雷が怖いので プレイおまけ7

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 第四土曜日はホテルで宿泊するのが決まりみたいになって、それに合わせて少しずつ、デートっぽい事もするようになった。興奮を煽るためにエッチな道具を仕込まれて外に連れ出されるのではなく、ただただ一緒の時間を楽しむだけのそれが、恋人にはなれないとわかっていながら彼への恋情を抱き続けてしまう自分へ向かう、彼からの最大限のサービスなんだってことはわかっている。
 どれだけ恋人っぽく過ごそうと、特別な扱いをされていようと、やっぱり自分たちの間にあるのは雇用関係で、デートだって結局は愛人バイトの延長だろう。お金を貰わない代りの贅沢だ。だから寂しいと思う気持ちはやはり時折顔を覗かせてしまうけれど、想いに応えられない代りにと彼がくれるサービスは過剰なくらいで、少し持て余し気味でもある。
 だから毎回は嫌だけれど、たまになら興奮を煽るための細工をしたお出かけでもいいと言ってみたことがある。自分ばかりがサービスされるのではなくて、彼にとっても楽しめる何かがあればいいのにと思って。
 結果的には、して欲しいならしてあげるけれど、第四土曜日に関してはそういう気遣いは不要だと言われた。彼自身、第四土曜日をそれなりにちゃんと楽しんでいるとも。
 けれど、それならいいか、なんて割り切れないのは当然で、釈然としないこちらに彼が提案してきたのは、だったら少し遠出をしてみないかだった。いつも以上に拘束時間が長くなるけど、それでも良いなら旅行に付き合ってってことらしい。もちろん、嫌だなんて言うはずがない。
 でも彼の言う少し遠出を甘く見ていたのは事実だ。ちょっと長めのドライブになるのかな、なんて思っていたのは大きな間違いだった。だってまさか、たった一泊の旅行で、飛行機距離の移動をするなんて思うはずがないだろう。
 だから驚きや戸惑いは当然あったが、それでもテンションはかなり上がっていた。旅行ってだけでも久々なのに、一緒に行く相手が彼なのだから、テンションが上がらないほうがおかしい。
 デートっぽいことはするようになったけれど、映画だの水族館だのは自分からの提案を彼が盛り込んでくれたってだけだった。でもこれは違う。彼が行きたいと思った場所へ、自分も連れて行かれている。旅行に付き合ってって言い方だったから、一人よりマシ程度の理由で誘われたのかも知れないけれど、それでもまだ知らない彼の一面が見れると思うと嬉しかった。彼がどんな場所に興味を持つのか、興味がある。
 ただ実際のところは、彼が行きたい場所を連れ回されるのではなく、彼が自分を連れて行ってみたいと思った場所へ、連れて行かれたようだった。
「え、てことは、結局俺のための旅行ですか? というか、まぁ、第四土曜日が俺のための時間なのはわかってるんですけど。でも俺が楽しめるか優先じゃなくて、あなたが楽しみたい場所優先で良かったのに」
「何言ってんだ。お前を連れてきたかった、という俺の気持ち優先させた場所だから、お前のためだけの旅行じゃないだろ」
「いやそれは、というかそれって……」
 これもう完全にデートだろって思ったけれど、さすがに口には出せなかった。肯定されても否定されても、結局悲しいような気がする。だったら自分の中でだけ、連れてきたかったって言葉を喜んでいようと思う。
「バイト中でもないのに、お前が行きたいと言ったわけでもない場所に、お前を長時間拘束して連れ回すのはどうかと思ってただけで、お前が俺にも楽しめってなら、こういうの増やすからな」
「嫌、ではないんですけど、でも」
「でも、何?」
「毎月ホテル泊ってだけでも贅沢しすぎって思ってるくらいなのに、なんとなくそれが当たり前になってて怖いんですよ。だからせめて何かあなたに返したいとは思ってるんですけど、でもこういうの増えたら、困ります」
 贅沢すぎるしサービスされ過ぎだし、連れてきたかったなんていう、サービスと思ってわざと言ってくれたわけじゃなさそうな言葉に、またしても期待が膨らんでしまう。好きって言葉を零しても、彼が返してくれるのはキスだけだって思い知っているのに。
「貧乏学生が慣れていい贅沢じゃない、ですよ」
「慣れたくない、贅沢だ、って思ってんなら大丈夫だろ。これが大学生の当たり前じゃないって、お前はちゃんとわかってる。むしろそんな当たり前じゃない生活を、もっと有効に利用しろって。学生のうちにこそ、アチコチ行ってあれこれ経験積んだらいい」
 どうしても旅行に連れ出されるのが嫌なら、つまらなくて無意味で苦痛だって演技でもして騙しきって、なんて言われたけれど、そんなの無理に決まってる。

続きました→

 
 
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