兄は疲れ切っている7

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 そろそろいいかと、埋めていた指を軽く引き抜けば、ビクリと兄の体が震えてまたあちこち強張ってしまう。ああ、失敗した。
「そうビビんなよ」
「んなこと、言った、って」
「さっきまではちゃんとアンアン言えてたんだから、ちゃんと気持ちよくなれるって」
「なに、それぇ」
 だから体の力を抜いとけと続けるはずだったのに、苦しげと言うよりは困ったようにふにゃりと歪んだ泣きそうな顔をして、舌足らずに吐き出された声が子供みたいで小さく笑ってしまう。このままもっともっとグズグズになっていけばいいと思う。
「なんで指三本も突っ込まれるまで気づかなかったと思ってんの。俺が優しく、やさしーく、ここ慣らして拡げてやったからだよ」
 緊張からキツく食まれたままの指を小さく揺すりながら、意識なかったくせにけっこう気持ちよさそうな息漏らしてたよと教えてやった。
「だからさ、さっきみたいに可愛く鳴いて、俺を楽しませてよ」
 どうせなら一緒に気持ちよくなろうぜと言えば、泣きそうな瞳を迷うみたいにゆらゆらと揺らしながら、嫌だとでも言うようにゆるゆると首を振る。
「もしかして、痛くてもいいからさっさと突っ込んで終わらせろって思ってる?」
「そ、ゆ、わけじゃ……」
「んじゃいい子にして俺に甘やかされとけって。しっかり可愛がってやるからさ」
 何を想像したのか、血の気が失せていた頬にうっすらと赤味がさしていく。甘やかされて可愛がられろという言葉への反応がこんなだと、そこまで嫌悪感があるわけでもないのかと期待したくなる。脅したから諦めて従っているだけだと思っていたんだけど。
「なぁ、今、なに想像した?」
「えっ?」
「どんな風に甘やかされたいとか、可愛がって欲しいとか、もしあるなら言っていいけど」
「言ったら、すんの?」
「出来る範囲でな」
「お前、って」
「なに?」
 再度ゆるく首を振ってなんでもないと言われたけれど、なんでもないわけがない。
「なんだよ。言えよ。気になる」
「嫌がらせで抱くくせに、なんでそんな優しくすんのかと、思っただけ。けどっ、考えたら、わかった、から、っも、いい」
 だんだんと息をつまらせ苦しげに眉を寄せながら吐き出していた兄の目から、とうとうボロリと大粒の涙がこぼれ落ちて驚いた。兄はすぐにギュッと目を閉じ、目元を隠すように上げた腕を押し当ててしまう。
「わかったって、何が?」
 問いかける声が掠れているから、内心舌打ちしながら自嘲する。さすがに少し焦っていた。
 兄はもちろん、何がわかったかなんてことを教えてくれはしない。唇が震えているから、きっとまだ泣き続けている。
 迷った末、埋めていた指をゆっくり引き抜いた。泣いてる相手をそのままに、行為を続行する気にはなれなかった。
 兄の上体を抱え起こしながら目元を隠す腕を払い除け、涙に濡れた顔を間近に覗き込む。兄はそっと視線をそらして、困ったようにゴメンと言った。
「ごめんって、何が?」
「泣いて、ごめん」
「謝る必要ないけど、理由は知りたい。何がわかって、泣くほど辛くなったのか」
 こちらの必死さに気づいたのか、兄が困り顔のまま小さく笑う。
「聞くなよ。もう、充分惨めだから。これ以上追い詰めんなって」
「いやだって、あんた絶対なんか誤解してるだろ、それ」
 嫌がらせかと言われた時に、認めるようなことを言わなければ良かったと今更思う。今までの報酬を体で払えも、まずかったかもしれない。兄に彼女ができそうだからこんなことしてんだろと指摘されて、その通りだからこそ、少しだけ悔しかったのだ。

続きました→

 
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