生きる喜びおすそ分け32

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「勃ってるね」
 ホッとした様子の声が掛けられ、あっという間にペニスを握っていた手が外され、お尻の中からも指が抜けていく。ちょっと残念な気持ちを混ぜながらも、指を抜かれて一息ついているその横に、相手の手が伸びてきて置かれたゴムのパッケージを摘んでいった。
 背後でカサリと音がする。相手の準備が終わるのを体勢を変えずに待っていれば、ちょっとじっとしててねと声が掛けられると同時に、相手が覆いかぶさるようにして腰から腕を回してくる。
「ぁんっ」
 またペニスを握られて小さな声をあげたものの、次には予想外の感触を感じてギョッとした。
「えっ、ちょっ、なにを」
 慌てて自身の股間を覗き込めば、なぜか自分のペニスにコンドームを装着されかけている。
「せっかくコンドーム持ってきてくれたから、君に使おうと思って」
「は?」
「お風呂の中とか庭とかに君のが飛んだら、後々、ちょっと面倒そうでしょ」
 背後から直接見もせずくるくると器用にコンドームを根本まで下ろしていくのを、そんな言葉を聞きながらただただ見つめてしまった。というか、風呂場を汚さない気遣いなんて頭からすっぽ抜けていた。
「で、でも、そしたら、あなたの分が」
 言いながら、一つの可能性に思い至って、ドキドキが加速していく。ローションですら取ってこいと言わなかった相手が、足りないゴムを今から取りにいくはずもない。
「ゴム無しでして、いいんだよね?」
「ほ、ほんとうに?」
「本当に。まぁ、今更ダメって言われたら、日の出見ながらのセックスは諦めて、って話になっちゃうんだけど」
 ダメって言わないでしょ、と続いた言葉には嬉しいと返した。だって昨日、一緒に露天風呂に浸かりながら、勃った相手にナマでいいから挿れてと言った時には、けっこう引かれた感じがしていた。
 男同士だから妊娠リスクはないけど、性病リスクとか考えないのって言われて、ナマでもいいよと軽々しく口に出してしまったことを悔いていたのに。
「でも、お尻に直接なんて汚い、とか、性病リスク、とか」
「そりゃあ多少のリスクはどうしたってあると思ってるけど、でも、上手に洗えてるのはわかってるし、それに、ゴム無しでしたこと無いなんて言われたら、ねぇ」
 性病リスクの話を出されて、今までの恋人だったり体の関係を持った友達だったりと、コンドームなしでセックスをしたことは無い話はしていた。女性相手はそれこそ妊娠リスクを考えてしまうし、男の恋人がいた過去はない。
 男相手なら妊娠リスクがないって部分の方が自分的には大きくて、性病リスクなんてものは頭になくて、恋人が男ならナマでしてもいいんじゃないのと浮かれていたのは事実で、だからこそ、性病リスクの話を出されて結構焦ってしまったのだ。誰とでも気軽にゴム無しセックスを楽しんできた、みたいな誤解をされるのだけは絶対に嫌だった。
 結果、抱かれた経験持ちというのは既に知られているにも関わらず、男の恋人がいたことはない、なんて話をする羽目になってしまったけれど。恋人でもない相手とも気軽にセックスは割と事実ではあるのだけれど、とっかえひっかえめちゃくちゃ遊んできたわけでもないし、さすがに女性の経験人数までうっかり喋ったりはしなかったものの、男との経験は一人だけで回数も片手で足りる数だって事まで暴露してしまったけれど。
 抱かれ慣れてないのはわかってるって言ったのに正直だねと笑われて、それでその話は終わってしまったし、ゴムやローションがないからダメとは確かに言われなかったけれど、夜まで温存させてという理由で抱いてはくれなかったから、そういう言い回しで避けたのは相手の優しさで、ゴムなしでセックスなんてありえないと思っているのかと思っていた。

続きました→

 
 
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