多分、両想いな二人の大晦日 の続きですが再度視点が変わっています。
テーブルの上のお守りと鍵とスマホを見つめながら、どうしよう、と思う。
どうしよう。めちゃくちゃ嬉しい。
絶対一緒に年越しするぞって思っていたのに、預かった鍵を返したくない、なんて理由で訪問するのを躊躇っていたら、夕方向こうから来ないのかと連絡が来てしまった。冬至にもクリスマスにも押しかけたから、相手にも当然、大晦日だって押しかけてくるだろうと思われていたようだ。
相手からのメッセージを見ただけで、なんで躊躇ってたんだろってバカバカしくなるくらい会いたい気持ちが膨らんでしまったから、用意していたお酒だけ持って急いで駆けつけてしまったわけだけど。
相手はここ数日は大掃除と仕事しかしてなかったとか言うから、一緒に買い出しに行って、帰ったら何故か風呂を勧められて、部屋着を借りて、一緒に年越しはあっさりお泊り確定になった。
クリスマスのときはダラダラ飲んで飲みすぎて、酔っぱらいを寒空に放り出すのは可哀想って理由で泊めてくれたんだと思ってたのに。大晦日は最初から、相手はこちらが泊まる前提で誘ってくれていたらしい。
歩いて行き来できない距離じゃないんだから、今日は飲みすぎるなよって言えば済む話なのに。酔っ払う前に酒を取り上げてしまえばいいのに。
そんな状況からスタートした大晦日の酒盛りは案の定飲みすぎて、結果、あっさり酔っ払った。
酔って、絶対秘密と思っていた ”好き” をポロポロとこぼして、来るのを躊躇っていたのは鍵を返したくなかったからだってことも言ってしまった。
相手は最初すごく驚いて、気持ちは嬉しいけどと言ったから、ああやっぱ振られるんだって思った。これで、最後の友人まで無くしてしまう。
それだけは絶対避けたくて、必死に謝って、もう好きとか言わないし鍵もちゃんと返すから友達止めるって言わないでと泣きついたら、今度はひどく焦った様子で、そうじゃなくてといい出した。
色々あった後で近しい友人が彼一人だから、そんな錯覚を起こしているだけだろう。そう言って、男を恋愛対象にしたことなんかなかったはずだし、傷が癒えたらまた彼女を作って次こそ幸せな家庭を築けよって、そう続いた言葉に、そんなの絶対無理だって言い返した。
そんな未来、欠片だって望んでない。もう一度、一から人を信じて友人やら恋人やらを作る、なんて想定が、今後の自分の人生にはない。
今現在、友人と呼ぶのも、好きだって気持ちが湧くのも、もっと一緒にいたいって思うのも、彼ただ一人なのに。彼まで無くしたら、今度こそ、一生引きこもり生活か、いっそこの世からサヨナラしたっていいくらいだと思っているのに。
そんなことを言われて唖然とする相手に、再度ごめんと謝った。
だってあまりに重い。重すぎる。そこそこ長い付き合いだけど、ただの友人でしかないのに。お前に捨てられたら死んでやるとも取れる、脅迫まがいのことまで言った。
多分間違いなく飲みすぎた酒のせいなんだろうけど、必死過ぎて逆に空回りしてたと思う。でも酒のせいだろうと咄嗟の勢いだろうと、言ってしまった言葉は取り消せない。
だから全部忘れてと言った。全部忘れて、今まで通りの友達でいて下さいって土下座して、あまりのいたたまれなさに帰ろうとした。
それを引き止められて、実はゲイでと突然のカミングアウトが始まって、好きだなんて言われたら性対象として見てしまうという話をされた。恋愛感情やら性欲やらの下心満載で移住を勧めたつもりはないし、友人として支えられればと思った気持ちに嘘はないけど、下心皆無だったかと言われれば自信がないし、そんな気持ちがお前に錯覚を起こさせた可能性もあるんだぞと言われた。
つまり実は両想いだったってこと? って聞いたら脱力されて、そうだな、って返す声はなんか呆れと諦めが滲んでたけど。そのくせどこか笑いを含んでもいた。
そしてちょっと悪い笑みを浮かべながら、じゃあお前を性対象にしていいってことなんだなって言われて抱きしめられたときは、さすがにちょっと焦ったけれど。展開早すぎって思ったけれど。
でも嫌悪感はなかったし、ゲイだって言うならこのまま身を任せておけばいいのかなって思ったし、実際そうした。
まぁなんだか色々安心して、そこで寝落ちたオチがつくわけだけど。
いやだって、飲みすぎてやらかした自覚はあって、酔って鈍った思考ではあったけれど、それでも彼との友情を繋ぎ止めようとめちゃくちゃ必死になっていたのだ。なのに実は両想いでした、なんて結果になって、触れてみたいなって思っていた相手の腕に優しく包まれてしまったんだから、安心しきって気も緩む。
そして気づけば朝で、さすがに実家に顔を出してくるという相手と連れ立って家を出て、誘われるまま一緒に初詣に行って、お守りは人から貰ったものの方が効力が有るらしいぞなんて言われながら彼が買ったお守りを渡されて、その後別れて帰宅して今に至る。
”鍵返し忘れたんだけど”
”そのまま持ってていい。っていうかお前にやるよ。”
”それってお前の恋人になったから? そう思ってていい?”
”いい。”
そんなやりとりが並んだスマホの画面を見つめながら、頬が緩んで仕方がない。
ほんと、嬉しすぎてどうしよう。
やった! 元旦更新間に合いました!
この二人のお話はここで一旦終了です。
というわけで、改めて、明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
今年は正月更新が出来たので、新年の挨拶は雑記を書かずにここでの挨拶のみとさせていただきます。
お正月休みを挟んで、更新再開は 6日(月)の予定です。
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