親父のものだと思ってた20

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 誰にどんな状況で見られたのかも、その時のペニスの状態も一切聞いていないのに、見知らぬ誰かに先を越されていたという一点だけで、どうやらその誰かに対抗している。
 父親相手にあんなこともこんなことも経験済みだと思っていたら、実は何もかも未経験の童貞と知って、自分の中で勝手に無垢な存在に仕立て上げていたのかも知れない。対人関係でニートだった彼には機会がなかっただけで、そういったことへの興味も知識もそれなりにある、なんてことは自分の体で知っていたのに。
 頭の隅にはそんな自覚がありつつも、初めて見る他者の勃起ペニスに、単純に興味津々だった。しかも持ち主は愛しい恋人だ。
 つい今しがたまで握っていたそれは、脱いだという状況か、それとも近くで見たいという訴えのせいか、下着の中で握ったときよりは確実に萎れている。
「触るよ」
「うん」
 了承の頷きとともに、まずは先程と同じ様に片手で握ってゆるゆると上下に動かした。
「っ……」
 先程にじみ出たぬるぬるを指先に絡め取って先端に塗り拡げてやれば、小さく息を詰める気配がする。気持ちがいい、という吐息とは違う。
「大丈夫? 辛くない?」
「へ、……き」
 口ではそう言うけれど、新たに先走りが滲み出る様子はないし、握ったペニスの反応もイマイチだ。握って扱けば、すぐにさっきと同じくらいの質量に戻るかと思っていたが、そんな簡単な話ではないらしい。
 相手に直接触られり、観察されたりが、簡単に興奮材料になる自分とはやはり違う。見られるのがトラウマと言っていた相手の性器を、こんな間近に見つめているのだから、むしろどんどん萎えられていないだけマシだろうか。
「そっか、こっちに顔近づけてると、キス、できないな」
 相手の興奮を煽ったり、トラウマから意識を逸してもらう何か。と思って真っ先に浮かんだのはキスをすることだったけれど、相手の顔が遠すぎる。
 しかし思わず相手の顔を見上げてしまえば、その顔がどんどんと近づいてくるから、慌てて背筋を伸ばしてこちらからも顔を近づけた。きっと相手も、キスがしたいと思っていたんだろう。
 両頬を相手の手に挟まれて、カプッと齧りつくみたいな勢いでキスを仕掛けられたから、応じるように舌先を差し出しはしたものの、意識の大半は手の中のペニスに向かっていた。
 さっきもキスと連動して反応していたのを覚えている。
 キスに集中して気が紛れたのか、興奮が増したのか、先程よりも鈍くはあったが、手の中で相手のペニスが育っていく。
「ん……、ふ、ぅっ……ん」
 再度滲み出す先走りを絡め取って敏感な先端で指先を滑らせれば、相手の舌が震えて甘く鼻が鳴った。ホッとしながら暫くそのままくるくると先端を撫で続けていたら、とうとう相手がキスを中断して顔を離していく。
「も、……それ、」
「先っぽ敏感だね。気持ちよすぎて辛くなった?」
 先端ばかりを弄っていた指を止めて、握った竿を扱く動作に戻ってやれば、相手が安堵の息を漏らすのが聞こえてきた。もう、大丈夫そうだなと思う。
 伸ばしていた背を戻して、視線を手の中に向けても、時折甘やかな吐息が零れ落ちてくる。先走りも次々と溢れ出ていた。
「んっ、ぁ、ぁっ……」
 滑りが良くなって気持ちよさが増したらしく、聞こえる吐息が増えて、胸の中に愛しさと嬉しさと興奮とが湧き上がる。
「ぁ、ぅ、それっ」
「ね、聞こえる? ぬるぬるいっぱい出て、エッチな音してる」
 わざとらしくクチュクチュと音を鳴らして、少し激しめに扱いてやれば、相手の腰が震えて随分と気持ちが良さそうだ。なのに。
「や、だぁ」
 泣きそうな声の訴えに、思わずパッと手を離してしまった。
「ぁ……」
「あ、ごめん。もしかしなくても、続けてよかったやつ?」
「うぅっ……」
 呆気にとられたような、残念そうな。そんな相手の気配を察知して、思わず謝罪と確認をしてしまったけれど、相手は困ったように唸るだけだった。

続きました→

 
 
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