ここがオメガバースの世界なら4

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 またしても胸の奥が締め付けられるように痛い。
 だって姉の恋人として釣り合いが取れていないと失格の烙印を押さてしまった自分は、当然、彼の恋人としても釣り合いが取れてはいないのだ。
 こちらの想いがバレていなくたって、彼女は自分を異性として意識したりはしない。同様に、もし仮に女として生まれていたとしても、きっと彼には相手にされない。だったら、発情期がありαの本能を揺さぶり誘惑できる、オメガバース世界のがまだ望みがある。
 ここが、オメガバースの世界なら良かったのに……
 キュッと唇をかみしめて、でもここは第二性なんてない世界だ、と思う。Ωもβもαもないこの世界で、もしものタラレバ妄想話に、オメガバースをたいして知らないだろう相手に口出しされたくはなかった。
 自分に告白したつもりはなく、相手も告白されたなんて思っていないのに。双方が否定しているのに納得せず食い下がる相手に、どう説明すれば理解してもらえるんだろう。
「ここはオメガバースの世界じゃないんだから、もしもオメガバースの世界ならどうするか、なんて話に本気の告白が混ざるわけないだろ」
 相手の発言から、オメガバースをある程度は認識できているのはわかっている。けれどきっと、オメガバース世界におけるΩがどのような存在か、はっきりと認識できてはいないだんろう。腐男子じゃないってはっきり否定されてしまったから、自ら好んで読むことまではしていないはずだ。
「どういう意味だよ」
「オメガバースをどこまで理解してるのかわからないけど、Ωってだいたい酷い扱いされてるんだよね。そんな世界で自分がもしΩで、隣に小さな頃から一緒に育ってきたαが居るなら、早めに番になりたいって思うのはそんなに変な話ではないと思う、って意味」
 さきほどの妄想相手は間違いなく彼だったし、彼という想い人がいる状態で、事故ってその姉と番になりました、なんてのは悲惨でしかないんだけど。でも想う相手が別にいる、という状態でさえなければ、彼女のことも番相手として意識したと思う。
 だったら、自分に想う相手が居ることを知らない彼になら、彼女と事故でいいから番になってしまいたいと望むことはおかしくないと、理解してもらえるんじゃないだろうか。
「番になれたら他のαを誘惑することがなくなる、ってだけでも、Ωにとっては早めに番を見つけることは有益なんだよ。レイプされる危険が減るし、すでに番がいれば、見知らぬ相手とか嫌いな相手とうっかり番になっちゃうこともない。はっきり言えば早いもの勝ちの世界だし、Ωからは番の解消が出来ない場合がほとんどだから、自分に不利益を運んでくる可能性が低いαを見つけたら早めに番になることを考えるよ。そういうΩとしての利益優先だから、事故でいいから番になりたいって言ったところで、それは恋愛感情なんかじゃないでしょ?」
「つまり姉貴は、お前にとって不利益を運んでこないアルファってこと?」
「まぁ、そうだね。あ、でも、もし番になりたいΩが既にいるなら、もちろんうっかり番にならないようには気をつけるよ。好きだからΩの特性を利用して無理やり自分のものにしたい、なんて意味じゃないし」
 飽くまでも、そこに恋愛感情なんてありませんと明言しておく。相手は「ふーん」とこちらに曖昧な相槌を送ったあとは、何かを考える様子で口を閉ざした。
 Ωとして当然の選択、という言い方をしたけれど、馴染みがなければやはり理解は難しいかもしれない。こちらとしては、恋愛感情はないし告白ではなかった、という部分さえ納得してくれるなら、オメガバース世界におけるΩの生き方なんてものにまで理解を拡げてくれなくていいんだけど。
 だって腐男子でもない相手には、まったく必要な知識ではないのだから。

続きました→

 
 
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