しかし結局自分たちの今後についてを語る時間的余裕はなかった。編集された映像を見ながら体を慣らす予習時間だって、今日の撮影のスケジュールに最初からきっちり組み込まれていたもので、要するに予定していた撮影開始時刻が来てしまったからだ。
撮影は、今日はこれを使うねという、彼の宣言からスタートした。彼の掲げる、これから使われる予定のオモチャを前に、実物はかなりエグいなぁと思う。
過激になっていく開発案の中から、これくらいならと許可したのは、結腸開発用の長いアナルビーズを使われる事で、もちろん過去にそれに類似するものを使われた経験はない。というよりも、過去に経験のないオモチャを使わせて欲しい、というのが一番大きな目的らしくて、どうやら本気で戸惑ったり不安がったりする所を撮影したいようだった。
他に上がっていたのが尿道用のブジーだのプラグだのだったり、電気刺激を送るようの機器だったりで、同じ未経験の品にしても、それらはあまりに想像がつかなすぎてとても許可できなかったという経緯がある。
結腸用のオモチャも複数候補があったなかで、一番無難そうなものをチョイスしたとはいえ、やはり写真ではそのサイズ感がわかりにくい。
「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫」
優しく言い募る相手は満足気な顔をしているから、実物を前に若干怯んでしまっている事そのものが、やはり期待通りの反応なんだろう。
「今まで使ってきたのだって、ヤダヤダ言いながらもちゃんと気持ちよくなれてたでしょ。今まで通り、これでも感じられるように、じっくり慣らしてあげるからさ。奥の方、感じられるようになったら、凄いらしいよ」
楽しみだねと笑ってみせる顔は可愛らしいけれど、でもあの映像を見ているからか、どこか無理のある作り笑いにも見えてしまう。
「さ、わかったらいつも通りベッド行って、お尻だして。これ見て不安になっちゃったのかもだけど、怖がって体強張らせてもいいことないって、もう知ってるはずでしょ。どうせ拒否権なんかないんだから、俺に全部任せて、リラックスして体預けときなって。ちゃんと気持ちよくしてあげるから、余計なことは考えなくっていんだよ」
顔は笑っているのに、辛そうだなと思う。予習時間に弄られてはいたものの、撮影は始まったばかりで、焦らされきっても居ないからだろう。はっきりと、目の前の男の子が、この関係に苦しんでいるのがわかってしまう。
こんなことをして、好きになって貰えるはずがないと思っているのだ。そのくせ、体だけを手に入れる事に、きっと虚しさを感じても居る。
「どうしたの? そんなにこれ、使われたくない?」
黙ったまま相手を見つめすぎていた。突っ立ったまま動かないこちらに、相手が少し苛立ちを見せる。
こちらが反応しないからと言って、撮影が中断される様子はない。まぁもともと、どうせ編集するのだからカメラは回しておけ、というタイプなのは知っているけれど。
だから編集されてしまう前提で、こちらの気持ちを吐露してみる。だってさっき、好きになってもいいって、言われたわけだし。
「そんなの入れられるの、怖い、とは思ってるけど、でも、使わないでって、言いたいわけじゃなくて」
「まぁヤダとか言われたところで、使うしね」
「うん。知ってる」
「なら素直にベッドに行けない理由は?」
「それは、そんなとこまで、感じるようにならなきゃいけない理由、言って欲しくて。だって、この前言われたけど、俺のお尻、多分もう、ちんこ入るよ」
「それは、早く俺に抱かれたい、ってこと?」
後半部分に反応されてしまったが、そうじゃない。さっき言っていた、彼との行為でのみ満たされる、そこらの男に抱いて貰っても満足できない体にしたい的な、独占欲丸出しな言葉を引き出したかったのに。
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