可愛いが好きで何が悪い21

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 躊躇いがないにもほどがある。元カノに口でされた過去はなく、フェラなんて知識でしか知らない行為だけど、こんなに勢いよくかぶり付くようなものじゃ無い気がする。
 いやでもこちらの態度を窺ってゆっくり顔を近づけられたら、必死で逃げただろうとも思うから、この強引さと勢いは必要だったのかも知れない。
 だって、既に咥えられてしまったこの状況では、相手を引かせる方法がない。下手な衝撃を与えて自身にダメージが来るのを恐れる気持ちがあるし、気持ちの良さに思考が霞んで、抵抗する力も気力も奪っていく。
 積極的な相手に流されて、気持ちよくなっての言葉通り、気持ちよくなってしまえばいい。
 そう思う気持ちは大きいのに、わずかに残る理性が、やめろと口から言葉をこぼす。
「ぁ、うぅ、……や、だ、……きたなっ」
 最後に風呂を使ったのは昨夜の夜で、それからどれくらい時間が経っているかも、その間に何回用を足したかも、だいたいわかっている。もしも自分がする側なら、たとえ相手が女性でも恋人でも躊躇うと思う。
「へーき。俺は、気にならない」
「ば、っか、やろ……おれが、気に、する、あ、ああっ」
 余計なことを気にするなとでも言うみたいに、先端に吸い付かれながら竿部分を強めに扱かれて気持ちがいい。得たことのない快感に、あっさりと射精感が募っていく。
 こんなにも簡単に相手のテクにイカされてしまう、という情けない気持ちを、こみ上げる衝動が脇へと押し流してしまう。
「あ、あっ、だめ、だ、……も、いく、いくからっ、くち、離せ、ってぇ」
 それでも最後の抵抗とばかりに、必死に訴えた。
 どうせ無視されるんだろうと思ったのに、とうとう精を吐き出すその直前になって、相手がパッと頭を上げてこちらの顔を覗き込んでくる。
「ひっ」
 口元を汚したプリンセスという暴力的な絵面に悲鳴が漏れた。
 吐き出して終わるはずだった射精感が、あまりの驚きと衝撃に一瞬で散ってしまう。完全にイキそこねて、いっそ苦しい。
「うぅっっ……」
「ごめん、イキそこねちゃった?」
 呻けば相手にも状況は伝わったらしい。
「でもやっぱ、イク顔見ときたくて」
「ばっか、も、ほんと、お前」
「わざとじゃないよ。でも、もうちょっと触ってられるのは嬉しい、かな。せっかくの気持ちぃ顔、いっぱい見ておきたいもん」
 悲しみを全く感じない訳では無いが、それでもうっとりとした笑顔に、胸の何処かで安堵している。でも本当に見たいのは、もっと幸せそうに笑う笑顔だ。
 汚れた口元に手を伸ばしてその汚れを拭った後、自ら顔を近づけた。
「え……」
 かすかに漏れた戸惑いの声を奪うように口付けて、驚きに緩んだ相手の口内にいささか乱雑に舌を突き刺す。
「んんっ」
 それは反射だったのかも知れないが、差し込んだ舌を柔く喰まれながら吸われて、腰に痺れるような快感が走った。そしてそれに気づかれた後は、相手主導でそのまま濃厚なキスを続けてくれる。
 再度、射精感が募るのはすぐだった。
「ん、んんっ」
 イク顔が見たいと言っていたくせに、イきそうになって相手の体を押してもキスは中断されなかった。それどころか、絡め取られた舌を強く吸われて体が震える。
「んんんんっっ」
 体の中に溜まっていた気持ちいいがドクドクと吐き出されていくのとともに、体の力が抜けていく。ぐったりと背後の壁に寄りかかれば、相手の顔が追ってくることはなかった。
 近すぎて見えなかった相手の顔がやっと見える。目が合えば、相手が嬉しそうに破顔したから、心底安心して目を閉じた。
 眠るつもりはなかったが、相手は寝落ちたと思ったのか、一人で何やらごそごそと動く気配がする。どうやら後始末をしているらしい。
「汚れたとこ、拭くね」
 囁くような小声で告げられた後、性器に触れられドキリと心臓が跳ねた。けれど相手は、こちらが本気で寝落ちているわけではないことに気づかなかったらしい。
 触れられた最初の段階で目を開いてしまえばよかったのかも知れない。しかしわずかに躊躇ってしまったのが仇となって、結局そのまま汚れた性器を相手の手で拭き清められることになった。
 正直恥ずかしすぎたが、だからこそ途中で、実は起きてましたなんて知られるわけにいかなかった。
「あ、どうしよ。一人じゃ脱げない」
 一通りこちらの衣服を整え終えた後、今度はそんな呟きが聞こえてくる。
 まさか姉たちを呼び戻したりしないよなと焦ったが、まぁ起きてからでいいかと、どうやらこちらが目覚めるのを待つつもりらしくホッとする。しかし次の言葉には黙って寝たフリが続けられなかった。
「シミにならないといいけど」
「はぁ?」
「うわっ、えっ、起きて……?」
「シミってなんのだ」
「あー……ちょっと、受け止めるの失敗しちゃって」
 キスに夢中になってたのもあってとゴニョゴニョと言い募るそれは、多分、間違いなく、こちらが放った精液ってことなんだろう。
 裂かれたドレスの1枚はウエディングドレスだったけれど、彼が今着ているドレスにはそこまで白い布は使われていない。カラードレスの方が再利用できる布が多かったようで、そちらが基調になった青系のドレスだ。そんなドレスに、精液の白い汚れが残ったらと思うとゾッとする。
「よし脱げ。手伝う」
 一大事だと慌てるこちらに、相手はなんだか微妙な顔をしていたけれど、それでも大人しく脱がされていく。
 精液の汚れの落とし方を二人で調べて一応その通りに染み抜きをしたし、もともと今日の試着の後はネット経由でドレスの長期保存が出来るタイプのクリーニングに出す予定だったというので、多分ドレスは大丈夫だろう。

続きました→

 
 
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