金に困ってAV出演してみた21

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 歯を磨いて戻れば、勉強机の上にグラスが2つ置かれていた。机の横には既にカメラもスタンバイしている。
 この後は先程までのあれこれをネタに脅されて、今後も関係を続けるよう強要されて、それで今日の分の撮影は終わりなはずだ。これまでの流れなら、休憩という名の打ち合わせが入って、その間に軽くお菓子をつまんだりそれこそ水分補給をしていたのに、今回はすぐにも撮影が再開されるらしい。でもどう考えたって、机の上のグラスが水分補給用とは思えない。
 それでも、どうぞと勧められるままグラスを手に取り中身を口にした。
 何かのハーブティーだろうか。爽やかな香りとほんのりとした甘みが、疲れた体に染み渡る。美味しさにあっさり飲み干してしまえば、空になったグラスはすぐに新しいグラスに交換された。しかし、二杯目はただの麦茶らしい。同じものを出してくれればいいのに、少しばかり残念だ。
「さっきのお茶のが良かった?」
「えっ? あ、うん。そうだね。あれ何のお茶なの。飲んだことない味だったけど、美味しかった」
「じゃあ次回はまたあれを用意しておくね。興奮して授業どころじゃなくなって、また、俺と抜き合うことになると思うけど。楽しみだなぁ」
「は? えっ?」
「あれね、エッチな気持ちになるお茶だって。ついでにちょっと、強制的に勃起しちゃう薬もブレンドしてあったりするけど」
 効果抜群だったよねと笑われて、えっ、えっ、と何度も戸惑いの声を上げてしまう。
 いやまぁよくよく考えれば、さっきまで飲んでたのがさっきまで撮影していた冒頭シーンのさらに前に差し込まれる映像で、この麦茶から先が事後の脅され部分用というのはわかるんだけど。さっきのお茶に本当に薬が仕込まれてるわけじゃないのも、わかるんだけど。
 でも、それらを一度に繋げて撮るどころか、事前に薬入りのお茶を飲まされていた設定があったことすら知らされてないので、理解が追いつく前にどんどん話が進んでしまう。
「ずっとね、先生には俺のものになって欲しくて、めちゃくちゃ機会探してた。だからね、俺のことは好きじゃなくてもいいけど、俺のものになってね」
 にっこり笑顔は可愛いのに、しっかりと凶悪な腹黒さが滲み出ていて、頭の中ではただの設定でこれは撮影と思っていてもゾッとした。逃さないからと宣言されれば、もう逃げられないのだと、どこか本気で思いかけている。
「さっきの抜き合いも、先生がしてくれたフェラも、記念撮影はばっちりしてあるから、それ、忘れないで。もし逃げようなんて考えたら、それ使って先生の人生、めちゃくちゃにしてあげるね」
 口から吐き出す言葉は脅迫以外のなにものでもないのに、うっとりと言い募るさまが幸せそうにも見えて、呆気にとられて見つめる以外にない。いやなんか、凄いな。演技力。
「驚いて何も言えない感じ?」
「えっ、あ、いや……なんか、ちょっと、」
「なんかちょっと、何?」
「あー……いや、なんでも、ない」
 さすがに見惚れてたとは言えそうにない。言葉を濁せば、まぁいいけどと相手も流してくれる。
「いきなり先生はもう俺のもの、なんて言われたって、実感湧かないよね。でもこれからじっくり、教えてあげるから」
 とりあえず次回もちゃんと教えてに来てねと言われて、どうやらそこで、本日の撮影は終了したらしい。
 ただ今回はまた後日続きの撮影が有るので、お疲れさまでしたと帰ってしまっていいわけではさそうだ。私服に着替えて帰る用意はしてていいけど待っててと言われて、控室らしき部屋でぼんやりと彼かスタッフが来るのを待っている。
 なんか色々有りすぎて疲れた。色々あったと言うよりは、聞かされているストーリー通りに進んでいかない撮影に、だいぶ頭の中が混乱気味らしい。
「お疲れ様。疲れちゃった?」
 やがてドアが軽く叩かれて、現れたのはスタッフではなく彼自身だった。
「んー、頭が疲れてる、って感じがする」
 散々お尻を弄られはしたけれど、玩具で何度もイカされたわけでも、抱かれたわけでもなく、ただ一度抜き合っただけなので、体の疲れはそんなでもない。
「頭が?」
「俺が演技できないと思って、わざと教えてないこと、いっぱいあるよね?」
「うん。驚いたり戸惑ったり、素の反応貰ってる部分は多いね」
 どうやら相手の思惑通りの反応を返せているようで、凄く助かってると言われてしまえば、下手くそな棒読み演技とかを晒すよりマシかなと思ってしまうのだけど。
「まぁ、それなら、いいんだけど」
「疲れさせちゃってごめんね。多分次も似たような撮影になると思うけど、ああ、でも、今回ほどシーンが前後する撮影はないと思う」
「そうなんだ」
 監督という立場上、相手も色々と忙しいらしい。聞きたいことや確かめたいことが色々とあったような気がするのに、気持ちや思考を整理しながら、雑談交えてゆっくりお喋りなんてしている余裕はなかった。
 結局、次回の大まかな確認だけで解散となってしまったのが、少しばかり残念だった。

続きました→

 
 
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