オメガバースごっこ13

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「今までも、一人でする時に飲んでたこと、あんの?」
「お前と初めてする前に、試したことはあったけど。でもその1回と、初めてしたときの1回と、今日、だけ。っていうか、俺もこんなことするのは本当に久々で……」
 困ったと言わんばかりに眉尻を下げて、そのくせ無理矢理に笑顔を浮かべながら、吐き出すため息が震えていた。こうして話している間も、相手の体は興奮しきっていて辛いのかも知れない。抱いて欲しいと突撃してきたあの日の様子に似ている。
「久々って……」
 まさかオナニー頻度の話ではないだろうから、お尻を弄るアナニーがって意味だろうか。
「だってお前が居たから。付き合って、抱いて貰うようになって、だからまさか、今更こんなことにしてるの俺もおかしいって思うけど、でも我慢できなくて、本当に、ごめん……」
「待て待て待て。なんで謝られてるのかわかんねぇんだけど」
 今度はたまらず口に出した。謝られてる意味もわからないが、我慢できなくてって言葉もなんだか不穏すぎる。
「俺、お前になんか我慢させてた?」
「我慢、っていうか、俺が……俺の体が……」
 あ、と思ったときには相手の目からボロボロっと涙がこぼれ落ちていて、ますます気持ちばかりが焦っていく。何かやらかしているっぽいのに、いったい何をやらかしたのか、相手の言葉から推察できない。
 どうしたらいいんだと思いながらも、泣いている相手を前にしたら、抱きしめずにはいられなかった。
 腕の中で震える体も、相手が吐き出す息も、熱い。
「お、願い。も、はやく、抱いて……」
 ドリンク剤で強制的に興奮している相手の行為を中断させていたのだ。しかも、自分が側にいるせいで、余計に相手の興奮を煽っている可能性がある。
 いまいち会話が成立しないと言うか、相手の言葉が上手く飲み込めないのも、相手がこんな状態だからかも知れない。
「わかった。普段抑制剤効いてるから、発情期、久々だもんな。お前がツラいの気づいてやれなくて、俺こそゴメンな」
 ヒートが来てる設定だっていうなら、その設定に乗っておこうと思った。
 相手はいま発情中で、番のアルファを求めてやまないのだ。だったら番のアルファとして、やるべきことは決まっている。
 そんなこちらの態度に、相手は安心した様子でふにゃりと笑みを返してきたから、間違っていないという確信を持って相手の体をベッドの上に押し倒した。


 初めてのときと違って抱き慣れてきたことと、ドリンク剤効果か相手の興奮が長引いたこととで、いつも以上にやりすぎてしまった。疲れ切って寝落ちた相手の顔が、満足げなことだけが救いだ。
 相手の体をある程度清めてやった後、気持ち的にはその隣に潜り込んで一緒に眠りたいところをこらえて、ベッドの上に散らかっていた布類や小物類を片付ける。それらが何であるのかは、行為の最中に気づいていた。
 時折思い出したようにそれらを握ったり、布類に顔を埋めたりしていたので、気になるのは当然だったし、それが自分の私物だとわかってしまった後は、目の前で幸せそうにそんな真似をしている相手に煽られまくったのだって仕方がないと思う。当然これも、やりすぎた原因の一端になっている。
 しかも、それに気づいてから先、何かが頭の隅に引っかかっても居た。相手が何をしているのか、その行為に何の意味があるのか、知っているような気がする。
 多分、オメガバース関連。とまでは想像できたが、それなりに読んだとは言ってもすぐに思い当たる何かはない。
 なので、埒が明かないと姉に電話をかけてみた。オメガがアルファの私物をベッドに並べる現象ってなんだっけと聞いたら、思った通りにあっさり答えが返される。
『巣作りでしょ』
「あー……あったな、そんなの」
 そこまで頻繁に出てきたわけじゃないが、確かに「巣作り」という現象があったのを思い出した。

続きました→

 
 
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