兄弟ごっこを終わりにした夜

兄弟ごっこを終わりにした日の続きです

 十八の誕生日に告白すると決めていたらしい弟は、告白後は積極的に関係を深めていくとも決めていたらしい。
 もうじゅうぶん待ったからという彼の言い分もわからなくはない。ただ、いつかは兄弟という一線を超えるだろう予感は随分前からあったものの、それはもう少し先だと思っていたし、恋人という立場を得て一気に距離を詰めてこようとする相手に、こちらは思いっきり圧倒された上に尻込みしていた。
 十八を超えたとは言え、高校生相手に、しかも半分は血が繋がっている弟相手に、彼の保護者である自分が手を出していいものか、という躊躇いはどうしたって大きい。
 だから本当なら、枕片手に一緒に寝たいと押しかけてきた弟を、部屋に迎え入れてはいけない。追い返すべきなんだろうと頭ではわかっていた。
「恋人になったんだから、これからは毎日一緒に寝て。とまで言わないから、休みの前の日くらい、いいだろ」
「お前は俺の理性を試したいの?」
「そうだよ。だから、その気になったらぜひ襲って」
「そういうのはまだダメって、昼間も言ったろ」
 昼間、ねだられて、軽く触れるだけのキスは与えた。相手は不満そうだったけれど、互いの口内を探り合うようなキスをしてしまったら、理性が持ちそうにないからとそれ以上は許さなかった。その時にも一度、話はしたのだ。
 恋人になったからって、即セックスまでする関係にはなれないよと、こちらの気持ちも事情も話して聞かせた。したい気持ちがないわけじゃないことも教えて、あんまり煽るなよって、言ったはずなんだけど。
「それは聞いたけど。でも恋人になったんだって思えるようなこと、もっとしたい」
 そういう気持ちはないのかと問いたげな視線に、ないわけないだろと思いながらも口には出さず、代りに諦めるみたいな溜め息を一つ。
「わかった。いいよ。一緒に寝よう」
 やったと零しながら小さくガッツポーズを決める相手の子供っぽさに、どこかホッとしてしまうのは、相手のことをまだまだ子供だと思うことで、自分の中の理性を支えたいからなのかも知れない。
 結局、寝るまででいいから手を繋いでというお願いも聞き入れて、並んでベッドに横になりながら手を握る。子供の手じゃないけれど子供みたいな体温に、また少しホッとしながら、さっさと寝てしまえと目を閉じた。
 頭をもたげかける欲望は封じ込めて、何でもない振りをして、むりやり意識を眠りへと落としていく。

 擽ったいような心地よいようなふわふわした気持ちと、妙な暑さと息苦しさに意識が浮上する。
「ぁ……っ……んっ……」
 最初、それが自分の口からこぼれているとは、わからなかった。そもそも、今夜は一人で寝ていたわけじゃないことすら、すぐには思い出せなかった。
 だんだんと寝る直前のやりとりを思い出して、寝ている自分の体を彼がまさぐっているのだと言うことに気づいた途端、一気に覚醒する。
 相手の手を払い除けて、勢いよく上体を起こし、思いっきり睨みつけてやる。とはいっても部屋の中は暗いので、こちらの怒りは伝わっていないだろう。自分だって、相手もこちらへ顔を向けている程度のことはわかるものの、さすがにその表情まではわからないから、彼が今どんな感情を抱いているかなんてわからない。
「どういうつもりだ?」
 仕方なく言葉で彼に問いかける。
「性感開発?」
「は?」
「起こすつもりはなかったんだけど、加減がわからなくて。気持ち良く寝てたとこ、起こしたことは、ゴメン」
「してたことに対する謝罪はないの? てか性感開発っつった?」
「性感開発って言ったし、それへの謝罪はない、かな」
「なんで!?」
「だって初めてする時、少しでもキモチイイ方がいいと思って」
 いつかはする気があるんだろと続いた言葉に違和感が拭えない。
「というのは建前で、あんまりあどけない寝顔晒されて、ちょっとこっちの理性が飛んだ」
 彼は間違いなく日本語を話しているのに、何を言われているのかやっぱり良くわからなかった。
「わかってないな」
 同じように相手も上体を起こしたかと思うと、ぐっと顔を寄せてくる。酷く真剣な顔に覗き込まれてのけぞれば、肩を押されてそのままベッドに仰向けに倒れ込む。焦るばっかりで何が起きたのか理解が追いつかないのに、相手はやっぱりまた間近にこちらを見下ろしている。
「高校生の弟に手を出すの躊躇うってなら、俺が襲うのもありだよなって、話」
「は?」
「自分が抱かれる側になる可能性、考えたことなかったろ。でも俺も男なんで、十も年上の男でも、血のつながる兄でも、好きな相手を抱きたいって気持ちもそれなりにある」
「ええっ!?」
「抱く気で居るみたいだったから、それなら抱かれる側でいいと思ってたけど、思ったより理性強そうで簡単には誘われてくれないのわかったから、待てないし、抱きたい気持ちだってあるわけだし、じゃあ体から落としてくのもありかなと」
 気持ちよさそうな声上げてたし素質ありそう、だなんて言葉、もちろん受け止められるわけがない。待て待て待てと騒いでも、いっこうに体の上からどいてくれない相手の重みに、焦りばかりが加速していく。

有坂レイへの3つの恋のお題:あどけない寝顔/はじけとんだ理性/何でもない振りをして
https://shindanmaker.com/12556

 
 
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