追いかけて追いかけて2

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 聞いていた通りハードで、そちらに時間を取られサークルにはあまり顔を出せなくなったけれど、院にまで進んだ彼を教授はよく覚えていたし、研究室に通うのはたまらなく楽しかった。あまりに彼の話題を振るものだから、教授にはからかうみたいにまるで恋でもしてるみたいだと言われてしまったけれど、でもそのお陰で腑に落ちた。恋って凄い。ただまぁ、やっと自覚できた所で、何が出来るわけでもないのだけれど。だって男同士だし。彼とはもう二年以上会ってないし。
 それでもやっぱり、このまま自分も彼と同じように院に進むのかもしれない。そしてあわよくば、彼の通う会社に自分も入社したい。少しでも近づきたい。自覚した恋心がどう働くのかはちょっと不安だけれど、でもきっと、彼が幸せそうであるなら、それを遠くから眺めているだけだってそれなりに満足出来てしまうだろう。
 ぼんやりそんな未来を思い描いていた、四年に上がった春の午後。研究室のドアが軽く叩かれた後、扉を開けて入ってきたのはひょろりと背の高い男だった。
 その男は、こちらに気づくと久しぶりだなと苦笑する。彼だ。無精髭なんか一切なく綺麗に剃られた顎と切り揃えられた髪。ピシリとスーツを着こなし、まるで別人みたいにカッコイイ見た目になっているけれど、間違いなく彼だ。
 教授にアポは取ってあると言って、その後隣室で暫く教授と話した後、今度は自分に向かって少し話がしたいと言う。なんだろうと思いながらも、久々に会えたことで舞い上がっていて、促されるまま近くの学食へ向かった。
 ランチタイム以外はまばらにしか利用者のいない学食の端っこで、コーヒーを奢って貰いながら彼の話を聞く。
 訪問理由はざっくり言うと、会社の人事部から、ちょっと後輩勧誘してこいよって言われたらしい。それを言われるってことは、もしかしてここで行きたいですって言ったら、彼と同じ会社に入社できる確率が大幅アップってことなんだろうか?
 行きたいって言っていいのか迷うこちらに、彼はやっぱり少し困った様子で笑いながら言葉を続ける。
「うちの会社に興味ある? それとも、興味があるのは、俺? 俺に、恋してるって、本当?」
 教授だ。きっと面白おかしく話して聞かせたんだろう。一気に顔が熱くなって、これじゃまるでそうですと肯定しているみたいだと思いながらも、どうにも出来なかった。
「あ、こがれ……です」
 でもやっぱり恋してますと正直に言っていいわけがないから、むりやりに言葉を絞り出す。
「憧れか。うんでも、憧れでも恋でも、ここまで追って貰えるってのはなかなか感動的ではあるよね。というか凄いね」
「凄い、ってなに、が」
「成績優秀なんだねって話。転部なんてなかなかやろうと思っても実行できないし、あの研究室だって毎年それなりに人気あるはずだし、教授も褒めてたよ。ちなみにさっき、お前の会社になどやらんって言われたわけだけど」
「なんですそれ」
「教授はすっかり、院に進むものだって思ってるみたいだけど実際どうなの」
「あー……まぁ、そうなるかな、とは思ってて、一応親も、良いとは言ってくれてて」
「それも俺を追いかけて?」
 今度はどこか面白そうに聞かれて、肯定できるわけもなく固まってしまう。彼はごめん意地悪だったと言って楽しげに笑った。その笑顔を見ながら、やっぱり好きだなと思う。

続きました→

 
 
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