無い物ねだりでままならない18

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 今できる範囲で、先輩を気持ちよくしてあげるしかない。というわけで、慎重にゆっくり、けれど確実に、先輩のイイ場所を狙って腰を振る。
「ん、……ん……ぁ……っ」
 恥ずかしそうに顔を横に背けた先輩の口から、堪えきれない喘ぎが控えめに漏れていた。激しく突き上げて、もっとはっきりとした嬌声が聞きたい気持ちもあるが、どうせまた途中で力尽きる可能性のが高い。そう思うと躊躇ってしまうし、緩やかな刺激にトロトロに蕩けた顔を晒す先輩が可愛いので、今はこの顔を堪能しておこうと思う。といっても、見えるのはずっと横顔だけなんだけど。
「俺のちんこで気持ちぃ先輩、めっちゃ可愛い、す。ん、ふふっ、すげぇ、嬉しぃ」
 先輩は蕩けた顔をしているけれど、こちらは発する言葉が随分と蕩けている。その自覚があるから、胸の深いところから溢れるみたいに、小さな笑いが治まらない。
「うぅっ……」
「ね、俺のことも、もっと見て?」
「むり、だっ」
「そう言わずに。顔、こっち、向けてくだいよ」
 嫌だと言うように、先輩が首を横に振る。正面から、その蕩けた顔をもっとじっくり見つめたいのに。多分それがわかっているから、嫌がっているんだろう。
「だーめ。手は離しません」
 ぐいと繋いだ手が引かれる感覚に、逆らうように引き戻してギュッと握りこんでやる。
 両手とも指を絡ませるように繋いでしまったから、どんなに恥ずかしくても、手や腕を使って顔を隠すことが出来ないのだ。もちろん、先輩が本気を出せば、繋いだ手なんて簡単に振り解けてしまうんだけど。でも、恋人繋ぎ、とわざわざ宣言して握った手を、先輩は力技で振り解きには来ていない。
 そういうところも可愛くて、やっぱり幸せが溢れてくる。
 先輩を押さえつけて無理やり気持ちよくしたり、強引に顔を向けさせることは出来ないけれど、でも言葉や態度で、先輩の行動を多少は制限できている。そうすることを、許されている。恥ずかしくて隠れたい気持ちを抑えて、先輩自ら晒してくれている。
「あー、先輩とちゅーしたい。上からも下からも先輩の中入り込んで、先輩の中、全部俺でいっぱいにしたい」
 言いながら、繋いだ片手を口元に引き寄せて、代わりとばかりに人差し指の先にちゅっと吸い付いた。
「舌絡ませて、……ん、きつく吸って……」
 人差し指に舌を絡ませ存分に舐め上げた後、少し深くまで咥えてちゅうっとキツく吸い上げる。
「んんっ」
 きゅっとお尻が締まるのに気を良くして、残りの指も順にペロペロチュッチュと舐め吸っていけば、その度毎に、きゅうきゅうとお尻が締まって気持ちがいい。
「ん、ぁ……ぁっ……」
「っはぁ、気持ちぃ。けど、全然足りない、です。いつか絶対、キスしながらズコズコ続けられるようになるんで、期待して待っててください、ね」
 我ながらバカな宣言をしていると思うが、バカかと呟くような声に批判の色は殆どない。
「本気ですよ、俺。先輩だって、指ちゅーちゅーされるより、舌吸われて、弱い上顎舐められたくないです? それと一緒に前立腺ゴリゴリ擦られて、って考えたら興奮しません?」
 言われて想像しただろうか。今までは肛門あたりがキュッと締まる感じだったのに、腸内がぐにゅっと蠢く感じがした。
「ん、はは、お尻の中、今すごいえっちに動きましたよ。はぁ、俺に口もお尻も同時に気持ちよくされてイッちゃう先輩、想像するだけでヤバい」
 そんな想像をしてしまったせいか、さすがに限界が近い。まずは先輩が気持ちよくなるように、という気持ちから、自分が気持ちよくなる方へ意識が向かってしまう。
「あ、あっ、あっ、ん、んんっ」
 自身が果てるための動きに変わって、先輩が漏らす声が少し大きく、絶え間なくなって、それがまたこちらの興奮を煽っていく。
「あーイキたくないなぁ。ずっと先輩と、こうして繋がってたいのに」
「あ、あっ、ま、まって」
「ごめんなさい、それは、むり」
 だってさっきからお尻の中が本当にエッチな動きをしていて、ペニスを包んでぐにぐにと蠢いているのだ。まるでさっさと射精しろと促しているみたいで抗えない。
 再度、繋いだ先輩の手を引き寄せて、その指にしゃぶりつきながら腰を振る。
「あ、あ、やっ、まっ、ま、ああっ」
 先輩の少し辛そうな声に申し訳なくなりながら、それでも。先輩のお尻がきゅううと強い収縮をするのに合わせて、薄い膜越しではあるが先輩の中に精を放った。
「あ、ああ……」
「はぁ、すご……」
 めちゃくちゃ気持ちが良かったけれど、先輩を置いてきぼりにして自分だけが快感を貪ったのは事実だ。さすがにこのまま、はぁスッキリと、つながりを解いてしまうわけにはいかない。
「あれ……?」
 軽く息をついたあと、先輩をイカせるために先輩のペニスへと手を伸ばして、腹の上に散った白濁に気づく。それを掬って目の前まで持ってきて、軽く匂いを嗅いだ後、ぺろりと舐めてみた。
「ばかっ、やめろ」
「さっき口に出されたのより薄いですけど、せーえきの味がします」
「わかっててやってるんだろう?」
「だって、ところてん無理って言ってませんでした?」
「初めてだっ」
「それ、俺めっちゃ喜んでいいとこですよね?」
 気持ちよかったですかと尋ねる声は弾んでいて、間違いなく、顔はしまりなくニヤニヤと笑っているだろう。
「俺はめっちゃ気持ちよかったですし、最高でした。先輩は? また俺に抱かれたいなって思うようなセックスでした?」
「それも、わかってて聞いてるんだろう?」
「まぁそうなんですけど。でも、出来れば言ってほしいじゃないですか〜」
 言いながら先輩の中から抜け出て、手早くゴムを外していく。体を起こした先輩も、用意していたティッシュやタオルで自身の汚れを拭いている。
「で? 言ってくれないんです?」
 互いにざっと後始末を済ませてから、改めて、先輩の顔を覗き込みながら訪ねてみた。先輩は少し困ったように笑った後、観念したように口を開く。
「俺も、最高だった。いろいろな意味で、な」
「色々な意味?」
「そうだ。ずっと諦めてたし、憧れだったんだ」
「あ、可愛い抱きたい恋人になりたい、って言ってもらう的な?」
「全部叶ったどころか、過剰なくらい可愛いって言われまくったしな」
「だって可愛かったんですもん。今も、可愛いですよ?」
 顔を寄せればそっと瞼が降ろされる。ちゅっちゅと軽いキスを何度か繰り返していたら、先輩がうっとりするように、初めてだったと口にする。
「ところてん?」
「それもまぁそうだが、印象的なのは、抱かれてて酷く安心したのとか、ずっと穏やかに気持ちが良かったとか、だな」
「あ、それ、詳しく聞きたいけど、聞いたら嫉妬でムキーってなるかもしれないやつ!」
 先輩の過去の経験は気になるし、先輩が話せるって言うならいつか絶対聞きたいけど、それはもうちょっとたくさん、お前が最高だよって言葉を聞いた後にしたい。という訴えに、先輩は笑って了解を告げた。

続きました→

 
 
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