弟の親友がヤバイ5

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 なかなか寝付けず、翌日も寝坊する気満々だった。弟に手を出したりしないという彼の言葉に嘘はなかったと思うし、また一日中二人の勉強風景を見張り続ける気はさすがにない。
 しかし乱暴に部屋のドアが開けられる音で、眠りに落ちたばかりの意識が浮上した。
 次いでドカドカと近づいてくる、やはり乱雑な足音。寝ぼけた頭でも、それが弟のものだというのはわかっていた。しかも多分何かを怒っている。
「おいコラ、クソ兄貴」
 掛布をバサリと剥がされ、寒っと思う間もなく、ドスのきいた声と弟の体重が降ってくる。
「起きろ」
 言われなくてもさすがにもう起きている。目を開けて、腰をまたいで座る弟を見上げれば、やはり眉を吊り上げた顔でこちらを見下ろしている。まぁ怒った顔も怖いってよりは可愛いんですけど。
「おはよう。で、どうした?」
「どうしたじゃない。兄さん、あいつに何言ったの?」
「あいつ?」
「とぼけんな。俺の大事な親友泣かせて、何やってんのあんた」
「あー……」
 泣いたのかと、泣きそうになっていた顔を思い出す。彼の方から弟に泣きついたとは思わないしちょっと想像がつかないが、それでも弟の前では泣くらしい。
「あーじゃない。しかも自分はあいつ振っといて、弟の俺とは付き合わないでって約束させたとか、ホント意味分かんないんだけど」
「は?」
「だからとぼけんなって。俺と付き合うなって言ったんでしょ?」
 なんだろうこの言い方。
 確かに弟に手は出さないという言葉は聞いた。弟に手を出されるくらいならと、この体を好きにさせようともした。けれど約束させたって言うのとはちょっと違わないか?
 いやいや問題はそこじゃない。
「お前らって親友なんだよな?」
「そーだけど何か?」
「でもお前は、あいつを恋愛的な意味で好きだったりすんの? 好き好き言ってたらしいけど、それってお友達としてじゃなく?」
「そーだよ」
 まさかの肯定に、さすがに驚きを隠せない。目を見開いて弟を見つめれば、さすがにバツが悪そうで、自分を見つめる視線が逸れた。
「でも大事な親友だから、あいつの恋を応援したい気持ちだって本物だったよ」
「んんっ?」
 またしてもの違和感に、なんだか話が食い違っているようだと思った。
「おいちょっとお前降りて。でもって、ちゃんと話、しよう。てかあいつは?」
 元凶の相手も呼んでしっかり話そうと思ったのに、弟はまた少し眉を吊り上げる。
「帰った。目ぇ真っ赤にして起きてきて、さすがに今日は勉強できないからゴメンって」
「そうか……」
「てかホント、何したの。何言ったの。どんだけ酷い言葉投げつけたらあんな目になるの。一晩中泣いてたかもとか思ったら、いくら兄さんでもちょっと許せそうにないんだけど」
 ああ、別に弟も泣き顔を見たわけではないのか。そして過去はともかく、昨夜酷い真似をされていたのはどちらかというと自分のほうだ。
「お前さ、俺とあいつのこと、どれくらい知ってる? 俺が昔あいつにちょっと酷いことして、恨まれてるって知ってた?」
「そりゃまぁいたいけな中学生に手コキだけとはいえ手ぇ出したうえ、恋までさせちゃったら、多少恨まれてても仕方無くない?」
「待て待て待て。てかホント一回降りて。お前の話ゆっくり聞きたい。俺の認識とメチャクチャずれてる」
 一つ大きなため息を吐き出した後、弟はゆっくりとベッドを降りた。
 ようやく体を起こしたが、寝足りないのは明らかでやはり少し頭が重い。
「先リビング行ってちょっと待ってて」
「寝直したら承知しないけど」
「わかってる。顔洗ったら行くから」
 もう一つため息を吐いた弟は、待ってるからねと念を押して部屋を出て行った。

続きました→

 
 
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「弟の親友がヤバイ5」への4件のフィードバック

  1. わー、修羅場っ♡  ・・とか思ったのに(こら)。
    初登場の弟くん、なんだか色々違ってるような。 会話のあちこちにあれ? あれれー??

    親友クンの中でこの兄弟の立ち位置が移動してる気がするなぁ。
    で、今は迷路のどのあたりにいるんでしょうか? あとどれくらいで脱出出来ます?

    おにーさんのテイソウの危機は・・・?(笑)

  2. mさん、コメントありがとうございます(^O^)
    なんか混乱させてしまっているようですみません。

    多分後2~3話位でまとまるんじゃないかなと思ってますが、なるべく短くと思いながらものびのびになってしまうこともあるので、飽くまでも希望ではそれくらいで終わりたい感じです。

    ネタバレってほどではないと思うので、3人の関係というか想いを少し書いてみました。
    弟は兄さん大好き(兄弟愛)だけど親友のことはもっと好き(恋愛と友情MIX葛藤)です。
    親友はずっと兄さんに拗れまくった片思い(恋愛)してて弟のことは理解者と思ってかなり信頼してます。兄を好きな男なのにそれでも好きだよ~(友情と思ってる)って言ってくれるの有り難いなと思ってました。
    兄さん(主)は弟大好きだけどそれも兄弟愛の範疇(過保護な自覚はあるけど性愛対象でない)で、兄さんの過去の恋人に男はいません。弟は全部は知らないけど彼女が居たことあるのは知ってて、今フリーなことも知ってます。
    弟の立ち位置は完全に親友よりで、今回の計画にもがっつり絡んでます。主が気づいてないだけでヤバイのは親友だけじゃないです。
    弟の気持ちとかどう絡んでたかは次回更新分でなるべく書ききれるよう頑張ります~

  3. 三角関係の説明(解説?)ありがとうございます☆ 了解しましたっ。
    そっかー、親友クン、お兄さんが好きだったのね。。
    キミにはこっそり’ひね(老成)生姜 ――新ショウガの種になるショウガや、貯蔵して翌年出回る根ショウガのこと―― くん’とニックネームをつけてあげよう(笑)。
    拗れても、年数が経っても好きだったんだもんね。

    そして弟くん、複雑ながらも応援してるのか。 君にもいつか春が来るといいなあ。

    お兄さん、包囲網が敷かれてますよ―! (遠くから忠告。ププp

  4. そうなんですよ。親友は兄が好きなんですが色々拗らせちゃってます。
    そして兄は身内の手引で包囲網敷かれちゃってます(笑)

    そういや兄と親友でまとまる予定ですが、弟のその後とかは一切考えてませんでした。
    そうですね。弟くんにもいつかステキな恋人が出来て欲しいですよね。

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