オメガバースごっこ3

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※ ここから受けの視点になります

 前から本当の想い人が誰かを知っていた想い人の姉には、付き合うことを了承したその日のうちに報告した。こちらの想いを守ってくれながら、高校入学を機に大きく距離が離れてしまった彼との間に立って、あれこれと協力してくれていたのを知っていたからだ。
 彼女は、想いを叶える気も叶うなどと考えたこともなかった自分に、オメガバースの世界ならという仮定の中で、彼と番になるという幸せな妄想を与えてくれていた。
 それだけでも充分すぎるくらいに有り難かったのに、彼がけっこう大きな怪我をして入院までしたときには、暇ができたなら読んでおけとBL本を送りつけてきたのだ。どこまで狙った判断だったのかはわからないが、彼との関係が大きく変わったのはあの日で、あれがなければ彼からの交際申込みはなかっただろうと思う。
 ただ、彼との間に性欲処理的な関係が出来ていたことは伝えておらず、何があって交際に至ったのかを詳しく説明することができなかったのと、自分にとってもかなり唐突な申込みだったし、彼が何を思って付き合おうなどと言い出したのかわからなくて、彼女に伝えられたのは付き合うことになったという事実だけだった。
 だから、彼女が良くわからないから直接相手からも話を聞き出すと言いだした時に、可能ならなぜ付き合おうと言い出したのか聞いて欲しいとお願いした。BL本を読んでくれるようになったから、感覚が麻痺している可能性というか、ちょっとした好奇心や思いつきで言い出したのかもという不安をこぼした自覚もある。
 ここがオメガバースの世界なら番、という認識を自分たちが持つことになった瞬間には彼女も立ち会っていたし、彼女が送ってきたBL本はオメガバース関連ばかりだったし、Ωにとっての良いαについて色々考えさせてしまったようだし、彼女ならこの不安を理解してくれるだろうと思った。それに、ここが本当にオメガバースの世界で自分たちが本物の番だったら良かったと言われたことからも、自分たちの交際に今後もオメガバースはついて回りそうだと思っていたせいも大きい。
 そんな彼女から、呆れ返ったメッセージが届いたのは報告したその日の深夜とも言える時間で、こちらの想いに相手が一切気づいていないことを教えられた。
 そういや、好きだと言われることがなかったので好きだと返すことはしなかったし、こちらの想いに対しても、嫌じゃなければ付き合えという程度の確認しかされていない。ただこちらとしては、とっくの昔に気付かれていたせいでの、やや強引な交際申込みなのだと思っていたから驚いた。
 浮気は許容できないから彼女が出来たら終わりとは言いながらも、誘われれば断ることなく抜き合いに応じていたのだ。恋人として触れているわけではなかったから、甘い雰囲気やらはなかったけれど、相手の中に行為への嫌悪がないことや、それなりに楽しんでいることが充分に伝わってくるような時間を重ねていたから、当然、相手にだってこちらの想いは漏れ伝わっていると思っていた。
 一切気づいてない状態で、あの強気の意味がわからない。いやまぁ、結構な数の告白を受けてきたらしい彼からすれば、自分からの交際申込みを嫌がられる想定が低いのかもしれないけれど。なんせ、こちらは腐男子バレもしていれば、彼との番設定を受け入れても居るのだ。その前提のない男に交際を迫るよりは、格段にハードルが低いのは認める。
 彼女からのメッセージは、彼が交際申込みに踏み切った理由とともに、変にこじれる前にちゃんと互いの気持ちを確認し合うように勧める文言で〆られていた。
 どうやら、彼の怪我の世話をし、競技復帰を支え、それを苦に思うどころか一緒に遊ぶ時間が増えて嬉しかったと伝えたことで、怪我を惜しまれてばかりだった彼の気持ちを掴んだらしい。
 言われてみれば、それを伝えた直後に唇を奪われて呆然としたんだった。その直後に彼が発したセリフが「本当にΩなら良かった」だったせいで、すっかり忘れていたようだ。

続きました→

 
 
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