無い物ねだりでままならない8

1話戻る→   目次へ→

 約束していた初詣デートをしてくださいとメッセージを送れば、わかったの文面とともに候補日がいくつか送られてきた。行きたいところは決まっているのかという問いには、大学近辺でそこそこ大きな神社を指定しておく。特にこだわりはないので、正直言えば、場所はどこだって良かった。
 そうして訪れたデート当日、クリスマスにあんなことがあったから結構緊張して待ち合わせに向かったのだけれど、およそ半月ぶりに会った先輩は何事もなかったみたいにいつも通りだ。自分だって今まで通りを必死で装っているのだから、先輩だって内面はどうかわからないけれど。
 このままあの日の話に何も触れなければ、きっと可愛がっていた後輩のままでいられるんだろう。でもあの日、聞いてしまったし、考えてしまった。先輩をどう思っているのか、今後どうしたいのか、どうなりたいのか。自分自身と向き合って、いっぱい考えて、悩んで、決めてしまった。
「人がいないな」
「ですね。もうちょっと賑わってるかと思ったのに」
 ギリギリ松の内ではあるが、土曜だというのに参拝客はまばらで閑散としている。
「あ、でも、社務所は開いてますよ。俺、おみくじ引きたいです」
「参拝が終わったらな」
「はい」
 お参りをして、そこまで広くない境内を一通り巡って、社務所でおみくじとお守りを買って、初詣はあっさり終了した。なお、おみくじは大吉を引いたし、恋愛項目には「誠意を尽くし逃すな」と書かれていたので、どうやら神様からも思いっきり背中を押して貰えたようだ。
「じゃあ、駅に戻ってどこかで昼飯にするか」
「それなんですけど」
 伸ばした手で先輩の手に触れる。お互い手袋などは着けていないが、手の温度は結構違ったようで、こんな寒空の下でも暖かな指先を握り込む。
 どんな反応を見せるのか目を凝らす先で、先輩の顔が驚きに強ばったらしいのが見えた。冷えた手で触れてしまったせいかも知れないし、手を握られるなんて想定外すぎたのかも知れない。
「うちに、来ませんか」
「なぜ?」
「昨日、カレーを作りすぎたので、消費するの手伝って下さい」
 作りすぎたと言うよりは、先輩を誘う口実にわざとたくさん作っただけなんだけど。つまりは下心満載のお誘いで、でも別に隠す気もないから、先輩の視線が自分たちの繋がれた手に落ちるのを見ながら、わざとギュッと握りしめてやる。
 逃さない、というよりは、逃げないでという気持ちを込めて。
「この間の話の続きがしたいだけなら、わざわざお前の部屋まで行く必要もないだろう。ちょうど人も居ないことだし、今ここで聞いてやる」
 硬質な声には緊張が孕んでいる。いや、緊張というよりは警戒かもしれない。まぁ、その警戒は多分正しい。
「俺がなんで部屋に誘うか、検討付いてますよね?」
「当たって欲しくないし、意味がわからない」
「だって先輩この前、言ってたじゃないですか。先輩のことを可愛い抱きたい付き合いたいって、大真面目に告白してくれる男がいい、って。それ、顔とか体格とか身長とか、条件付いてなかったから、俺にもチャンスありますよね?」
「お前は自分のことを恋愛対象として見てくれて、男として頼ってくれる、自分より小柄な女子がいいはずだろう?」
 何一つ当てはまってないという先輩の言葉はだいたい正しい。
 自分より背が低い子、というのは出来ればというただの見栄で、相手が気にしないならそこに拘るのも男らしくないよなという認識だってある。まぁ、そこ以外はかつて自分が告げた理想だし、身長に関してだって先輩ほどの高身長は確かに想定外だった。
「頼りがいある先輩に俺を頼ってとか言うのはかなり憚られるんですけど、でもまぁきっと、先輩が苦手で俺が得意なこととかも探せばあると思うんで、それはおいおい得意分野で頑張りますよ。それより、俺のこと恋愛対象として見てください、って言っても、絶対無理って言います?」
 とはいえ、言われたら諦められるのかと言うと、もうちょっと足掻かせて欲しいって感じだけど。だって無理って言われて諦められるなら、とっくに諦めが付いてるはずだし、今日限りでと切り捨てる発言をされた後にわざわざデートに誘ったりしていない。
「性別と身長は?」
「そこがダメならこんなお誘いしないです」
「俺を抱けると、本気で言ってるのか?」
「本気です。俺、あの後先輩で抜きましたし、本気で抱きたいって思ってますよ。先輩のこと抱いて、先輩の実は可愛いとこ色々見せてもらって、いっぱい可愛いって言って、最後に俺と付き合ってくださいって大真面目にお願いする予定なんで、俺の家、来て下さい」
 ギュッと手を握りしめたまま、先輩の答えを待つ。想定外過ぎただろう誘いをかけた自覚はあるから、じっくり悩んでくれていい。
「わかった。が、場所は俺の家だ」
 かなり長いこと考え込んでいた先輩は、やがて了承をくれたけれど、場所の変更だけは譲れないと言う。もちろん自宅にこだわってはいないし、アナルセックスに必要な知識もそれなりに仕入れ済みだったから、場所変更の理由にも想像がついてしまったので、それで構わないと返した。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です