、自分は彼の家庭教師で、今日は彼に撮られた映像を見せられながらのプレイなんだって思い込んでいく。彼の言葉を聞きながらお尻を弄られていると、一日で撮影したはずの映像なのに、画面の中のストーリーと同じ様に、まるで長い時間を掛けて少しずつ、彼の手でお尻を開発された気にもなってくる。
もしかしたらこれも、気持ちをこの後の撮影へ向けて整えるというか、体だけじゃなくて心ごと準備を手伝ってくれてるのかもしれない。
彼がここまでしてくれるのはきっと、彼の思い描く作品を撮るために必要だからなんだろう。素人の演技には期待できないから、まんまこちらを、この物語の家庭教師役に錯覚させてしまえって意図がありそうだと思う。
実際錯覚は置きているし、ありがたいことなんだろうけれど、なんだか胸の奥が痛かった。だって前回の撮影では気づけなかったことも、この映像には映り込んでいる。
時系列にそって並べられた映像には、彼の、というよりはこの物語の生徒の想いが、思いの外強く描かれていた。撮影中は焦らされれば焦らされるだけ余裕がなくなって、彼がどんな顔をしていたかなんて思い出せないけれど、時々映される彼の表情が気になってたまらない。
画面の中の自分に、というよりはこの物語の家庭教師に、錯覚によって気持ちが重なっているから余計に気になる、というのもあると思う。なんせ映像の大半は快感を耐えながらお尻の開発をされている自分が映っているのだ。自分の顔がアップで撮られていることはあっても、彼の顔がアップで映される瞬間なんてない。
それでも目が画面の端に映り込む彼の姿を探して追いかけるのは、この物語の家庭教師の男として、彼の想いが気になっているから。と考えるのはそう不自然なことではないと思う。もちろん、自分が気持ちよさで喘いでしまうのを耐えまくる映像なんて見たくない、的な気持ちだってないわけじゃないけれど。
「どうだった?」
やがて映像が終わると、お尻の中から彼の指も抜けていって、同時に感想を尋ねられる。
「思ったより、短かった、かも」
あんなに時間を掛けて撮影した映像は、思ったよりもギュッと短縮されていた。時間がかかったのは着替えやらで頻繁に休憩が入ったせいでもあるから、こんなもんなのかも知れないけれど。
「確かにね。入れたいシーンはもっと色々あったんだけど、今日の分も足すこと考えたら、結構早送り気味になっちゃったよね」
いっぱい頑張ってもらったのにごめんねと言われたけれど、別にそれはどうでもい。
「別にそんなのは謝らなくていいけど。それよりさ、これ、最後どうなんの?」
「どうなるのって、どういう意味で?」
この後のざっくりとした展開は一応聞いている。どんどん過激になる開発に音を上げた家庭教師が中出しセックスを受け入れて、彼のものであることを宣言させられる展開になるらしい。
もちろん過激になる開発の許容範囲は既に伝えてあるし、中出しに対してもお互いに事前に性病チェック済みだし、さっきも念入りに中を洗ってきた。多くて喜んだギャラは、どうやら内容のハードさに比例したものだったらしい事にも、今はもう気づいている。
ただ聞かされているのはそれだけで、互いの気持ちについては特に何も知らされていなかった。
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