体の準備はしてあるのでと伝えたけれど、相手の困惑顔は変わらなかった。
「いやでも、だからって、じゃあ入るねってスルッと挿れられるようなものじゃないでしょ」
「ですかね。でもちょっとくらい痛くてもいいというか、多少強引に突っ込んでくれていいですけど」
「すぐそういうこと言って煽らない」
痛いより気持ちいいほうがいいでしょと言いながら、こちらの差し出すゴムを受け取って相手が脱衣所を出ていくから、慌ててその背を追いかけた。
さっさと湯の中に入った相手が、海の方角を眺めながら、まぁまぁの広さがある風呂の中をウロウロと歩いている。思わずそれをジッと眺めてしまえば、やがて立ち止まってこちらを呼んだ。
「早くおいで。日の出見ながらするんでしょ」
ゴムを受け取ったことが了承とわかっていながらも、言葉にされるとやはり嬉しい。簡単にかけ湯してから、相手の元へと急いだ。
「この位置なら海見えるし、ここでいいかな」
「あ、はい」
「一応の確認だけど、抱かれながらって、体を繋げた状態で、って意味だよね?」
指で慣らしたりもセックスの一部だと思うんだけど、そういう前戯を全部含めた抱かれながらではないよね、と続いた言葉に、もちろん体を繋げた状態でという意味だと返す。
「君のして欲しいには極力応えてあげたいけど、これはそういう旅行だけど、でも抱かれながら日の出が見たいはダントツにハードル高いからね? わかってる?」
「わかってます。凄く嬉しいし、めちゃくちゃ楽しみ、です」
にっこり笑って告げれば、頬に相手の手が添えられて、すぐに相手の顔も寄ってくる。ちゅっと唇を吸われて、でもそれは深いキスにはならずに離れてしまう。ちょっと残念。
「もう。それ言われたら弱いの知っててやってるでしょ」
「そりゃあ」
「じゃあ時間もなさそうだし、まずはどこまで準備できてるのか確認させて」
言われるまま、風呂の縁となった岩に両手をついて、相手にお尻を突き出した。右手の近くに、先程渡したゴムのパッケージがポンと置かれているのが、自分が持ち込んだものなのになんとも生々しい。
「触るよ」
既に腰というかお尻の両方の膨らみを包み込む手のひらが、左右に開くように力を掛けている中でのそのセリフに頷けば、晒されたアナルにぴとっと指の腹が押し付けられる。触れたままで軽くゆすられた後、それはぬぷっとアナルの中に侵入してきた。
「っ……ふっ、……ぅ……」
ぬるぬると指を前後されて、あっさり息が荒くなる。でもまだ指一本だし、専用庭とは言え外だし、前立腺を狙ってこねられても居ない。
「うん。思ったよりは柔らかい。指増やすよ」
「は、はいっ」
その後、二本に増えた指はすぐに三本に増えて、その太さを慣らすようにぐちゅぐちゅとアナルを擦りたてる。昨日みたいな気持ちよさはない。本当に、性急にただただ拡げられている。
「ぁ、んっ、んんっ」
それでもグッグと指を突かれるのに合わせて、殺しきれない音が鼻から漏れてしまう。
「苦しい?」
「へ、っき、です」
「じゃあ今から少し気持ちいいとこ弄ってくけど、びっくりして大声あげないようにね」
「はぅんっ」
はいと返事をしようとしたのに、それより早く弱いところをグリッと押されて、慌てて口を閉じた。ああごめん、とは言われたものの、そのままグニグニと前立腺を狙って弄られ、こちらは声を噛むので必死だ。このままだと口を開いて喘いでしまいそうで、左手を持ち上げ自らの口を覆うように押し隠す。
「ふぅんんっ」
まるで口を押さえたのを見たからそうしたとでも言うように、直後にペニスを握られゆるく扱かれ、声をあげない代わりにビクビクと体が跳ねてしまった。痺れるみたいに気持ちよくて、でもかなり苦しい。
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