まぁ男同士だし、好きって思って告白したんだから嫌悪やらはないものの、そこまで行為に積極的な興味はなくて、でもせめて、あの笑顔は見せて欲しいなと思う。二人きりと言っても、こちらの友人がいない状態を二人きりと称しているだけで、実際は周りにたくさんの他人がいるわけで、その状態では無理なのかなとも思うんだけど。
だって、あの笑顔を見たとき、そこに居たのは野良猫一匹だけだったから。
今度、空き時間にあの場所へ二人で行ってみようか。そういや、なんで好きになったのか、なんて話はしたことがなかった。
これはちょっといい案かも知れない。
「ねぇ、このあとだけど、もうちょっと時間ある? ちょっと行きたいとこあるんだけど」
思い立ったが吉日とばかりに切り出せば、向かいで本日のA定食を食べていた相手が、質問とはまったく関係のない答えを返してきた。
「今日で1ヶ月経ったけど」
「ああ、うん。え、もしかしてお祝いとかしたい系?」
言われてみれば確かに、あの告白から今日で一月経過している。ちょうど学食に居るし、何かデザートでも買って来たほうがいいだろうか。
なんて思った矢先。
「これ、いつまで続ければ満足なの?」
「は?」
「もしかして、期限とか決めずに始めたの?」
「は? え? そんなの決めて恋人するほうが珍しくない?」
「そりゃ普通の恋人はそうかもだけど、俺達は違うでしょ」
「え、なんで?」
「なんで、って……罰ゲームみたいなもんじゃないの?」
「は? はぁあ?」
あまりに驚いたせいか、相手もなんだかバツが悪そうな顔になりながらも、いつネタバラシがあるのか待ってるんだけど、と続けた。
「こっち来る前、そっちでなんかすごい盛り上がってたし、やたら怖い顔して近づいてきたと思ったら、好きです付き合ってください、なんて言い出すから、何か掛けでもしてて、負けた罰ゲームで言わされたんだと思ったし、巻き込まれた腹いせに困らせてやろうとして、いいよって言ったのに、なんか、いつまでも終わる気配がなくて……」
ああ、なるほど。やけにあっさりOKされたと思ったが、そんなことを考えていたとは。
こちらの好意はどうやら、一欠片だって相手には伝わっていなかった。
「俺は終わる気ないけど、ネタバラシが必要なのはわかったから、このあと、ちょっと付き合って」
あの場所へ二人で行ってみようと思いついた後で良かったなと思う。
相手が食べ終わるのを若干急かしながら待って、相手の都合は聞かないまま、やや強引にあの場所へと連れて行く。脇道からそれようとした時にはさすがに少し抵抗されたから、その手を取って有無を言わさず引っ張っていった。
「こんなとこ連れてきて何する気? もしかして、怒った?」
人気のない建物の裏手に連れ込まれ、相手は少し怯えているようだ。
「ここでさ、猫なでて笑ってた記憶、ない?」
数ヶ月前の話だと言えば、思い当たることがあったらしい。
「ああ、うん。そういえばそんなこともあった、かも」
「俺、あのとき、猫相手に笑ってる顔が忘れられなくて、お前のこと気にするようになって、気づいたら惚れてたっつうか、どんどん好きになってて、あいつらがあの日やたら盛り上がって騒いでたのも、俺が怖い顔してたのも、俺がお前に玉砕覚悟の告白する気になったからで、罰ゲームとかなんもない。だから俺はOKされて普通の恋人になったつもりでいたし、1ヶ月経ったから終わり、なんて気もないんだけど」
でも罰ゲームに嫌がらせで付き合っていただけなら、相手はもう、別れたいと思っているだろうか。なんていうのは、多分杞憂だ。
完全な二人きりが功を奏しているのか、随分とまとう気配が穏やかで、安堵の表情を浮かべる表情もいつもに比べて随分と柔らかい。
「ねぇ、俺のこと、1ヶ月付き合って、ちょっとは好きになってくれてる?」
「それ、わかってて聞いてるだろ」
「うん。だって嬉しくて」
えへへと笑えば、つられたように相手もクスリと笑う。あの日見た柔らかな笑顔に似ていた。
キスがしたいなと思ってしまって、内心苦笑を噛みしめる。恋人らしいことが何もなくたって、せめて笑ってもらえれば満足するかと思ったけれど、そんなことは全然なかった。
<終>
さ~て、今週の有坂レイにぴったりのBLシチュエーションは~?
1.賭けに負けて
2.同級生
3.好きすぎて止まらない
の三本です!!
来週もお楽しみに~!
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