思ったまま口に出してしまえば、確かにそう思ってるよと返されてびっくりする。
「え、あの、じゃあそんな、無理、しなくても……」
先程も、こちらのして欲しいを出来るだけ叶えるための旅行だ、みたいなことを言われたけれど、これもそれの一つだというのなら、無理して頑張ってくれる必要はない。そんなに頑張らなくても、もう、こちらの気持ちは彼との交際を続ける方向で決定しているのだから。
「あー違う違う。ありえないと思ってると言うよりは、使ったほうが絶対にいいと思ってる、って方が近いかな」
無理なんかしてないよと宥めるみたいな優しい声が背中に降って、更にその後、ねぇわかってるのと、なんだか甘やかな声が続いた。
「わかってる? って?」
何をわかって欲しいのか、すぐには見当がつかないまま疑問符をつけて繰り返す中、アナルに相手のペニスの先が押し付けられるのがわかる。これがゴムの膜のない感触、と思っただけで、ぞわっと快感が広がる気がした。
「俺も、使わずにするのは初めてだよ、ってこと」
「えっ!?」
自身の発する驚きの声に、挿れるよという相手の声が混ざる。グッとアナルに圧が掛かって、相手のペニスを迎え入れようと、その場所が開いていく。
「ぁあっぅんんんっっ」
驚きに開いた口から思いの外大きな声が漏れてしまって、慌ててまた片手で口を覆った。
痛みはないけれど、昨日よりも圧迫感がキツくて苦しい。体勢の問題と言うよりは、多分、慣らし足りていない。ローションの量も、足りてないのかも知れない。あと、今日はまだイカされていないから、勃ってはいるけれど、興奮度合いが昨日とはやはり全然違う。
露天風呂で、というシチュエーションに興奮する部分は間違いなくあるけれど、外で、という部分に緊張してないとは言えないし、声を抑えることに意識が向く分、キモチイイに集中しきれない。
「ん、狭っ……大丈夫? 痛くない?」
相手も苦しそうに息を吐いてから、こちらを気遣う言葉をくれる。宥めるように背中を撫でてくれる。
「いた、くはない、です」
「そっか。でも昨日より苦しいよね」
急いじゃったからと申し訳無さそうに言われて、首を横に振った。だって相手は欠片だって悪くない。
「俺が、たのんだ、せい、だから」
「うん。ね、体、起こせる? まだ苦しいかな」
促されるまま上体を起こそうとすれば、手伝うように相手が腕を引いてくれる。そうして頭を上げた先、太陽は既に半分以上水平線から顔を出していた。
「あっ……」
「やっぱり顔を出す瞬間が見たかったかな。ごめんね。急いだけどちょっと間に合わなかった」
「いえ……」
雲ひとつない快晴ではなく、あちこちに薄い雲が広がる空だからだろうか。気象条件なんてよくわからないけれど、赤くて丸い太陽の形がはっきりとわかる。昼間の太陽なんて直視できるものじゃないし、日の出ももっと眩しいものかと思っていた。
じっと見つめてしまう先、太陽はぐんぐんと空へ向かって上昇し、あっという間に水平線からの距離を開いていく。
「すごい……」
「そうだね」
呆然とした呟きを肯定されてハッとする。
「随分真剣に見入ってたけど、もしかして俺の存在忘れてた?」
慌てて振り向けばそんな事を言われてしまって、しかもそれをすぐには否定できなかった。
「お尻におちんちん挿れられてるのに?」
「ぅ……ぁ、それ、は……」
言い訳すらも思い浮かばず口ごもってしまえば、相手がおかしそうに笑い出す。
「いいよ。そこまで見惚れるほどの日の出が見れて良かった。それより、いつもの言ってよ」
「いつもの?」
「このために生きてた、ってやつ。あれだけ見入ってて、そこまでの感動はなかった、とは言わないでしょ」
素直に頷いたけれど、でもその言葉を繰り返す気にはならなかった。
「あなたの恋人になれて、本当に、良かった」
「えっ?」
驚く顔にニヤリと笑ってみせる。
「俺、あなたの恋人って事を満喫して、あなたが俺を最高に幸せにしてくれるってのを、あなたに教えるために、生きてるのかも」
大げさって笑われるつもりの言葉だった。もしくは自信過剰と苦笑されるかと思っていた。
「君は、本当に……」
言葉に詰まった相手の顔が迫って唇が塞がれる。ちゅうと唇に吸い付く勢いが強くて、ちょっと痛い。口を開いて差し出した舌を、絡め取って吸われる力も、食まれる力も、ちょっと痛いと感じるくらいに強かった。
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