生きる喜びおすそ分け4

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 部屋の中を軽く見回した後、真っ直ぐにテーブルセットの椅子へ向かった相手が、はいじゃあ君もここ座ってと言って、正面に置かれた椅子を指しながらニコリと笑う。有無を言わさぬ雰囲気に逆らえない。
 まぁ元々、高確率で入館は出来ると思っていたけれど、ラブホに入れたからといって即そういう雰囲気になるとは全く思っていなかったし、取り敢えず入っただけで行為は拒否られる可能性のが高いと思っているし、この展開は想定内ではあるのだけれど。
「もしかして、怒ってます、か?」
 貼り付けたみたいな笑顔に、いくら張り合いがないからと言って、突然ラブホに誘導したのはやり過ぎだったかもと不安になって、椅子に腰を下ろしながら問いかける。
「別に怒ってはいないけど。でも話し合いは必要でしょ」
「恋人なら、そろそろこういうデートも有りかな、って思っただけです」
「君とのデート代をこっちが多めに負担する理由は前にも一度話したよね。一応言っておくけど、体目当てにお金出してたわけじゃないよ?」
「ええ、まぁ、それはわかってます。というか、別に俺の体に興味なんてないっすよね?」
「それをわかってて誘うってことは、君がしたくてって事でいいの?」
「あー、はい。そうです」
「したいのはどっち?」
「ど、っち?」
「抱く側と抱かれる側」
「逆に、どっちならヤらせて貰えるんですか?」
「男の子と付き合うのなんて君が初めてだし、恋人にはなったけどセックスまでする予定がなかったから、抱かれる側は正直かなり抵抗がある。かといって抱く側も、ちょっと勃つかどうか自信がない。君を性的対象として見たことがない」
「それはつまり、俺とは出来ないって言われてるんですよね?」
「どうしてもって言うなら試すくらいはしてもいいと思ってるよ。抱く側でも、抱かれる側でも。マグロどころか嫌悪感丸出しの相手とでも、楽しくて仕方がないって思いながら出来るってならね」
 マグロ宣言に加えて、嫌悪感丸出しになる予定まで突きつけられて、そんな状態の相手とでも楽しくセックスできる男が居たとしたら、頭のネジがぶっ飛んでるどころじゃないだろと思う。それくらいぶっ飛んでた方が、相手からすれば面白いのかもしれないけれど。
「いやぁ、さすがに俺も、嫌悪感丸出しの相手に何かしたいともされたいとも思いませんって。いくら俺でもそんな相手と楽しくセックスは無理っすね」
「まぁ、そりゃそうか。で、したいのはどっち?」
「は? いやだって、しないですよね?」
「性的対象として見てなかった。したいと思われてるとも思ってなかった。ってだけで、したいってなら、できるだけ前向きに検討はするよ。君が満足できる対応がしてあげられるかはちょっとわからないというか、まぁ多分無理かなって気もするけど」
「えと、なんで?」
「そりゃ一応今は君の恋人だから」
「義務感、すか?」
「そうだね。だから、義務感で応じられるセックスなんて嫌だ、って言うなら諦めた方がいいね。ただ君は男の子だし、気持ちよくなれれば満足、みたいに割り切れるならセックスも有りな恋人になっても大丈夫かも?」
「大丈夫って何がですか?」
「恋人続けられるかもって話」
 もう恋人やめるつもりなんですよ。と言ってしまうのを、どうにも躊躇ってしまった。
 こんなにも妙な、恋人ってなんだと問いたくなるような関係なのに、彼の方はまだちゃんと、続けたい気持ちがあるらしい。義務感からだろうと、完全に対象外だった男相手に、セックスまでする気だと言うのも驚きだ。
「もし、気持ちよくなれたら満足だから抱いて下さいって言ったら、俺が気持ちよくなるように抱いてくれんですか? そんな奉仕的なこと、するイメージ無いんですけど。さっきマグロでも良ければ試していいって言ってましたよね?」
「マグロでもいいからしたいって言われたら、それはそれで、君がどうするかちょっと見てみたかっただけ。で、奉仕的なことも、行為だけなら別に苦じゃないよ。難しいのは気持ちを捧げてくれって方向だね。セックスまでしようってんだからある程度の好意はちゃんとある、つもりなんだけど、される側からの評価は冷めてるとか一緒に楽しんでくれてないとかになるわけでさ」
 セックスもつまんない男なんだよと笑ってみせるから、逆に興味が湧いてしまう。
「さっき勃つかわからないとか言ってましたけど、もし俺でも勃つなら、抱かれてみたいです」
「さっきも言ったけど、男の子と付き合うの初めてで経験ないから、今すぐ気持ちよく抱いてあげるのは絶対に無理だし、君の体であれこれ実験しちゃうような部分もあると思うんだけど、それで良ければ」
 それでいいですと即答すれば、それならシャワーを浴びておいでと言われて立ち上がった。

続きました→

 
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