可愛いが好きで何が悪い42

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 安堵と喜びを漏らしながら、良かったと言って足の間に収まった相手が、挿れるねとペニスの先端を穴へと押し当ててくる。
「あ、その前にキス、していい?」
 多分、触れたペニスの感触に身構えたのを察知したんだろう。へにゃっと笑いながら、許可される前提で前かがみに近寄ってくる顔に向かって手を伸ばす。
 正確には顔ではなく肩に向かって伸びた手は、無事に相手の肩を捉えた。引き寄せるのと同時に軽く上体を起こして、こちらからも顔を寄せていく。
 相手とのキスは気持ちがいい。与えられる快感に任せて体の力を抜いていけば、あっさり再度布団に背中が着いた。
「大丈夫だから、そのままで、ね」
 唇は離れてしまったが、まだかなり近い位置から見つめられつつ、甘やかな声が身構えるなと囁く。わかったと頷いて、身構える代わりになるべく深めの呼吸を心がけた。
 見つめ合う瞳の中、相手から愛しさが溢れて「んふふ」と小さな笑いがこぼれ落ちるのを聞きながら、相手の熱を体の中に受け入れていく。
「んんっ」
 大丈夫と言われた通り、広げられる穴に痛みは感じない。ただ指とは違う質感と質量と熱さに、とうとう相手のペニスを受け入れているのだという実感が伴って、ぞわりと肌が粟立っていく。
 散々しつこく慣らされた穴は、どうやらちゃんと快感を拾っていた。
「はぁ、……やっばい」
 ぬぽっと一番太い部分が入り込むのを感じれば、相手がそんなことを呟きながら熱い息を吐く。
「なに、が?」
「気持ち良すぎて、やばい。気持ちぃのと、嬉しいのとで、これ、持たない、かも」
 痛いとか苦しいとかはないかと聞かれて、むしろちゃんと気持ちいいと答えれば、そのままぐぐっとペニスが奥に潜り込んできて思わず呻いた。気持ちいいに反応してか、若干質量が増したような気もする。
「ううっ」
「ごめ、我慢できなくて」
 ほんとすごく気持ちよくてどうしよう、などと言いながら、また興奮しきって泣きそうな顔を晒している。今度は素直に、可愛いなと思ってしまった。
 バッチリ決めたメイクは汗でだいぶ崩れてしまったけれど。気持ちよくて幸せでたまらないと、とろけるような笑顔を見せているわけでもないけど。
 あちこちで揺れる髪飾りは彼にとても似合っていたし、気持ちよくて我慢ができないと泣きそうになった顔だって、間違いなく可愛いくて、愛しい。
 愛しさが、胸の奥から溢れてくる。
「んふっ」
「もういくらでも笑ってくれていいよ」
 ここまできてこんな情けない姿晒してごめんねと謝られてしまったので、可愛いからいいよと言っておく。まぁ、信じて無さそうだったけど。なんだかもう、愛しい気持ちは過ぎれば何でも可愛い、という境地に至っているんだけど、それを説明してやる気はさすがにない。
「てか、そんな気持ちぃなら先イッてもいいけど」
「さすがにそれは、って、ちょ、余計なことしないで。ちょ、もぅ、煽んないで!!」
 軽く腰を揺すってみれば、慌てた様子で相手が腰を掴んで止めてしまう。なので尻の穴を意識しながら力を込めたり弱めたりを繰り返してみれば、相手が情けない顔でやめてと懇願してくるので更に笑ってしまう。
 経験豊富なはずの相手が、こんなにも余裕をなくすとは思っていなかった。
「やっとやっと繋がれたんだから、もうちょっと堪能する時間ちょうだいよ。てかこんな気持ちぃとか聞いてないんだけど」
 はぁあと大きく息を吐き出すが、大げさなため息なのか、体の熱を少しでも吐き出そうとしてるのか、いまいち判別し難い。
「まぁ、俺も想像してたよりは全然苦痛感じてないどころか気持ちぃまであるけど、どう考えたって、お前がしつこく慣らした成果ってやつだろ」
「アナルセックス嵌るやついるのわかる気持ちよさ、ってのも間違いじゃないんだけど、したくてしたくてしょうがなかった相手と、今セックスしてるんだ、って高揚感もめちゃくちゃやばい」
 まぁそれもわからなくはない。したくてしたくて、とまでは思っていなかったけれど、慣らす段階で結構焦らされたせいか、ようやく繋がれたという安堵と喜びで気持ちが高揚しているのを感じている。それに加えて、相手がこんなにも余裕をなくして、気持ちがいいとか嬉しいとか言って興奮しきっているのを見せられているのだ。
 興奮は間違いなく自分だってしている。ただ、相手の方がより感じているのを見せられて、自分が気持ちよくなりたいよりも、もっと相手が気持ちよくなるところが見たい気持ちのが膨らんでいる気もする。
 この場合、相手が気持ちよくなるには自分の尻穴を使われることを意味するわけだけど、ここまでで酷い苦痛は感じてないので、多分、大丈夫なはず。ワンチャン、自分も一緒に気持ちよくなれるかもしれないし。
「お前が俺で気持ちよくイクとこ、早く見たい」
「ん?」
「2回戦無理なら後で手ぇ貸してくれればいいし」
 言いながら、緩んでいた手を振り切ってまた腰を揺する。
「にかいせん……」
「とりあえず、今は俺を気持ちよくしようとか考えなくていいから」
 お前がイクとこ見せてと再度ねだれば、なんでそんな事言って煽るのと、やっぱり泣きそうな顔で文句を言われたけれど。でも今度は腰を掴まれ止められるのではなく、足を抱えて更に腰を押し出してくる。
「ぐ、ぅっ」
 さすがに奥の方まで突かれるのは圧迫感で苦しかった。ほんのりと鈍い痛みもある。ただ、やっぱ待て、などと言う気にはちっともならない。
「ぁ、ごめっ」
「いーから。もっと、気持ちくなれよ」
「ううっ、こんな時までカッコイイ〜」
 ごめんもうホント我慢できない。すぐイクからちょっとだけ我慢して。でも早漏とか言わないでね。などと余計なことをベラベラと喋りながらも、だんだんと腰の動きが早くなる。
「ぁ、ぁっ、あっ」
 突かれる衝撃に合わせて、閉じきれない口から音が漏れていく。幸い、先ほど感じた鈍い痛みも、もうあまり感じない。
 もしかしたら、先程上げてしまった苦しげな声に、相手が加減してくれているのかも知れない。気にしなくっていいのに。
「ん、ね、ちょっとは気持ちぃ? いいの? 平気? 痛くない?」
 やはりこちらの様子を気にせずにはいられないらしい。だがその問いには答えず、突かれて漏れる声に混ぜて笑ってやった。
「ひどっ、もう、もうっ」
 不満げに頬を膨らませてみせるのですら、可愛く思える。ぺらぺらとあれこれ喋りながらも、結局ずっと腰の動きが止まらないのも、この快感に抗えないのが手に取るようにわかってなんとも愛おしい。
「かわいいから、だいじょうぶ」
「意味分かんないんだけど!?」
「お前がイクとこ、みたい」
 きっとめちゃくちゃ可愛い。そっと囁いた言葉は、きっと相手にも聞こえていただろう。もう、と再度不満げに漏らされた声が、なんだかさっきよりも甘く聞こえる。
「あっ、あっ、そんな言われたら、イク、いっちゃう」
 意図的にだろうか。しつこく可愛いと繰り返してしまったし、先程よりも明らかに高めに聞こえる声は、彼なりのサービスなのかも知れない。
 抱かれているのに、そんな声でイクと繰り返されたら、なんだかこちらが抱いているような錯覚さえしてしまいそうだ。
 不満げに膨らんでいた頬ももうすっかり引っ込んで、ひたすら快感に溺れる緩んだ顔をしている。
「ははっ、やっぱほんと、かぁわいい」
 こちらだって突かれて揺すられて喘いでいるのに、その合間に、口から気持ちと言葉があふれていく。愛しさで半分以上笑っていたと思うが、視線が絡んでも相手に不満そうな表情は浮かばなかった。それどころか、快感に浸った顔のまま、目だけが愛しげにこちらを見て細められる。
「だいすき」
「俺も、すき」
 伝わってくる愛しさに頷いて見せれば、その口からはもっと直球に想いがこぼれてきた。こちらも躊躇うことなく応じてやれば、今度こそ、とろけるみたいな笑顔になる。
「ああ、いいな、それ」
 その笑顔にうっとりと見惚れてしまえば、とうとう相手に限界が訪れたらしい。
「も、ほんと、イッちゃう」
「ああ」
 イケよと促せば、小さく頷いてぐぐっと腰を押し付けてくる。
「あ、でるっ、んんっっ」
 相手が小さく震えて、腹の中ではペニスが脈打っている。
「めちゃくちゃ気持ちよかったけど、想定してたのとなんか全然違うセックスした……」
 一息ついた後、呆然とそんなことを呟くように漏らした相手には、やっぱり笑うしかなかった。

続きました→

 
 
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「可愛いが好きで何が悪い42」への2件のフィードバック

  1. レイさんこんにちは。
    なんとなく、連載中はお邪魔になってしまうかも…と思ってコメントしてなかったのですが、
    ツイート(あ、もうツイートじゃないですね…)を拝見して、
    黙っていられなくなりすっ飛んできました(笑)

    今回のお話、というか今回の2人、ほんとに大好きです!
    攻めがひたすらかわいくて受けがともかくカッコいい……新たな性癖が目覚めた感があります(笑)。
    2人がようやく身体を繋げた場面、最高でした…!
    処女喪失の場面でも攻めくんを優先する、「こんな時までカッコイイ」受けくんが素敵すぎて、ニヤニヤが止まりませんでした(笑)。

    週3度の更新が待ち遠しく、でも最近はそろそろエンドが近づいているのかな…と思うと、
    まだ連載続けてくださっているのに、早くも寂しくなってしまっておりました…

    レイさんは長期にわたる執筆で大変かと思いますが、
    連載期間が長いのは読者としてはむしろうれしいですし、
    エンドが遠のく? 大歓迎! と思ってしまいました(すみません…笑)。
    そのくらい大好きなお話です。

    エンドまで楽しみにしています。
    素敵なお話いつも本当にありがとうございます!
    暑いですがどうかご自愛ください〜!

  2. クロさん、こんにちは。
    更新追って読んでくださってる方々がいるのはあちこち(旧ツイッターもですがブログ村などのランキング系とか)から感じ取れていますし、いいねや応援ポチ貰ったりもしてるので、そういうのが本当に書き続ける上での励みになってるんですよね。
    しかも今回は気づいたら9万文字も書いてて、なのに思いつきで玩具プレイに寄り道な描写をしてしまったので、これまだもうちょっと続きそうなんですけどよろしくお願いします、って気持ちで呟いてみました。
    それに即反応してコメント書きに駆けつけてくださって、本当にありがとうございます。

    2話目で受けくんいいねってコメントくださいましたけど、その後も受けくんのカッコイイイメージが保ててるようで良かったです。
    一応最初に女装攻め予定って書いてますし、追って読んでくださってる方たちの多くは、私がちゃんとしたプロットとか作らず思いつきと勢いだけで書き綴ってるのを知ってるはず(甘え)と思ってはいますが、ここまで精神的に受け攻め逆転するつもりはなかったので、追って読んでくださってる方たちの許容範囲広いな〜ありがたいな〜とか思ってしまうわけですが、新たな性癖が目覚めたとまで言わせてしまうとは思わず……
    いやでも男前受けっていいですよね!  可愛い攻めもいいですよね!(ここぞとばかりに布教)
    今回の2人を大好きって言ってもらえてとても嬉しいです。
    受けくんが男前過ぎて、その視点を通すせいで攻めくんが可愛い可愛いになってますけど、この後、女装解除しての2戦目なので、ちょっとは攻めくんのカッコイイとこも見れるといいな……と思ってはいます。
    素のままでも可愛いになる可能性もあるので、ほんと、書いてみないとどうなるかわからないんですけども。

    長くなっても楽しく読んでるよ! のお言葉、本当に救われます。
    読者様にこうやって甘やかされている……笑
    2戦目にどれくらい掛かるかわかりませんが、そう言って貰ったからには、焦って端折って終わらせずにそれなりにしっかり描写頑張ろうと思います。
    最後までおつきあい、よろしくお願いします〜

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